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PLOTEST  作者: 神木 千
第1章 逢着する僕ら
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第2話 二人の先輩と

僕はシミュレーション室を出て隊員専用のロッカールームに向かう。


さっきは実践に備えた実技研修という形でシミュレーションを行っていた。結果は言われなくても分かっているが、散々だった。


どのような特殊生物と遭遇したとしても対処できるようになることがこの実技研修の最終目的らしいのだけど、僕には到底迎えられそうにない。


リヴ先生によると、僕は遠距離攻撃を得意とする特殊生物に耐性がないようで、要するに「弱点」を克服できていない状態なのだそうだ。世界を救う我々には「弱点」などいらない、んだとさ。


僕の前にシミュレーション室を抜けてロッカールームへ向かった彼女は僕の先輩で、この実技研修において僕の手助けをしてくれている。と言っても、彼女は僕と同い年だ。それに僕と同じように遠距離攻撃に耐性がない。


僕と同じ「弱点」を補う日々は続いて行く。


「レーベル、ご飯食べに行くよ、早く」

「あ、分かった! ちょっと待って」

「誰と話してたの」


このテルドロッド特殊能力部隊養成学校ではシミュレーション室での実技研修を終えた隊員から夕食が用意されるシステムになっている。逆に言えば、実技研修を終えるまでは食事の権利を剥奪されているというわけだ。


更に、今日は別のクラスの隊員と食事の約束をしているのだ。急がなくては。


実技研修用の練習用装備を取り外して自分の名前の書かれたロッカーに無造作に投げ捨てる。そして、棍を隅に立て掛けると勢いよくロッカーを塞いで施錠した。


「ごめん、行こっか」

「レーベル、大丈夫? さっきのことそんなに気に病むことはないよ」

「うん、大丈夫だよ」

「そう。ならいいんだけど」


カランとロッカーの中で棍が倒れる音がした。


ヘネシアと出会ってもう2年が経つ。互いに技術を高め合ってきただけあって、僕が何を考えているのか分かるようになったらしい。それがたまに気持ち悪いくらい的中するものだから勘弁してほしい。


ついさっき、はぐらかした答えも彼女は気付いていつつ、言及しなかったのだろう。


言及したら感情的になるって彼女は知っているから。


「おーい、こっちじゃ、レーベル!」

「ビンテックさん! 待たれましたか」

「いやぁ、待ってねぇよ! お疲れさん、まぁ、とりあえず座れ」


寛大な心と身体で僕らを迎え入れた大男。彼の隣には小さなモンスターが浮遊している。無論、僕らはそれに驚かない。それがボルコ=ビンテックの能力なのだから。


僕の身体と同じくらいの腕で僕の背中を叩きながら言う。


「それにしてもレーベル、どうしたんじゃ時化た顔して。また怒られたんか」

「え、あ、いやぁ、まぁ、そんなところです」

「あーあ、またやりよったんか。あの先公も懲りんな。まぁ、気にすんなや。後ろ向きに考えとったって成長はでけんからな。悪化するのがオチじゃ」

「そうですね」


豪快に笑う彼とその彼の近くでそれを真似るモンスター。羽の生えたばかりのドラゴンのようなモンスターだ。


そうして、ビンテックに言われるがまま席についた。ヘネシアは僕の隣に無言で座った。4人席のテーブルに3人。あと1席残っている。


ヘネシアは人見知りでなかなか心を開かない。とは言うもののビンテックさんと会うのはこれで3度目。そろそろ心を開いてもいい頃だと思うのだけど。


そう言えば僕とヘネシアが初めて出会った時もヘネシアはこんな感じだった。こちらから挨拶をしたというのに、それは完全に流され、練習用装備と棍を投げ渡されたんだっけ。「これを装備したら、ついてきて」って。


あの時は嫌な先輩だなって思ったのに、ただの人見知りだと分かった時は嬉しかった。


まぁ、過去の話なんだけど。



第2話 二人の先輩と


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