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PLOTEST  作者: 神木 千
第1章 逢着する僕ら
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第9話 君の秘密

僕は身体を起こして答えた。


「そうですね。僕の苗字です」

「血縁関係のある人?」


更に、情報を掘り返す。ユークの尋問は何処か棘がある。


「父だと思います」

「レーベルの、お父さん」


そう、僕の父は此処にいるはずなのだ。


「でも、僕も顔を知らないんだ。血縁関係なのは認めるけど」

「ふーん、何も知らないんだ」

「はい」


ただ、父がいるのは確かなのだ。ビンテックさんからも情報は得ている。


そんな話をしているとゾロゾロと隊員が食堂の前を通っていく。早朝訓練へ向かう一行らしい。悍ましい使い魔を従えた隊員がまるで百鬼夜行のように列をなしている。


「あーあ、暇人の隊列だよ。そんなに自分磨きが大切かね」


ユークは上官の使い魔に与えた朝食の食器を片付けながら呟く。僕はとりあえず笑っておいた。


「あ、不死川上官!」


突如、片付けをしていたユークの目に見覚えのある人影が映り込んだらしい。それは声となってすぐに還元された。その声に上官も反応を見せた。


「おぉ、ユークか。餌付け、ありがとうな」


白衣を黒く染めて存在を闇に溶かしてしまったような容姿。酷いクマがあり、ユークの言っていた通り夜遅くまで研究をしているのだろうと伺える。それに、まだ若いようであるのに、白髪が目立つのも不可解だ。


「いえ、この子、よく食べるので寧ろ助かりますよ」

「なんだ、またお前自分の朝食をすべてコイツに遣ってくれたのか? 自己犠牲が過ぎるぞ」

「大丈夫です、夕食に詰めるだけ詰めているので」

「そういうものなのか? まぁいいが、空腹は最大の敵だぞ? また何か買ってきておいてやろうか」

「大丈夫ですって!」

「しかし、なぁ――」


過保護だ。僕は遠巻きに2人の遣り取りを見ていた。他愛ないまるで家族みたいな遣り取りだ。僕は愛想笑いをした。


それに気が付いた不死川上官は蒼い目で僕をチラリと見遣った。人間とは思えない不気味なその瞳には宇宙が息を潜めていた。とても壮大な歴史を感じる。


僕はその高圧的な視線に思わず目を逸らしてしまう。


「誰だ、彼は」


不死川上官はユークの前へと一歩踏み出し、庇護するように構えた。白衣の裏からポケットナイフを取り出して如何にもな威嚇だ。


慌てたユークは上官を抑えながら諭すように言う。


「上官、彼はノースキルクラスのアリスレス=レーベル君です。私の後輩なんですよ」

「アリスレス? アリスレスって言えば最高位の教官のか」

「ご存知だったんですか」


情報通の育ての親が知らないわけがない。僕はそう思った。


「ほぉ、でもノースキルクラスだと言ったな?」


不死川上官はポケットナイフを定位置に戻して腕を組んだ。


「使い魔の発現は遺伝するはずなんだが」


「遺伝」とは、不死川航が長年研究しているテーマの1つでもあるものだ。


その研究では「使い魔の発現に規則的な原因があるか」といったもので、自らの身に降りかかった使い魔の発現がどういった仕組みなのかを解明する目的で開始された。


その結論として至ったのが「発現には2種類ある」である。


1つが「遺伝」。

親に使い魔の発現者がいれば、その子は必然的に使い魔を発現する。また、発現する使い魔の種類も親と同じ種の使い魔となる。ヴァリアントの使い魔を発現した親の子はヴァリアントの使い魔を発現する、といった風だ。


2つが「特異」。

こちらについては研究材料がないために詳しくは研究できていないが、使い魔の発現はある時期を境に突如として起こった現象であることから、特異的に使い魔を発現することがあり得るのではないか、という仮説である。何かしらの影響を受けることで「遺伝」とは関係なく発現する、といった風だ。


つまり、不死川航の研究によれば「100パーセント遺伝する」のだ。


遺伝の無効化はありえない。


僕は一体。



第9話 君の秘密


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