第3話 クラスの中で最弱
ビンテックは4人分の食事を運んできた。余程この食事会が楽しみだったようだ。
「いただきます」と声を合わせてそれは始まった。
ビンテックが夕食にガッつきながら僕らに問いかける。
「ところで、結局レーベルもヘネシアもノースキルクラスのままなんか」
「ええ、そうですね。使い魔の発現がないので恐らくは」
ヘネシアも小さく首を縦に振る。これでも彼女は心を開いているのだと思う。
「そうか。でも、なんでお前らには使い魔の発現がねーんじゃろうな」
「それは僕らも分からないです。その代わりと言っては何ですけど、素早さとか近接特化とか、身体的な能力は他のクラスより長けていますよ!」
「あぁ。それがノースキルクラスの特徴じゃからな」
流石ビンテックさん。物知りだ。あの人が気に召すのも納得がいく。ノースキルクラスの戦術や特徴まで知っているなんて、僕はヴァリアントクラスのこと何も知らないのに。
「ビンテックさんはどうしてヴァリアントクラスに配属されたんですか?使い魔の発現がある隊員はアンデッドクラスと配属先選択ができると聞いたんですが」
そう、テルドロッド特殊能力部隊養成学校には3つの「クラス」が存在する。
1つ、ヴァリアントクラス。
ビンテックの所属するクラスだ。使い魔との融合を最終課程とするクラス。先程も言ったように使い魔の発現が配属条件で、使い魔との親密度を上げることでその力を発揮する。使い魔の発現があった隊員の過半数はこのクラスに配属される。理由は簡単だ。配属条件に「使い魔の発現」しかないのだ。
そう言えば、あの人もヴァリアントクラス出身だったような。
2つ、アンデッドクラス。
こちらも配属の条件として「使い魔の発現」が挙げられている。ただし、アンデッドクラスは少し異質なクラスで、使い魔を贄として使用することでその力を発揮する。ヴァリアントクラスとの最もな違いは「共闘ではない」ということ。また、贄として使い魔を使用することから、配属条件に「複数の使い魔の発現、及び複製可能な使い魔の発現」という項目が追加されている。
そして3つ、ノースキルクラス。
使い魔の発現のない隊員が集まるクラスだ。だが、代わりにヴァリアントクラスやアンデッドクラスに比べて身体能力が特化しやすい。上手く身体能力を伸ばすことができれば使い魔と同等にまでなる。ただし、そのためには「弱点」を補完する必要があるのだ。
レーベルやヘネシアが所属しているのがここである。
ヴァリアントクラスやアンデッドクラスはノースキルクラスのことを落ち零れだと揶揄するが、最近では僕やヘネシアがビンテックさんと仲良くしていることもあってか、あまりその声を聞かない。そりゃ、みんなあの腕で捻り潰されたくないよね。
「俺がヴァリアントを選んだ理由なんて使い魔の発現があったからに決まっとろうが。それにアンデッドにロイは向かん。ロイは複製でけんしな」
「なるほど」
ロイが大きく胸を張って見せる。その様子を見つけたビンテックはロイを自身の顔に引き寄せた。
「じゃから、俺はコイツとヴァリアントの天辺を狙うんじゃ!ガハハハハハ」
僕とヘネシアは近寄り難さを表情に出して笑った。
「それにしても遅いのぉ」
「誰か来るんですか、お友達とか?」
「いや、妹のユークが来るはずなんじゃ。補習があって遅ぅなるとは聞いとったんじゃが此処まで遅いと心配じゃな」
と言いながら、夕食に手を伸ばす。
「ユーちゃん?!」
僕よりも早く反応したのはヘネシアだった。顔を青くして。
第3話 クラスの中で最弱