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村人、晩飯を考える

 生まれ故郷である村を出てはや数日。


 ガロンは途中、辺境都市近くまで行く商人団に運良くのせてもらい、辺境都市近くまでの旅を続けていた。


 そして今日その商人団は辺境都市とは別の街に向かうため、辺境都市へと向かうガロンはその分かれ道で商人団と別れの挨拶をしていた。


「ここまでありがとうございますバラックさん」


 ガロンはそう言ってお礼を言った人物は筋骨隆々のスキンヘッドの控えめに言っても何処ぞのマフィアの頭にしか見えない強面の男性で、この見た目で商人団の団長というどう見ても商人に見えない商人であるバラックにお礼を言った。


「良いってことよ!道中旅仲間が増えて楽しかったぜ!ガッハッハっはっはっは!!!」


 バラックはそう言いながら実に豪快な笑い声を上げる。

 そんなバラックの後ろから、これまたどう見てもカタギには見えないような集団、というかバーラックの商人団の商人達がが次々と顔を覗かせ次々にガロンに声をかけて行った。


「冒険者頑張れよ!」

「今度ましばらくしたら辺境都市によるからその時顔見せな!」

「ついでに料理奢れよ!」

「唐揚げうまかったよ!」

「商品買うなら、ぜひバーラック商会で」

「今度二人っきりで会いましょう。そしたらおネイサンが色々教えてあ・ゲ・ル♡」

「「「冗談やめろ!気持ち悪い!それにお前男だろ!ガロン気を付けろ!」」」

「冗談よ!!」

「「「冗談に聞こえんわ!!」」」 


 賑やかにガロンに向けて言葉をかける商人達、途中商会の宣伝をされたりおネエの商人の人に嫌な冗談を言われちょっと引いたりしたがしばらくしてバーラックの掛け声とともに商人団の人たちは見えなくなるまでガロンに手を振りながら彼らは次の街へと馬車を進めて行った。


 


「よし!それじゃあ行くか。」


 バーラックの商人団が見えなくなったのを確認したガロンは辺境都市に行く道を歩き始めた。

 バーラックから聞いた話だとここから辺境都市までは歩いて一日くらいと聞き、現在太陽に位置はちょうど頭の真上から少し傾いたほど。このままだと途中野宿を覚悟しながらと思いながらガロンはその足を進める。


 だが、その前にガロンはやることがあると思い腰に着けている『魔法袋』から別の袋を出しその口を開けた。

 その袋は所謂ガロンの財布であり村を出るときにはかなり入っていたが今ではチャリチャリと数枚の硬貨の当たる音が聞こえるだけで軽くなっていた。


「どこぞで換金できるものを探さないと。ああ〜盗賊とか出てこないかな」


 ベルスタから『盗賊は金目の物を落とすモンスターだと思いなさい。お金に困ったら盗賊を狩るのです』と教えられて、それを本気にしたガロンはそんな物騒なこと口に出す。

 もちろんベルスタはその後マイルに頭を叩かれて怒られたのだが訂正はされなかったのでガロンは未だ『盗賊は金目の物を落とすモンスター』と認識していた。


 そうこうしているうちにガロンは広い平原の道から鬱蒼と樹々が立ち並ぶ樹海の中の道へと入っていた。辺境都市へ向かう道というだけあり、その道中は実に濃密な野性味の溢れるものとしてガロンは内心楽しんでいた。その後ガロンは延々と続くこの樹海の道を物珍しい物を見るような新鮮な気持ちで進んでいった。














 数時間後


「やばい。迷った」


 そう言ったガロンは現在四方を樹々に囲まれた場所に立っていた。その足元には人が作った平坦な道ではなく野草が鬱蒼と生茂る所謂獣道が広がっていた。何故こうなったかというとその理由は少し時を遡る。



 数分前


 あの後ガロンは金策の為、売れる物を探す為道を外れ鬱蒼と生茂る樹海の中に入ったのだが、売れる毛皮を持つ動物は見つからず、それに躍起になりガロンはどんどんと樹海の中に入り込み続け気付いたら帰り道が分からなくなり所謂遭難となっていたのである。しかも


「やばい、そろそろ暗くなるな」


 そう言ってガロンが空を見上げれはそこには薄らとだが星の光が見え始めており、夜の到来が近づいているのがよく分かった。

 普通ならこんな樹海の中で夜を明かすのは自殺行為のような物であるので、人は暗くなる前に安全を確保し火を焚き続け寝ずに一夜を明かすことになるのだが、ガロンはというと


「晩飯探さねえとな」


 そろそろ夜となるのに安全を確保するどころか晩ご飯を探す行動に出ていた


「だけど昼間あんだけ探しても主食が見つからなかったし・・・・仕方ない、久々にあれ使うか」


 そう言ってガロンは一度目を瞑り大きく深く深呼吸をすると


「ーーーーー。」


 小さく何かを呟く。


 微動だにしないガロンの周りを不自然な風が舞ったかと思うとしばらくしてガロンは小さく「見つけた。」と呟きその場から素早くある方向へ向かって駆け出した。

 一直線で駆けるガロン、その顔は先程までと同じ柔和な顔ながらも、どこか異様な雰囲気を出していた。その極め付けはその口の端から垂れる涎であった。口の端から垂れるよだれに気づいたのかガロンは手でそのよだれを乱暴に拭き払うと叫んだ

 

「待ってろ俺の主食!」


 そう言いながガロンは暗くなりつつある樹海の中を走り抜けて行った。



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