悠柳の薫への思い
僕の前世の名前は堀越 宏亮だ。
薫ちゃんとは中学生時代から知り合いで、僕は薫ちゃんと同級生だった。この世界では僕のが上だけどね……
それで僕は小中学生時代どちらもいじめられていた。
理由は父が泥棒、母が浮気をしていたから。
母の浮気は信頼していた友達に相談したらその話を全部クラスのみんなに話されたことがきっかけだった。
実際僕は悪くないのに……
それから僕の家族は嫌がらせを受けたりしながら古いアパートで暮らしていた。しばらくして、僕の父と母は離婚した。そして、僕は父についていくことになったのだが、父は仕事で上手くいかず、僕は毎日暴力を受けていた。いわゆる虐待、英語で言うと、DVだ。
それから僕はひっそり生きるようになった。何よりいじめられていたので、友達なんて1人もいなかった。
ある日、いつものようにクラスメイトの1人にパシられて、教室掃除をさせられていた時、喋ったことない女の子(薫ちゃん)が突然何も言わず、教室掃除を手伝ってくれた。今まで手伝ってくれた人はいなかったし僕に手を差し伸べてくれた人はいなかった。嬉しかった。
でも、僕はその時こう言った。彼女に迷惑をかけないために……きっと、僕を助けたらこの子も虐められるから……
「あっち行けよ。」「やだ。なんであっち行かなきゃいけないの?」「あっち行けって!俺がやるんだよ!」僕はこの時この子を巻き込みたくない一心で叫んだ。でも彼女はやめようとしなかった。
クラスメイトがガラスを割ったのを僕のせいにされて片付けていた時も手伝ってくれた。彼女だけが、僕に話しかけてくれて、僕に優しかった。
いつからか帰りも一緒に帰るようになった。
薫ちゃんが僕と帰る時言った。
「宏亮のことは私が一生守るからだから困ったことがあったら私に言ってね。」この時僕はこの子だけは信用できると思った。それと同時に薫ちゃんのことが好きになってしまった。でも、その思いはいつしか引き裂かれてしまった。
ある日、1人の女の子に呼ばれたので僕はついて行くことにした。その女の子は学校の裏山に僕を連れていくとこう言った。
「あんたのせいで、光(薫)がいじめられたんだけど。どうしてくれんの?」僕はショックだった。その時、僕には彼女のことしか頭になかった。
そしてまたある日、ゴミ箱に彼女の靴が捨てられているのを見た。悲しかった。僕はこの日からなるべく彼女を巻き込まないように、彼女に近づかないようにした。
時には冷たく返したこともあった。時には泣かせたこともあった。それでも彼女は僕に近づくことをやめなかった。
それがとても苦しかった。
学校の帰り、1人で歩いていると1つの金色の星のような形をしている首飾りが地面に落ちているのを見つけた。誰かの落し物かと思い僕は拾った。
するとそれは光に包まれ僕までも包んでいった。そこで記憶は途切れた。
それから転生して、8歳になり僕は思い出した。前世を。でも彼女のことは思い出せなかった。そして、なぜ僕がこの異世界に召喚されたのか、理由を知りたかった。
でも、今はそんなのも興味がなくなってきた。僕には、薫ちゃんがいるから……
もういいんだ……あの世界にも戻ることはないだろうし。戻りたくもない。
この世界で薫ちゃんと幸せに生きられるなら僕はこのままでいい。
バイバイ僕の真っ黒な前のつまらない世界




