村人、婚約破棄?される。
「婚約を破棄して欲しいの」
そう言って目の前の青年に婚約破棄を言い渡す少女、名をエミル。
彼女はつい先日まで生まれ育った村を出て国を脅かす悪竜を討伐するために、国が組織した少数精鋭討伐隊、通称『勇者パーティー』の高火力魔法戦力として悪竜討伐に向かいこれを見事討伐してみせた。
その過程で彼女は所属する『勇者パーティー』のリーダーにして国内最強騎士、通称『勇者』と呼ばれる騎士リオネスと恋に落ちた。
共に悪竜討伐という苦難な道を進み続けた二人の恋はまるで豪華のように燃え上がり、ついにエミルは悪竜討伐後リオネスと共に村に戻り残してきた婚約者である青年、ガロンに婚約破棄をお願いしたのであった。
エミルに目の前でいきなり婚約破棄をされた青年、ガロンはというと。
「・・・・・・」
呆気に囚われたような顔をしながら目をシパシパと瞬きさせ目の前のエミルを見ていた。そんなガロンの表情に気づいたエミルは言い訳のように話し続ける。
「あ、ご、ごめんなさい。いきなりこんなことを言い出して。でもね私ね旅の中で一緒にいるうちに気づいたの彼が、ううん、リオネスのことがことが好きだって。そしたらねリオネスも私のことが好きだって言ってくれたんだ。リオネスはねーーーーー・・・」
そんな調子の話をズーーーー〜っとし続けるエミル、そしてエミルが帰ってきたことに気付いて一通り歓迎したあと各々の仕事に取り掛かっていた村人達が一人、二人と周りに集まっていき最終的には村人全員が集まっていた。その間もエミルは狂ったように喋り続けており、時々リオネスとの惚気話や悪竜討伐までの苦労話を交えその話はまるで終わりのない道のように長かった。
途中エミルの隣にいたリオネスがまるでガロンに見せつけるかのようにエミルの腰に手を廻し抱きよせて上から目線をするリオネスを見て、村人から好奇の目線と未だにリオネスの話をするエミルに対しての残念な
娘を見るような目線が増えたが二人は全然気づいていない。
「それでねリオネスはね「いやいやいやいやいやいや、ちょっと待てちょっと」」
まだ話し続けるエミルに呆然としていたガロンからの静止の声が入る。そしてリオネスとの話を途中で中断されたエミルはというとちょっと不機嫌な顔になっていた、ついでにその後ろにいたリオネスも不機嫌な顔をしていた。
「何、急に」
話の腰を折られたエミルはぶっきらぼうにそう言ったが、ガロンはそんなエミルの態度に目を向けず一度下を向き頭を軽く掻き毟ってから一言
「俺たち婚約してないよね?」
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「「は?」」
衝撃の発言に静かになったその場にそんな間抜けな二人の声が響いた。




