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PLOTEST  作者: 神木 千
第1章 逢着する僕ら
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第18話 篝火は君の傍

ビンテックさんとユークはロイとヘネシアの元へ駆け寄った。少し落ち着いた様子のロイを見てビンテックは涙ぐみながら頭を撫でた。ロイのか細い鳴き声が聞こえた。


ユークに輪と呼ばれた少年はランプの容器の蓋を閉じるとビンテックから少し離れた位置で「君もか」と呟いた。ランプの中では緑色の炎が揺らいでいた。


「君は?」


僕とカウルはその少年と向かい合うように立っていた。


「ん? あぁ、僕は輪。アンデッドクラスの隊員。コイツはベル。僕の使い魔」


緑色の炎は赤くなり、少し焦げ臭さが広がる。


「君の使い魔だよね、ロイのこと鎮めてくれたの」

「あの使い魔、ロイって言うのか。そうだね、コイツが抑えたには違いない」


輪がランプの容器を僕とカウルの目線まで持ち上げた。


「どうやってあの暴走を止めたんだ?」


カウルは少し不機嫌そうに尋ねる。すると、ビンテックに聞こえないようにこう話した。


「あの使い魔の闘争心を焼き尽くしたんだ。この先、少し戦闘を好まない性格が続くかもしれないけど。今のままだとロイ君は消滅する。早くしないと」


深刻そうに輪はロイとビンテックを見つめる。


「闘争心を焼き尽くすって、どういうことだよ。心を焼いたって言うのか?」

「そうだよ。僕の使い魔は感情を燃やすことで成長するんだ。成長すると周りに感情を分け与えることもできるようになる」


カウルは顎に手を寄せながら、まじまじとベルの入ったランプを覗いた。


「アンデッドクラスのことはよく分かんねーや」


カウルは両の手の平を天井に向けて目を瞑った。僕と輪はその様子を見て苦笑いをした。


「まぁ、そういうことだから。あのヴァリアントクラスの隊員にはそのように伝えておいて。僕はユークに用事があって来ただけだから。じゃ」


小さく手を振ると、大きめのフードを目深に被り、ユークのもとへ近付いた。


凄惨な食堂。砕かれた廊下。次々とやってくる指導員や事務員がそんな場所で口々に騒ぎ出していた。


少し離れたところで輪は座り込んでヘネシアと話していたユークを引き連れて少し暗い奥の廊下へと消えて行った。ヘネシアはムッとした表情で立ち上がり埃を払った。腰は直ったようだ。


「何やったんじゃ、あの子。ロイを此処までいとも簡単に落ち着かせやがった」


ビンテックさんがロイを抱えて僕らのもとへ歩み寄った。ロイは何処か穏やかな表情をしていた。そのビンテックさんの後ろを不機嫌なヘネシアが付いて来る。


「あの子の使い魔がロイの闘争心を拭い取ったらしいです。なので、一時的に闘いを好まない性格になってしまうらしいですが、心配しないで、と」


僕は端的にビンテックに伝えた。ロイはビンテックの顔を弱々しく見上げた。それを見たビンテックは「お前の所為じゃねぇ。落ち込むな、ロイ」と優しく返した。僕もカウルもヘネシアも、何も言えなかった。


「ところで、レーベル」

「何だ?」

「言い辛いんだけど」

「うん」


カウルは少し周囲を伺い、その先に鬼のような形相を見つけ、冷や汗をかきながらこう耳打ちをした。


「お前、放課後リヴ先生の補習じゃなかったか?」


僕の心臓がキュウと小さくなる。僕は後悔と焦燥のあまり無言で踵を返した。だが、その時にはもう遅かった。僕の後ろには鬼が立っていた。


「よくも、まぁ、長いこと忘れていられたわね、アリスレス=レーベル」

「あ、いや、えっと、ビンテックさんの使い魔がですね」

「言い訳はいらん! 易しい補習内容で終わらせてやろうと思っていたが、お前にはいろいろと足りないようだしな! 遠距離攻撃を3度防御することができるまで無限にシミュレーションをしろ! いいな!」


僕は青い顔をした。カウルとヘネシアは似たような無表情で無気力に手を振った。


「そんなぁ」


僕はシミュレーション室に向かうリヴ先生の後を俯きながら歩いた。



第18話 篝火は君の傍


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