村人、冒険者になる
冒険者ギルド
それは世界中に支部を構える大手機関。
国に縛られず未だ人が踏み入れていない未知の場所を探索し、人を襲う獣、それに世界を脅かすモンスターなどの討伐から犬の散歩や家事手伝いなど幅広い依頼をこなすなんでも機関。それが冒険者ギルドである。
そんな冒険者ギルドの支部、辺境都市エルドラ支部の受付では一人の受付嬢が書類を纏めながら溜息を吐いていた。
「はーー〜・・・」
本来なら受付嬢が溜息を吐くなどもってのほかなのだが現在ギルドの受付は彼女一人、周りには朝から酒を飲みゲラゲラと下品な笑い声をあげる五人組の冒険者パーティーだけなので彼女は気を抜いていた。
「はー〜、ルールリア大丈夫かしら・・・はー〜・・」
「ため息吐いていたら幸せが逃げるわよケイティー」
「でもー・・・ってルールリア?!!・・・っと、誰?」
ケイティーと呼ばれた受付嬢は、ルールリアの安否を心配するようなことを呟いたらその本人が目の前に現れ驚きの声を上げた後、その隣にいるガロンに気付き不思議そうな顔をした。
そんなケイティーにルールリアは事情を説明する。
「えーっと、この人はガロン。アルモニア樹海で出会った冒険者志望の子でアルモニア樹海で迷っていたらしくてここまで連れてきたの。」
「『アルモニア樹海』って、あそこちゃんと道なりに道がちゃんと整備されてたはずだけど」
「はははは、ちょっと金作のために道を外れたらそのまま・・」
「ああー・・・なるほど。でも気をつけてくださいよ。あの樹海馴染みがない人だと道を外れれば簡単に迷いますからね。後で骨になったり野生化したりして発見される人もいるんですから。」
「肝に銘じておきます」
「そんなことよりケイティー、私の依頼失敗でお願い。」
「えっ?!!ど、どうして?!!フォレストベアーの毛皮の納品だよ!!ルールリアなら簡単に・・・」
「樹海で探してたんだけど、仕留める前に横取りされて・・・この怪我もそいつにやられた」
「ルールリア!!どうしたのその怪我!!」
ルールリアの体に巻かれた包帯に今頃気づいたのかケイティーがそう叫ぶ。
そんなケイティーの声に先程まで酒を飲んでゲラゲラと笑っていた五人組の冒険者がこちらを向いたが。当のケイティーは気づいていない。
「今は痛くないんだけど安全を期して・・ね?」
「でもそうなったらルールリア、借金は・・・」
「・・・・どうにかするよ」
そう言って沈痛な表情をするルールリアとケイティー、すると背後から彼女らに声が掛けられた。
「その借金、俺達が立て替えてやろうか?」
そう言うのはこちらに注目していた五人組の冒険者。種族はオークにゴブリンが二人、人間そしてコボルトとかなり多種族的なパーティーであった。そんな彼らはその目から隠し用がない下卑た視線をルールリアに向けていた。
「もちろんタダとは言わねえぜ!」
「代金はしっかりと払ってもらうぜ!・・・その体でな!!」
「ゲヒャヒャヒャヒャ!それぐらい安いもんだろう?なあルールリアちゃん?」
「グヒャヒャヒャヒャ!そうだ俺たち優しいだろう?」
「なんならケイティーちゃんも相手してくれるか?ギャハハハハ!」
それぞれが勝手なことを言いルールリアとケイティーは五人組を潰れたゴキブリを見るような目で睨むが五人ともルールリアが断らないと思っているのか余裕の表情である。
しかしそんな中
「よいしょ! ケイティーさん?でしたっけ? これルーさんの依頼の品で納品して良いですか?」
「え? えーーーーー?!!これってフォレストベアーの毛皮?!!それに何この品質?!!とても良い!!」
ガロンが昨日解体したフォレストベアーの毛皮をカウンターに置きそう言った。置かれた毛皮の品質にケイティーは驚き大声をあげながら叫ぶがガロンはそれを無視して追加でまたカウンターに素材を置く
「あと、これも。少し食べちゃったけど肉と骨それに内臓とか血とか色々」
「え?!!ちょっと!!何この綺麗な解体!!しかも肉も内臓も適切な処理がされてるしどこも痛んでない!!ちょっと待って!!」
そう言ってケイティーが素材を抱えて走ってギルドの奥に消えていった
「ガロン君これって!!」
ルールリアが焦ったようにガロンに詰め寄るがガロンは呆気らんかとした口調で
「いや、俺が狩ったたものでもないし。かと言って腐らせるわけや使わないわけにはいけないので取り敢えずルーさん使ってください」
「いや、でも!!ここまでのものだと一財産だよ!!それを・・・」
「じゃあここまで案内してくれたことへのお礼と言うことで」
「でも・・・はー、わかった素直に受け取ります。」
「はい!!」
何を言っても渡す気でいるガロンに降参しルールリアは素直に受け取った。
そうこうしているうちに奥に消えていったケイティーが息を切らしながらカウンターまで戻ってきた。
「はあ はあ、確認しました。もう結果だけ言いますと全部合わせて金貨五十枚の査定となりました。このうち金貨三十枚がルールリアさんの借金の返済となりますが良いですか?」
「五十枚?!!え・・あ・・取り敢えずお願いします」
予想を超える査定に素で驚き一周回って落ち着いたルールリアは取り敢えず借金を返済する。
「わかりました。これでルールリアさんの借金は完済となりました!!やったー!!よかったねルールリア!!」
「ああ、うん・・ありがとうケイティー」
「?どうしたの?」
「ああ・・・ちょっと現実味がなくて・・って痛い痛い!なにしゅるのがろんくん」
「ん?痛い?なら現実じゃないかな」
「だからって女の子の頬を引っ張る?」
「え?じゃあ頭撫でた方がよかった?」
「あ、それはお願いします。ってそうじゃなくて!!」
カウンター前で騒ぐガロン達、ルールリアを撫でるガロンとガウガウ言いながらも尻尾を振るルールリア、そんなルールリアを可愛いと呟きながら見るケイティー。そんな三人に五人の影が取り囲むように近づいてきた。それは
「よお、にいちゃん。よくもやってくれたな」
そう言いながらガロンの肩を思いっきり掴むのはさきほどの五人組のオークの男
「俺たちの楽しみを奪いやがって」
「空気を読めこのカス」
「変な仮面しやがって」
「偽善者面すんじゃねえ」
そう言って口々にガロンを罵る五人組
「確か冒険者志望、って言ったなあにいちゃん・・良いぜ冒険者の厳しさを教えてやる」
そう言ってオークの冒険者はガロンの肩を思いっきり掴み引きづろうとするが
「あ、ちょっと待って」
「あ?なんだ怖気付いたか?」
「違う違う」
静止を入れたガロンは肩を掴んでいるオークの手を外し、ケイティーに向き直る。五人の冒険者に囲まれると言う異様なな雰囲気の中ガロンは
「取り敢えず冒険者登録お願いします。なる早で」
そう言って冒険者登録をお願いした
‘ズコーーー!!!!’
その瞬間五人組とルールリア、そしてケイティーはそんな音が聞こえそうな感じでずっこけた。




