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村人、辺境都市『エルドラ』へ向かう

 ‘チュンチュン チュンチュン’


 小鳥のさえずりが聞こえ、まぶたの向こうから見える光を感じルールリアは眠い目を擦りながらゆっくりと起き始めた。


「おや? 起きましたかルーさん」

「うにゅ・・おはよ・う?」

「はい、おはようございます」


 寝ぼけたルールリアの頭がそれを処理するのに数十秒、ガロンはその間複数の焚火を起こしフライパンを乗せフレンチトーストを作り別の焚火では水を沸かしていた。


「ルーさん朝は水ですか?それともコーヒーですか?あいにく緑茶はないのですが紅茶なら少しありますが」

「え・・あ、じゃあコーヒーで」

「分かりました。ミルクと砂糖はどうします?」

「え・・っと、じゃあ両方・・」

「はい、・・・ではどうぞ」

「あ・・・ありがとうございます?」


 流れるようにモーニングドリンクをすすめられ、訳も判らぬうちに朝食とコーヒーが出された状況にルールリアはとりあえず頭を働かせるためコーヒーを飲む、うん美味しい


「じゃなくて!」

「ルーさん、食事中は叫ばないの」

「・・・・はい」


 少し働き出した頭で現在の状況を整理し突っ込もうとルールリアは叫ぶが、ガロンが静かにちょっと怒った口調で嗜めると静かに出されたフレンチトーストに口をつけた。 うま!!









 そして数分後、美味しい朝食を食べ終えてひと段落をしたルールリアは、お腹も膨れ最早先ほどのことはどうでもよくなっていた


「はあー〜、幸せ」

「ルーさん、食べてすぐ寝っ転がるのは行儀が悪いですよ」

「・・今は、大めに見てください」


 その場で大の字になって転がるルールリアにガロンは苦言を入れるがルールリアは真顔でそう頼み込む。ガロンはそんなルールリアに苦笑しながら「そういえば」と言い


「ルーさん辺境都市『エルドラ』ってどっちにありますか?」


 本来いかなければならない場所をルールリアに聞いた。

 ルールリアはそんなガロンの質問に上体を起こし


「あっちの方向だけど・・私も一度帰るから一緒に行こう」


 そう言ってガロンを誘った。


「いいんですか?」

「ん?いいよ!」

「ありがとうございます!」


 ガロンはそんなルールリアに感謝をし一緒に行くことにした。そう言うことでガロンは善は急げと言わんばかりに素早く片づけをしその場を後にした。







 そして数時間後


 ガロンは現在、樹海を抜け、高い外壁と山と平原とを一体化した様な街並みが共存する都市、辺境都市『エルドラ』へと着いたのであった。



「いやー、まさか不審者に間違われるとは不覚でしたなー」


 そんな呆気らんかとした口調でエルドラの正門を抜けた先の街道を歩くガロン。

 その隣ではルールリアがため息を吐きたい顔で並んで歩いていた


「本当だよ、全く・・・というかなんでまだ仮面かぶってるのさ?さっき外したんならもう外しとけばいいのに・・」

「いや、それは無理ですな」

「なんで仮面越しなのに分かるキメ顔と無駄にいい声で断言するの?!」


 そう言ってガロンは先ほどの正門でのやりとりを思い出す。

 ルールリアと共にエルドラへと来たガロンは街の正門の門兵に不審者と間違われて槍を向けられた。

 その後ルールリアの説得とルールリアを見ないように顔を見せ指名手配犯や犯罪者ではないことを確認してもらい解放された。

 その時なんで仮面をしているのか聞かれたがそこは上手く誤魔化して納得してもらった。流石に緊急事態とはいえそれをベラベラと喋る必要はない。

 決して自分だけの良い思い出にしようなんて思ってない。思ってないったら思ってない!

「そんなことよりルーさん、街ではその姿なんですね」

「露骨に話をすり替えてきたよ?!!・・・まあ、うんこの姿の方が街の中では生活しやすいから」


 そう言うルールリアは現在樹海であったような『二足歩行の犬』みたいな姿ではなく、耳と尻尾以外は人間そっくりな姿をしていた。


「生活しやすいって・・・それって迫・・」

「いや、違うよ」

「違うの?!」


 一瞬ガロンはルールリアが異種族的な奇異の目で見られているのかと思ったがどうやら違ったようだ。

 逆にルールリアは街の人と仲が良いのかよく挨拶をして貰っていたり今もそこの屋台のおばちゃんから串肉を貰って食べていた。・・・うん、あのおばちゃんの顔を見るにあれは奢ると言うよりも餌付けに近いな

 そう言ってルールリアを見れば耳と尻尾をせわしなく振り美味しそうに串肉を頬張っていた。

 そして串肉を食べ終えたルールリアはおばちゃんに何か言われ慌てたように否定するように手をパタパタとさせた後串肉を二つ無理やり渡されるようにしてこちらに戻ってきた。そして二本のうち一本をこちらに向けて渡してきたのでガロンは素直に受け取り屋台のおばちゃんに向かって一礼してから串肉を頬張る。うお、うまい! 

 その間ルールリアはもう一本の串肉を先程とは違いチビチビと食べていたがその顔はどこか赤かったが何を言われたんだろうか

 

 そうこうしているうちに串肉を全て食べ終わるとルールリアが思い出したかのように喋り始めた。


「うん、さっきの続きなんだけれど。コボルトのままだと足を怪我するから人に変身するんだ。石畳が日に焼けると素足だと肉球があっても暑いから・・・コボルト用の靴って全く無いからね」

「ああ、なるほど」

「まあ、冬は雪が積もったりするから元の姿の方が暖かいけどやっぱり足がね・・・街を出たらそこまでじゃ無いから元の姿に戻るんだけど。」

「へー、コボルトも大変ですね」

「だけどそんな悩みを解決するのがこの腕輪!一度つければあら安心。人に変身できて靴も履ける。人獣、亜人の必需品。一家に一個いかがですか?」

「ルーさん誰に言ってるの?」


 腕輪を掲げるようにそう力説し、セールスマンさながらのトークでそう言うルールリアにガロンはツッコミを入れる。


 そうしてガロンはルールリアと駄弁りながら目的の場所に向かって歩いて行った。









 そして


「さあ着いたよ!ここがこのエルドラの『冒険者ギルド』だよ!!」


 そう言ってルールリアは大きく頑丈そうな石造りの建物の前でガロンに振り向きそう言った。

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