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村人、本登録する

「いやー、大変な目に会いましたねルーさん」

「本当だよ・・・別の意味で(ボソっ)」

「?何か言いました?」

「何も・・」

「?」


 あれから色々と周りの冒険者から質問にあったガロンはちょっと疲れていた。


 なぜかというと質問の内容は先程出してしまったプレッシャーのこともそうなのだが、『本当に初心者なのか?』とか『実力はどのくらいなのか?』とか『ルールリアとの関係は?』とか・・・・最後のは特に分からないがとりあえずガロンは色々と濁しながら各質問に答えて行った。

 その横ではルールリアが女性冒険者に囲まれながら何やら質問攻めにされていたが、ガロンも同じ状況だったのでとりあえず放っておくことにした。質問攻めが終わったあとガロンを見たルールリアの顔が若干赤くなっており、そんなルールリアを見た周りからガロンに向かって『ちっ!!』と舌打ちが聞こえてきたがガロンは聞こえないフリをするのであった。


 そうこうしているうちにクエストカウンターについたガロンの目の前では、何故か頬杖をつきながら柄の悪い目をしているケイティーから


「爆発しろ!!」


 っと暴言を吐かれたがすぐに隣にいたルールリアに頭を叩かれた。


「ケイティー?昨日のこと忘れたの?」

「は!ヤバイ!お願い!さっきのは忘れて!!」


 昨日何があったのか知らないがルールリアがそういうとケイティーはハッとなりすぐにガロンとルールリアに頼み込むようにそういう。


「えーと・・・とりあえず何も見てないし何も聞いてないので、クエストの受注いいですか?」

「・・・恩に切ります・・・。でもガロンさん、今の状態だとクエストの受注ができませんよ?」

「え?!なんで?!」

「ど、どうしてケイティー?!」


 そう言ってクエストが受けれないというケイティーにガロンとルールリアは狼狽えながら聞く。

 するとケイティーは小首を傾げながら


「だって本登録まだじゃないですか・・・」


 そう言ってカウンターの下からガロンの名前が入った登録用紙を取り出し見せた


「「・・・・・あ、そうだった・・・」」


 用紙を見たことにより思い出したガロンとルールリアは手を‘ポンっ!’と叩いて納得した。


 しかし周りの冒険者達は『(マジかーー!!忘れてたのか!!)』とツッコミを入れようとしたがそこはグッと堪えた。







 用紙のことを忘れていたガロンにケイティーは苦笑するも、すぐに真面目な顔をしてガロンの目を真っ直ぐ見ながら口を開いた。


「それではガロンさん、冒険者というのは危険が付き物です。


時に人に害なす危険なモンスターを狩るための力を


時に希少な素材を採るため危険な土地に向かうための勇気を


時に多くの人を救うための慈愛の心を


冒険者はそれらを常に持っていなければなりません。それでもなお冒険者となるべく登録しますか?それともやめますか?」


 大仰しいがこれはギルドが冒険者登録をする新人に必ず言うことでありケイティーはマニュアル通りのセリフを言って演技しているだけであるが、それなりに迫力がある。


 しかしガロンはそんな迫力の中でも変わり無く


「いえ、登録します」


 そうはっきりとそう宣言する。


 ケイティーもルールリアも分かっていた答えに苦笑のような笑みを浮かべながら


「わかりました。では登録に移りますので此方へ」


 そう言ってケイティーはガロンをカウンターの向こう、奥の部屋へ行くように指示した。

 ルールリアはガロンの登録が終わるまでカウンターの前で待つつもりだったのだが、そんなルールリアにケイティーは振り向き


「ルールリア、今見届け人の冒険者がいないからとりあえず一緒に来て」


 ケイティーはルールリアに一緒に来るように言った。

 言われたルールリアはというと


「え? わ、分かった」


 そう言って驚いた顔をして、言われるがままにガロンの背中についていくように一緒についていった。


 何故見届け人が必要かと言うと時たまに素行の悪い冒険者志望者がいるため、何かあった時の対処のために格上の中級、もしくは上級の冒険者の見届け人を登録の際おくようにギルドは決めているのであった。


 そうこうしているうちにガロン達はギルドの奥、中央に何か装置のようなものが置いてある部屋に着いた。


「それではガロンさん、此方の装置に手をかざしてください」


 そう言ってケイティーが装置の隣まで来ると、ガロンに装置に埋め込まれた半球上の水晶に手を置くように指示する。


 ガロンはケイティーに言われるがまま装置の前に来るとその装置の全体をもう一度見る。

 その装置は四角い板を立ててガロンのいる前面に水晶が埋め込んである台座があるような形で、そこに複雑な回路のような溝が水晶から伸びており、その先は板の一番上に埋め込まれている小さめな宝石に繋がっていた。

 

「こうですか?」


 そう言ってガロンが装置の水晶部分に手をかざす突如水晶が淡く光り始め水晶の周りの溝が上るように光り始める、そして一番上の宝石までくると。


 ‘ピカーーー!!!!’


 宝石が光った。ガロンの目の前に光る板のようなものが現れた。


「えっとここからどうすれば・・・?」


 そう言ってガロンがケイティーの方を向くとケイティーはそんなガロンに変わるように言うと、手に持った用紙を装置の水晶部分の下にある隙間へと入れ光る板に指を走らせ何か操作したのち


「これで大まかな登録は完了です。ここからは職業を選んでもらいます。もう一度手をかざしてください」 


 そう言われてまたガロンは水晶に手をかざすと


 ‘ズラーーーーーーー!!!’


 光る板が大きくなり様々な職業の名前が映し出された。


「『戦士』『軽戦士』『重戦士』『魔法使い』『呪術師』『僧侶』『格闘家』『暗殺者』『料理人』『狩人』『剣士』『槍士』『弓士』・・・・etc・・・・・・・ここから選べばいいんです・・・・か?」


 そう言ってガロンはズラーっと並ぶ職業名が書かれた光の板から目を離し、再度ケイティーの方を見たら


「・・・・・・・」


 目が点になってガロンが出した光る板を凝視しているケイティーがいた。そんな中ガロンの後ろにいたルールリアが‘ボソリ・・’と呟く


「何?・・・この適正職業の量・・・・」


 ガロンがそちらに顔を向けるとこれまた目が点になっているルールリア。


 そんな二人にガロンはとりあえず目の前の光る板に書かれている職業を端から全部見て、その中で見つけた一つの職業が目に留まりそれを選択すると光の板は収縮し先程と同じ大きさになった。

 そこまできてようやく我に帰った二人はあの膨大な適正職業の中からガロンが選んだ職業が気になり本来マナー違反だがガロンの手元にある光の板を覗き込む。

 そこには

 

「「『修練者』?」」


 ジョブの欄にそう書かれており、二人は頭にハテナを出しながらハモって言う。

 そんな二人にガロンは苦笑しながら


「今の俺にちょうどいいと思いましてね・・ほら、『修練者』って技を極めるもののことだから未だ未熟者の俺にぴったりだと思って」

「「(どこが?!!)」」


 冗談みたいなことを言うガロン声には出さず突っ込む二人、そんな中


 ‘チーン!!’


 そんな警戒な音が装置から鳴り一枚のカードが装置から出てきた。

 ケイティーは音に気づき、一つ咳払いをして気を取り直して再度責務を全うするため話す


「それではこれで登録は終わりとなります。ガロンさんは適正魔法色『無色』、職業は『修練者』で登録となりFランクからとなっております。職業に関しては再度ギルドで変更できますので変更なさる際はギルド職員にお声かけください。またランクは依頼の達成数や難易度などで上がっていくのでがんばって高ランクを目指してください」

「分かりました」

「それにしてもガロンくん、残念だったね」

「はい?」


 ケイティーにそう残念そうな顔をされてガロンは不思議そうな顔をする。

 そんなガロンに今度はルールリアが声をかける


「適正魔法色のことだよ。まさか『無色』とは・・」

「何か問題でも?」

「いや、そうじゃなくて・・・他の適正魔法色について知っている?」


 そう言われガロンは、母マイルから教えられた他の魔法色の特性について話した


「えっと確か赤、青、黄色、緑、そして黒と白ですね。赤は『攻撃』、青は『治癒』、黄色は『付与』に緑は『防御』、黒は・・『干渉』で白はその逆の『浄化』でしたっけ?」

「そう、でも『無色』だけはなんの特性もないハズレ・・・あっ・でっでも『無色』でも上位ランクの冒険者はいるから気にしないで!それにそこにいるルールリアも同じ『無色』だから!うん、お似合いだね!! ・・・・・・あっ・・」


 そう言って慌ててフォローを入れながらサラッと個人の情報をこぼすケイティー、そんなケイティーにルールリアはまたもや頭を叩き怒る。


「ちょっとケイティー!!!!」

「ご、ごめんなさいルールリア!!」


 ちょっとまじキレのルールリアに小さくなりながらひたすら「ごめん」を繰り返すケイティー。



 そんなジャレ合う二人を見ながらガロンはボソリと呟く


「『無色』ってそんなハズレじゃないと思うんだけどな・・・・」


 そう呟いたガロンの呟きは目の前で未だジャレ合う二人には聞こえなかった。


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