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村人、絡まれて決闘(?)する

「え、えーと・・・登録ですか?」

「はい、お願いします。」

「あの・・・・ちょっと・・・この状況下でなんで・・・」

「? ダメなんですか?」

「いえ、そう言うわけでは・・・」


 そうキョトンと不思議そうな顔でそう言うガロン、そんなガロンの目の前ではカウンター下に転けて行ったケイティーがカウンターに捕まりながら立ち上がる。その顔は長年の受付嬢生活の癖なのか、はたまた意地なのか見事な受付嬢スマイルなのだが、その顔には冷や汗にも似た困惑の汗が流れていた。


「て、てめえ〜!おちょくってんのか!!」


 そうこうしているうちにも、何とか再起動した柄の悪い五人組冒険者パーティーの中で一番体の大きいオークの冒険者がキレながらガロンの肩を再度掴もうとするが


「この! くそ! ちょこまかと!」

「取り敢えず、注意事項なんかの説明は後でも良いので、(仮)で良いので登録ってできますか?」

「え・・・えーと・・・」

「ちょこまかと避けるんじゃねえよ!!大人しくしろ!!」

「あ、あとお金って必要ですか?」

「無視すんじゃねえーーー!!!!」


 スルスルと避けるガロンに、イライラしながら捕まえようと躍起になるオークの冒険者。途中から復活してきた四人と一緒にガロンを捕まえようとするが五人とも全くかすりもしなかった。そうこうしているうちに一周回って落ち着いてきたケーティアがカウンターの下から何やらカード状の板を取り出しカウンターの上に置いた。


「こちらが冒険者の証明書、冒険者カード(仮)となります。(仮)ですのでクエストは受注できませんが当ギルドの運営する施設の利用が可能となります。」


 そう言って普通の受付嬢スマイルさせながらカウンターの上に置いたカードの説明をするケイティー。


 その目の前では『捕まえる』から『殴る』に変更した五人組パーティーの拳を難なく避けるガロンがいるのだがケイティーは取り敢えず自分の仕事をまっとうすることだけを考えて後のことをスルーすることにした。


「本登録をするには登録したい方御本人の・・この場合ですとガロン様御自身の一部の情報を質問形式で書いてありますので全部とは言いませんが必須の部分だけをこの用紙に書き込み銀貨一枚を払ってもらうことで登録となります」

「ねえ、ケイティー?何でこの状況をスルーできるの?こいつら確実にギルドの規定に反してるよね?普通だとすぐに注意して罰則だよね?それにガロンくんも何で全然見ていないのにするすると避けれるの?ねえ?」

「うーん、記入は今手が塞がっているので難しいですね。お金は・・・買取ってできますか?手持ちが今ないので。あとルーさん、これ意外と反射神経がいいと誰でもできますよ。」

「誰でもはできないと思いますよ?それと買取ですが記入してから買い取った方がいいですよ。冒険者特権で査定に少し上乗せされますので。差し当たって現在ガロン様は用紙に記入できる状態ではないようなのですが、このまま当ギルドの闘技場に参りますか?」

「ケイティー!?あなたちょっと目の前のこの状況に面倒になったでしょう!?」

「何を言ってるのルールリア?私は別に『面倒だなー』なんて思ってないわよ?ただ・・・」

「ただ?」

「『わからない奴ら(バカ)はスルーするに限る』と、私は学んだのよ・・・」

「ケイティー?!大丈夫?!ねえ?!」


 明後日の方向を向きどこか悟った目をしながらそう言うケイティー(親友)にルールリアは彼女の両方を揺すりながら心から心配する声を出す。そんな二人のそばでガロンが声をかける。


「あのー・・・そろそろ闘技場に行きませんか?後ろの人たちも体があったまったみたいですし」


 そう言って後ろを指差すガロン。その先には肩で息をしながら休む五人組の冒険者がいた。


「はあ はあ やろー・・・舐め腐りやがって!!」

「げえは! この借りはすぐに返してやる!! ゲハ げは!」

「ーーー!・・・ぶっ殺す!」

「ーーー!・・同じく・・・」

「後悔させてやるこのクソが! ごほ! ごほ!」


 オーク、人間、ゴブリン×2、コボルトの順で床に座り込み、息を切らせながら口々にガロンへの悪態をつく五人組に、ルールリアとケーティアは目を見合わせて


「(ね?私の言うことわかるでしょ?)」

「(うん、よくわかった・・・・)」


 そうアイコンタクをして会話していた。




 そうこうしている間に五人組が息を整えるのを待ちながら、ガロンは取り敢えず冒険者登録の記入用紙を貰い空欄を埋めて行った。

 途中用紙の質問欄におかしな質問(恋人有無や性癖などを聞いている欄があった)もあったが大体の部分を書き埋めたところで何とか立ち上がった五人組を横目にガロンはケイティー案内の元、ギルド奥にある闘技場に向かって行った。



「うお!外観から予測した予想よりも遥かにでかい!というかどう見たって比率がおかしいだろう?!」


 ガロンは闘技場に入って開口一番に闘技場の予想外の広さに驚愕した。

 闘技場は一般的な円状なのだが、どう見ても先ほど見たギルドの外観がすっぽりと入りそうなほど広く、ついでに周りには何故か五段ほどの客席が闘技場を取り囲んでいた。

 そんな中、田舎者丸出しな感想に五人組の冒険者は嘲笑の笑みを浮かべガロンを指差していたがガロンは全く見ておらず闘技場を隅から隅までながめていた。


 そんなガロンにケイティーが説明をする


「この闘技場は一種の魔道具で空間んを自由に拡張できる古の魔道具によって空間を拡張させて作ってあります。ちなみにこのギルドの闘技場は他のとこよりもちょっと大きめですが冒険者ギルドの総本山の闘技場はこの何倍もあるそうですよ」

「マジか・・」

「ちなみに闘技場では普段は他の冒険者が訓練してたりするんだけど・・・ちょうど今は誰もいないみたいですね珍しい」


 ケイティーの豆知識に総本山の闘技場を想像したガロンは自然とそう口に出す。その隣ではルールリアが闘技場を見渡しながら冒険者がいないことを確認しそう言った。

 そんなガロン達の後ろから無粋な声がかけられる


「うだうだしてねえでさっさとしやがれケイティーにルールリア!!俺たちは今そいつのせいで最悪に苛ついてんだ!」

「そうだそうだ!そのガキのせいだ!」

「さっさとぶっ飛ばさせろ!」


 口汚くそう吐き捨てる五人組にケイティーとルールリアは目でガロンにどうするか聞いてくる。そんな二人の目に気づき、二人が何を言いたいか理解したガロンはというと。


「分かりました。それじゃあ、やりましょうか先輩方」


 そう言ってガロンは五人組の方を向きそう言う。

 対して五人組は一瞬呆けた顔をするがすぐに‘ニタアー!’と気持ち悪い笑みを浮かべ五人それぞれの武器を構える。構えたところで五人組の内今までの経緯からおそらくリーダーだと思われるオークがニタニタと笑いながら声をかけてきた。


「おいそこなクソガキ、賭けをしないか?」

「賭け?」

「そうだ。てめーさっきフォレストベアーの毛皮を売ったよな。俺たちが買ったらその金をよこせ。無論そこにいるリールリアからな。」

「な!何言ってるの?!あのお金はあなた達には何お関係もないでしょうが!!」

「新人のくせに俺たちを不快にさせたんだ。当然だろう?それに払えなかったらその利息分はそこにいるルールリア共々俺たちに奉仕するなり身を売るなりして払えよ?」

「何をそんな無茶苦茶なこと・・・」

「いいですよ」

「ガロン?!!」


 ルールリアが勝手な物言いに怒りをあらわにするが、賭けを持ち出されたガロンがそれを了承したことに驚きルールリア思わず信じられないものを見るような目でガロンを見る


 オークの冒険者は更に汚いニヤケ面をさらに歪ませる。その目線はすでにルールリアをみていた。舐めるような目でルールリアを見るオークと五人組にルールリアは自身の体を両手で抱き抱えガロンに隠れるように逃げる。そんなすでに勝ったきでいる五人組の冒険者にガロンが口を出す


「なので、もちろんこっちが勝ったらこっちの要求を聞いてもらいますよ。」


 そう言うガロンに五人組は未だニタニタとしながら


「おういいぜ。そっちが勝ったらあんだって聞いてやるよ」


 そう言って余裕と言わんばかりの返答をしてきた。

 そんな会話を近くで見ていたケイティーは顔には出さないが内心ため息を吐きそうになるがぐっと堪えた。


「それじゃあ始めますか。俺は向こうに行きますので着いたら始めましょうか」


 そう言ってガロンは入ってきた場所から向こう側へ五人組から背中を見せてr歩いていく。そんな無防備なガロンの姿にリーダー格のオークはゴブリン二人に目で合図を出しニヤリと笑う。するとゴブリン二人もニヤリと笑ったかと思うと次の瞬間、武器の短剣を抜き放ちゴブリン二人が勢い良くガロンい向けて駆け出した。


「新人覚えとけ!この世界はな、バカから先に死ぬんだよ! ゲハハハハハハ!!」

「この卑怯者!! ガロン気を付けろ!!」


 ルールリアがそう叫んだときにはゴブリン二人はガロンのすぐ側まで来ており


「「死ねえええ!!」」


 ゴブリン達がそう叫び、手に持つ短剣をガロンに突き立てようと振り下ろす・・・



























‘ドゴシャ!!!!!’


 しかしゴブリン達の短剣はガロンを貫抜かなかった。


「「「は?」」」


 目の前の光景に残りの三人の冒険者がそんな変な声をだす。なぜなら




‘ピク  ピク ピク’


‘ピク ピク  ピク’


「ハアーーーーー・・・・・」


 ガロンを襲ったはずのゴブリン二人は闘技場の地面に頭から肩まで埋まっており地面には、そこを蜘蛛の巣状の亀裂が入っていた。そんなゴブリン達の近くではガロンが埋まっているガブリン達の後頭部を掴み埋め込んだ姿勢で顔を伏せていた。そして


「遠慮はなしでいいですね?」


 そう言って顔を上げたガロンの表情は仮面によってわからないが、残りの冒険者は動揺したかのように後さずった。

 

 そしてそんなガロンを見たルールリアは悟った。


『あ、こいつら死んだわ』

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