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蝶が見える  作者: かつわたる
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転生

あれはアゲハ蝶か?紫の模様がある、ゆらゆらと飛んでいる。蝶が一匹、ただそれだけ後は真っ暗。漆黒の世界。自分は今そこにいるようだ。


自殺したんだった。


これが死後の世界というものか?すわかるはずもない。死後の世界がどんな物か知ってるはずないし、そもそも存在するかどうかも知らない。只々暗闇の中を進んでいた。進んでいたというのは、歩いているという感覚はおろか足があるという感覚すらなかったからだ。


意識だけはある。あと視覚と言っていいものかわからないがとにかく漆黒の中に蝶が一匹いた。それをただ追いかけているつもりの感覚で只々自分の意識は存在した。



目が覚めたらベッドの上だった。動こうとしたら激しい痛みに襲われた。久々の感覚だった。ただよりによって痛いという感覚だった。足がある感覚もあるし、手もある。自分の体を見ると右手は包帯でぐるぐると固定されていて、左足もギブスで固定されている。

あと左手には点滴の針が刺さっていて、ようは病院でよく見る入院患者だった。


『助かったのか…」と呟いた。同時になんで助かったのか、自殺して助かったという事は

自殺未遂をしたと周りの目が騒ぐのがすぐに思いついた。何より妻の顔を思い出した。

会わせる顔なんてありゃしない。

生きているという希望はすぐに絶望にかわり、自問自答に入った。が、すぐに気づいた。自分は自殺に首吊りを選んだはずだった。インターネットで調べて一番苦痛がないし、準備に手間もかからない。そうか書かれていたので選んだはずだ。そこに記憶違いはない。ただその結果これだけの外傷を受けるはずはないはず…

考えを巡らせるが訳がわからない。頭を横にそらした。頭にも包帯が巻いてありガーゼみたいな物が傷にかぶせてあるが大した痛みはない、おそらくただの切り傷だろう。

病室はカーテンで仕切られていて周りの事はよくわからないが、人の気配はする。おそらく他の患者さんだろう。カーテンの前には棚がありそこには自分の名前と担当医師の名前が書いてある。やはり自分の名前だ、となるとさっきの疑問が頭をめぐる。

首を吊ったはずなのに、こんな外傷になるのか?棚の上に卓上カレンダーが置かれていた。9月のページだった。


「今は11月だよなぁ」と思いながらカレンダーをよく見る。1998年と書いてある。なんで19年も前のカレンダーがココにあるんだと思いながら更によくカレンダーを見る。

全くカレンダーに劣化は見当たらない。ベッドから出たくなるのは当然で、固定されている事はとっくに忘れてベッドから出ようとした…

「イテェ」と叫びケガ人なのを思い出す。頭の中は疑問でいっぱいになった。しかし事実を知りたいのだ。

「ここは病院…という事は…」

周囲を見回すとすぐに目的の物は見つかった。呼出ブザーだ。とにかく押してみる。


すぐに看護師がきた。20代前半の色白の綺麗な看護師さんだった。

「どうされましたか?」

「今日は何日ですか?」

「9月12日ですよ。」

「今年は何年ですか?」

「1998年ですよ、大丈夫ですか?」

「ああ分かりました、大丈夫です。」

淡々と看護師は話すと去って行った。


今はどうやら1998年の9月12日らしい。

騙されているのか?でも騙される理由もない

色々と考えを巡らせるが全く答えがでない。

そうこう考えるうちに睡魔がやってきて、僕は眠りについた。


そこは漆黒の世界だった。自殺後に見た光景がそこには広がる。そしてまた蝶が一匹いた。彼は語りかけてきた。

「君は何者だ?何故ここにいる?」

僕は答えた

「僕は死んだ筈です、何故いるのかわかりません。」

彼はまた答えた。

「わからないはずはないだろう、君は望んでここに来た。」

「ここは死後の世界ですか?」僕は聞いた?

「生とか死とかは大して変わらないものだよ、ここでは。強いて言えばここは君だ」

「僕ですか?」

「そうだ。」

「やはり闇の世界、つまり地獄ですね。今までの行いへの報いということでしょうか?」

僕は自分の声のトーンが下がっていることに気づいた。

「光と闇も似たようなものだ、違いなんて君達が勝手につけたようなものだ。まあ少なくともここは君達が言ってる天国と地獄とか言うものではない。しかし、いずれ君も来る世界ではある。まだ来るのが早過ぎただけだ。」

「早すぎた?」

「時期が来たらまた会おう。本来ここは望んで来る場所ではないのだ。ほら誰かが呼んでいるぞ」

「時期ってなんなんですか?」というつもりだったが、その前に何か現れた。

光?、真白な…?

その瞬間、自分が死ぬ前の家族だった妻の笑ってる姿が見えた気がした。そしてその光のような物に僕は吸い込まれていった。


眼が覚めると病院のベットにいた。

すぐにカレンダーを見た。体を動かすと痛いがそんなのは御構い無しに、

1998年9月を示す卓上カレンダーはやはりそこにあった。見回すと、やはり身体は固定されている、眠る前に見た景色だ。


ベッドに繋がれながら色々考えてみた。自分の名前はそのまま、でも1998年となると1998年の自分に生まれ変わったという事だろうか。ただ僕はこの時期入院した記憶がない、つまり全く同じ世界ではないという事になる。第一かなり低いがまだ担がれてる可能性も…

取り敢えずまた看護師さんを呼び出した。ココがどこで何故ここにいるのか、あと本当に

1998年なのか…今は看護師さんしか頼る人はいないのだから。


 



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