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村人、世の中の厳しさを教える

「fuaaaーーーーー・・・・一人そして二人目」


 獣のような声をだし、重苦しい息を吐きながらガロンはゆっくりとゴブリン達の頭から手を外し、立ち上がった。


「ゴーブ?!リンゲ?!しっかりしろ!おい!!」


 オークの冒険者が地面に埋まるゴブリン、『ゴーブ』『リンゲ』に向かって大声で声をかけるが、地面に埋まるゴブリンの二人は気絶しているのかピクリとも動かない。

 手加減をしたはずなのでおそらく死んではいないと思うが、彼らの埋まる地面のヒビが少し赤くなっているのを見て、ガロンは「鼻血でも出たかな?」ぐらいの感情しか出ていなかった。そしてそんなゴブリン達を一瞥したらすぐに放って置きガロンは前に向かって歩きながら両手を背中に回し武器を掴み、引き抜いた。


 引き抜かれたガロンの得物は二丁の同じ作りの鎌。

 しかし農作業用の物よりも大きく大体ショートソードほどの長さの柄に両刃の刀身、その刀身も分厚く、鎌というよりはどっちかというと鶴橋にも似たような形であった。

 柄と刀身を一個の鋼の塊から打ち出し一体化したその鎌を、ガロンは肩の力を抜いてゆったりと下げ下ろした。その状態はただ背中から鎌を引き抜いて持っているだけのように見える。


「くそ!!よくも俺の弟分をひどい目に合わせやがって!!もう容赦しねえぞ!!」


 そう言ってオークの冒険者は背中に背負ったどう見ても手入れの悪い大斧を手に待ち構える。そんなオークの冒険者に続くように人間とコボルトの冒険者が弓と槍を持っていつでも動けるようにかまえた。


 そんな冒険者達にガロンは小首を傾げながら


「容赦も何も・・・これは勝負なんですよ?負けたらそこで終了なんですよ?それに最初に攻撃してきたのは先輩方ですよね?それを迎撃しても何の問題もないはずですよ?なんで文句言うんですか?・・・・・・それに、あなた達構えるの遅すぎません?」


 そう言い放った。




 抑揚もなく、声の音程は一定なのでどこか恐怖を誘うのだが、五人組はバカなのかガロンに『煽られた』と勘違いしその顔を真っ赤にさせ何か言おうとするが


「バカですか?」

「な?! ひい?!!」


 そう言って一瞬でオークの前まで移動したガロンは、右手に持った鎌を上段から斜めに、投げるように振り下ろす。

 それに気づいたオークの冒険者は間一髪、大斧の持ち手部分を使い防ぐが、ガロンの得物は『鎌』。故にその刃は持ち手に部分に鎌の根元がに捕まるように阻まれたが後数センチで肌に触れるまで迫っていた。そんな鎌の刃を見て悲鳴を上げるオークの冒険者。


 そして彼はすぐ近くまで来た死の気配にやっと気づいたのだった。この(ガロン)が自分たちよりも強いことに。

 

「うおーー!トンダ兄貴から離れろ!!」


 そう言いながらガロン目掛けて槍を突き出してくるコボルトの冒険者にガロンはもう片方にも持った『鎌』を振るいその槍を弾く


 ‘キーー・・・ン・・・・・    グサ!’


 甲高い音をさせながらコボルトの持つ槍が宙を舞い地面に刺さる。

 急に手元から槍がなくなったことに驚き後さずるコボルトの冒険者は、少し痺れる自分の手とガロンを交互に観た後歯を食いしばりガロンに殴りかかろうとするが


「ふん!!」

「ぐぺっ?!!」

「・・・三人目」


 そんなコボルトに鎌を逆手に持家ちかえた左手をその顔面にくらわせた。コボルトはクルクルと錐揉みしながら飛んでいき地面に顔面から落ちる。


 そしてそんなコボルトの末路に腰が抜けたのか、人間の冒険者が弓を投げ捨てて這うように闘技場の出口に向かって走るが。


「なんで逃げるんですか?」

「ひっ!!ぎゃあ・・!!」

「四人目」


 逃げる先に移動したガロンによってすぐに捕まりそのまま投げられ小さな悲鳴を上げる。投げられたその衝撃は強く、地面に激突した人間の冒険者の体が少し地面に沈んだかのように見える。


「さてと、最後はあなたですね」


 そう言ってガロンは手に持った鎌を最後に残ったオークの冒険者に突き刺すように、いや、この場合は押し切るように向ける。



 そして鎌を向けられたオークの冒険者はと言うと


「なんだよ・・・なんなんだよお前は!!」

 

 震える声でガロンにそう言い放ち、手に持った大斧を振り上げながら破れかぶれに振り回そうとするが


 ‘ズパン!!’


 ‘カラン カラン ’


 オークの冒険者が持つ大斧はガロンの鎌の一閃によって刃の部分が真っ二つに切り裂かれみるも無残な姿へと変貌した。


「お、俺の斧が!!?」


 切り裂かれ半分となった自身の獲物にオークの冒険者は一瞬手を止めてしまう。そんな隙を逃さずガロンは返す刃でオークの冒険者の後頭部に蹴りを入れた。


 ‘ゴン!!’


 派手な音が頭からしたオークは次の瞬間白目を剥き前のめりに倒れる。ガロンはそんなオークの冒険者に近寄り気絶していることを確かめると


「これで俺の勝ちですかね?」


 ガロンは静かにそう言った。


























「おい、起きろ」


 ‘バシっ!!’


「ぐふ?!」


 ガロンが未だ寝ているオークの冒険者の頬を思いっきり叩く。痛みに驚きオークの冒険者は飛び起きると目の前に仮面を被ったガロンがいた。


「ひい?!!」


 悲鳴を上げながら後さずるオークの冒険者はそのままズルズルと壁際まで下がると視界の端にパーティーメンバーを見つけちょっと安心する・・・が


「それじゃあみなさん起きたようなので賭けの話をしましょうか」


 そう言って近づいてくるガロンに五人は肩を抱き合い怯えるような視線を向けるがガロンはそんなことを気にしなず話を続ける。


「この勝負僕たちの勝ちですよねケイティーさん?」


 そう言いながら後ろに控えているケイティーにそう確認するガロン


「ええ、誰がどう見てもこの勝負、ガロンさんの勝ちですよ」

「そうですよね。それじゃあ賭けには俺が勝ったので言うことを聞いてもらいましょうか。」

 

 そう言ってがろんは一泊置き


「取り敢えず金貨五十枚を即金で寄越せ。」


 底冷えするような声音でそう言った。五人組は『無理だ!』と言おうとするが、ガロンは更に続ける。


「足りなかったら見ぐるみ全部置いていけ。それでも足りないなら借金して持ってこい。」


 そう言ってどうやっても確実に払わそうとさせるガロンに、五人組の人間の冒険者が反論する。


「そ、そんなの横暴だ!!なんの権利があって・・・」

「そっちが言ってきたんだろう『賭けをしよう』って。賭けってのは見返りが大きければ相応のリスクが発生するんだよ。大きなリスクにしたのは紛れもなくお前らだろう?」

「「「「「っ!」」」」」


 五人組は目の前のガロンが発する威圧に収縮し、無責任に賭けを提案した過去の自分たちを呪った。


 そんな五人組にガロンが続けて放った言葉に五人組は自身の愚行を更に呪い恐怖した


「まあこれを機に教訓とした方がいいでしょうねー。力量を測れないのに安易な賭けをすれば身を滅ぼすってことを。じゃないと死にますよ?」


 最後にボソリとこちらを見ながら呟くガロン。五人組はそんなガロンの仮面から見える瞳が底なしの闇の如く見えたように感じ、その顔を青ざめさせていった。


 










 ガロンが五人組の金を毟り取っている中、この状況を観客席で勝負から見ていたある人影が出ていくのを。ガロンを含め誰も気づかなかった。

 その人物は暗く続く闘技場の観客席の出口の廊下を足音を立てながら歩き闇に紛れるように呟く。


「ふふ、面白い子が入ってきたわね。これでしばらくは退屈しないわ・・・ふふ、ふふふふふふふふ・・・・・・」


 そう言い残し、笑いながらその人影は闇の中へと消えていった。



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