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09 メアリー・ファレリー Mary Farrelly

私はメアリー・ファレリー。

第3ラボの所長である。

第3ラボの管轄は食料に関するあらゆること。

食料の安定供給、品種改良、食品安全、そういった事を管理している。


元の世界では分子ガストロノミーの研究に心血を注ぎ、世界の三大頭脳と呼ばれるまでとなっていた。

分子ガストロノミーとは調理を科学的観点から解析する学問である。

ただの食いしん坊で食べ物に対する知識欲が人並外れていた結果、その分野の権威となっていた。


その知識はこの世界テラに来た直後は全く役にたたなかった。

テラの動物や植物はガイアのものとは似て非なるものであった。

人体にどんな影響があるのかも分からないものばかり。

まぁ、有害なものはナノマシンが体外に排除してくれるからよいのだが。


腹を満たすだけならともかく、おいしいものを作れるようになるまで遠い道のりであった。

ナノマシンによる人工食料を培養するプラントを作ってからは食料事情を劇的に改善することに成功した。

プラントが完成するまでに食べたもので最もまずかったのが魔獣の肉全般。

その全てにおいて、とにかく固いし独特な風味がある。

まず毒性があるので食べれば体内のナノマシンがフル稼働していた。


だがしかし!私はそれを克服した!


名付けて『ファレリー・アシッド』。

テラの人間が使う毒消し効果のある植物から抽出したエキスを添加した特製の酸である。

これに魔獣の肉を漬け込めば驚くほど柔らかくなり毒素も中和される。

プラントのある今となっては無用の長物であるかに思われるが、私の食への探求心は終息することなどないのだよ。

様々な種類の魔獣で試してみたが哺乳類型、鳥類型の肉であれば上質の食材となることが分かった。

これがなかなかにうまい。

特に哺乳類系の魔獣のヒレ肉などその全てがシャトーブリアンを遥かに凌駕する。


「というわけで、その魔獣を私に譲ってくれ?」


「「は?」」


突然の見ず知らずの人からの申し出に俺と弥は思わずハモってしまった。

どこから出てきたんだ?

突然目の前に現れたように見えたぞ。


「申し訳ありません、ファレリー様。

この魔獣はこのお二人のペットですので、お譲りするわけにはいきません。」


マーガレットが丁寧に断ってくれている。

ファレリー様?知り合いなのか?


「そうなのか。

うまそうなのでつい声を掛けてしまった。許せ。」


スケサンがブルっと身震いをして俺の後ろに隠れてしまった。

それにしてもこいつの食料ネタは2回目だ。

うまいのか?

俺がスケサンをジッと見つめると更に身震いをして弥の後ろに隠れてしまった。


「お兄ちゃん!スケサンがかわいそうでしょ。」


仮にうまいと聞いても本当に食べる気はない。

それよりもこいつはなんなんだ?

中学生くらいに見えるんだがやけに偉そうだ。


「この方は第3ラボの所長メアリー・ファレリー様です。

リズ様やアニク様と同じく世界の第3頭脳の一人に数えられた方です。」


俺の疑問を悟ったのかマーガレットが説明した。

へぇ、こんなにちっちゃいのにすごいな。

素直に感心した。


「人を外見で判断するものではないぞ、少年。

私がここに来た時の年齢は69歳。

それから300年経過しておる。

お前たちよりずっと年上なんじゃ。

平伏するがよい!」


「なんだ、中身おばあちゃんなのか。」


鈍い音と共に俺は宙を舞った。

景色がスローモーションに見えた。


「言葉を選べ少年よ。」


「ファレリー様は『音速のファレリー』の通り名で知られております。

その体裁きはナノマシンで強化された動体視力でも捉えることは難しいです。」


早く言ってくれ。

ナノマシンなかったら死んでたぞ、今の。


「ところで、この魔獣はまだ幼体のようじゃの。」


幼体?このサイズで子供なのか。


「成体であれば成功率がぐっと下がるが、幼体なら大丈夫じゃ。

人化手術を受けることをお勧めするぞ。」


「人化手術!?」


「そうじゃ。

手術を受けた魔獣は人の姿を取ることができるようになる。

魔獣は元々人並に知能がある。

言葉でコミュニケーションが取れるようになる。

しかも本人の意思で自由にスイッチング可能じゃ。」


スケサンが人化か。

ん?まてよ。

このパターンはもしかして!?

スケサンは実はメスだったとか。

幼体ということはすなわち幼女!

俺に懐く幼女!

メイドロイドには懲罰システムがあるけど魔獣にはきっとそんなものはない!

これはきっとありがちなそういうあれなやつに違いない!

王道展開!

そうですよね!


「少年よ。何やら不埒なことを考えておるな。」


「お兄ちゃんの考えてそうなことは大体分かるわ。」


「何を言っているんだい君たち!

今の状態では悪目立ちしすぎているからその提案を甘んじて受けよう!

ただそう考えていただけだよ。」


「お兄ちゃん、なんだが顔がにやけてる。」


「まぁ、興味があるのならアニクのラボに行くとよい。」


邪な考えはありませんが早速行くとします!


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