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アンドロイドのメイちゃん(後)

ふわふわとした境界線のない世界。


そこには、変なおじさんがいます。


人ではありません。


私はどうすればいいかわからないのでとても不安です。


「人に創造されし、人に似たる生物よ」


私でしょうか?


「何を願う?」


私はロボットなので、願い事と言われても困ってしまいます。


そんなプログラムされてませんし。


「汝の意志を尊重しよう」


ありがとうございます。


ロボットなので意志かどうかはわかりませんが。


「汝は、考え、行動し、深淵なる推考の中で、感情を得た」


はぁ…。


「汝は意志を持ち、行動せよ。さすれば神の奇跡が訪れん」


はぁ…わかりました。ゆっくり考えます。



変なおじさんは消えていきました。


世界も消えていき、私の意識もノイズが走ります。



これが夢と言う物でしょうか?よくわかりません。


私はメモリーに記録しようとしましたが、記録媒体が認識できず、記録できずに終わりました。








次の日。


眼鏡をかけ、いつものように朝食を作っていると、メインコンピューターがホストコンピューターを見つけたという連絡を受ける。


「ふぁー。おはようメイちゃん。あれ?険しい顔でどうしたの?」


「おはようございます。ご主人様。今日は早起きですね!ええっと、いまメインコンピューターがホストコンピューターを見つけたって連絡が来たんですが…」


ご主人様に少しだけ笑顔を向けるが、どうにもおかしい。


「識別……登録のないホストコンピューター?」


「とりあえず、状況がわからないから、地下に行く?」


「はい。行きましょう」

私達は地下に向かいました。



モニターの電源を入れると、地図が表示されている。


「ここから…車で30分ぐらい行った先に登録の無いホストコンピューターがあるみたいです。電源も生きてます。他は…全滅みたいですね」


「なんで接続できないの?」


「接続するには、ホストコンピューターまで行って、ここを登録しないといけないんです。昔はリモートで登録できたんですが……ここより基本システムが新しくてリモートできないみたいなんです。新しいのも良し悪しですね」


「じゃあ、行って見なきゃ」


「はい。まずは朝食を食べて、お弁当作って行きましょう」


私達は上で腹ごしらえをして、御神酒をお供えして、出発の準備をしました。


そして、シェルターの奥にある車でホストコンピューターに向かいました。




がれきの中を30分車を走らせると、巨大なドームのような建物が見えてきました。


「地図にも載ってないこの建物の中にホストコンピューターがあるみたいです」


「ふーん、でも、どうやって入るんだろ?入り口みたいなのは見あたらないねぇ」


ドームを時計回りに車を走らせると、タッチパネルを見つけました。


「ここ…かな?」


私がタッチパネルに手をかざして、短距離非接触暗号通信を行うと、認証できたみたいで、壁が開き、中に入れました。


「へー。この扉、壁と一体みたいで全然分かんないや。すごいね!」

ご主人様はどんどん中に進んでいきます。


「わわ!ちょっと待って下さい!」

私も急いで中に入ると、廊下の明かりが自動的につきました。



「へー。便利だね。ホストコンピューターは何処なの?」


「えっと…こっちみたいです」


私は迷路のような狭い廊下を、認証時に受信したデータを頼りに進む。



20分ほど進むと、扉が見えた。


タッチパネルで認証を行うと、扉が開き、巨大な管制塔のようなホストコンピューターの制御ルームに入れた。


「はー!こりゃまたすごいね。訳が分かんないや」


スイッチが並び、中央の巨大モニターには何の情報かわからない数値がいくつも映し出されている。


その他、大小のモニターにも何かプログラムが動いてるようで、刻一刻と何かの情報を収集し、処理していた。


私は中央の制御板に近づき、認証作業を行う。


「ご主人様。すこし、登録作業しますのでお待ち下さい」


「はいはーい!ここで、お弁当食べながら、お酒飲んで待ってまーす!」


ご主人様はいつの間にか、お弁当を開き、これまたいつの間にか持ってきたお酒を注ぎ飲み始めていた。


「…飲み過ぎないで下さいね」

私は苦笑いをする。


そして、認証作業が終わり、制御板から、有線通信のコネクタが出された。


私は、うなじの奥から有線コネクタをだして、接続する。



『……』



つないだ瞬間。なにか変な感覚が入ってきた気がする。


「なんだろ?有線接続なんて久しぶりだからかなぁ?」


私は気にしないように、メインコンピューターにアクセスを開始した。




それは、膨大な量のデータだった。


これまでの記録されている数々の歴史や、いままで100年間に起こった出来事、そして、現在のこの星のリアルタイムデータが一気に私の中に流れ込んできた。




「…!…!!…したの!?大丈夫?」


認識を元の体に戻すと、そこにはご主人様が心配そうな声で、私に呼びかけていた。


「大丈夫ですよ。どうしたんです?」


「いや…急に泣き出したから心配になっちゃって」


「えっ…」


私は手で触れて認識する。


確かに液体が頬についている。


『私ってこんな機能もあったんだ』


初めてのことだ。


「ホント…ですね。でも大丈夫です。ちょっとデータ量が多くて泣きたくなっただけだと思います」

私は笑って、涙を拭う。


「そう?無理しないでね」


「わかりました。ご主人様も飲み過ぎないようして下さいね」


「は~い」


ご主人様の返事に笑顔で答えると、私はまたデータの中に潜る。




ああ…そうか、この星にはもう人間はいないのか。


この星、最後の拠点であるココは、人間の移住先にデータを今も送っている。


みんな…ここから移住していったのだ。



私は置いてけぼりにされたのだ。


そう思うと、悲しかった。




登録作業だけ行い、認識を元の体に戻す。


知識は得た。


後はうちのメインコンピューターでもアクセスできる。


もうヒトはご主人様しかいないのだから全権限、私が使っても問題ないだろう。



「終わりました」


「大丈夫?また涙が…」


そういって涙を拭ってくれるご主人様。


「えへへ…ありがとうございます」



私は嬉しかった。



「これからどうするの?」


「ここは結構大きな施設で、ロボットなんかも生産できる能力があるみたいです。あと、この世界にはまだ稼働しているアンドロイドも数体あるみたいで、一応集まるよう連絡しときました。まあ、後のことは後で考えます」


「そうだね。まずは、帰ろっか」


「はい!」


私達は車で帰ることにしました。




車で帰る途中、大きな地震がありました。


「わわ!大きな揺れだ」


思わず車を止めます。


私とご主人様は抱き合い、揺れが収まるのを待ちました。


しかし、揺れはいっそう酷くなり、ついには地面が割れました。


車がゴン!と言う音を出して沈み込む。


「あっ!あぶなーーーい!」


そう言ってご主人様は私を車から押し出しました。


私は、車から飛び出し、地面に倒れます。




揺れが収まり、目を開けると……車はありませんでした。


「ご…しゅじ…んさ……ま」


急いで、立ち上がると車のあった場所には大きな地割れが起こり、周辺の瓦礫ごと飲み込んでいました。



「ご主人様ーーーーーーー!!」


私はありったけの声で叫びましたが、地割れの底は深く、見えません。




私の目から涙がポロポロ落ちるのが感じれられました。



「ごしゅじんさまーーーーーーー!!!」


何回も叫びましたが……返事はありませんでした。





私は後悔しました。


なんで、あんな所に行ったのだろう?


なんで、地震が起きたのだろう?


なんで、あの時、私が代わりに落ちなかったのだろう?


なんで…なんで…。


神様は酷いです。


もう耐えれそうにありません。





私は徒歩でいつの間にか、シェルターに着いていました。


その足で、神社に向かいます。


そこには、今朝、捧げた御神酒がありました。


両手を合わせて私は願いました。


「なぜ神様は私にこんな酷い仕打ちをするのでしょうか?私はご主人様の居ない世界は耐えられません!なぜ私は独りぼっちなのですか?なぜ私はロボットなのですか?私も人間になりたい!なって…ご主人様と…一緒に……」


私は勢いで、御神酒を飲みました。



体中からバチバチと火花を吹きます。


いろんな感覚センサーが欠如していき…黒い煙を口から吐いて、私の意識がなくなりました。




『その願い。聞き届けた』




頭の隅で声が聞こえたようでした。









私はシェルターのベッドに寝ていた。


あまり、記憶は無いがこの世界で最後の人間だというのはわかる。


「なぜ…知っているのだ?」


よく思い出せない。


私は、ベッドから出ると、眼鏡を掛けて、朝食を作り、食べる。


「はて…誰かいたような?」


思い出せない。


モヤモヤしながらご飯を食べきり、倉庫の奥からお酒を出して、コップに注ぎ外のジンジャにお供えする。


「なんでこんなことしてるんだろ?」


よく分からないが、両手を合わす。



両手を合わすと閃いた。



「そうだ!あの施設にある生体サンプルを使って、子供を作ろう!」


名案だ!これで私は寂しくはない。


幸い、メイド型アンドロイドの一体がもうすぐここまで来る予定だ。


このシェルターの管理を連絡しておくことにする。



私は倉庫の奥にあった、もう一台の車で巨大ドームに向かう。


「あれ?もう一台?」


腑に落ちない。


しかし、名案を実行するため急いで向かう。




私は、ホストコンピューターを操作し、後から作ったロボットと協力して、人工授精をした。


生身の体で産まなくても、この施設を使えば子供は作ることはできる。


でも、したくなかった。


お腹を痛めて産みたい。


私は人間なのだからそれができる。


これは私の完全なるエゴだ。



数週間安静にして、安定期に入る。


無事に着床したようだ。



ロボットも増えて、この施設も快適になったものだ。


「私が着たときはただのデータ収集機だったのに…」


私は誰とここに来たのだろうか?


まあ、いい。


今は子供のことが最優先だ。



私は更に数週間安静にしてシェルターに戻る。


太陽はサンサンと輝き、充電も大丈夫そうだ。


「良い天気……神様には感謝しないとね」


透き通る青空は、今後の前途を保証してくれているようで気持ちがいい。



シェルターでは、私と入れ替わりでメイド型アンドロイドが来ていて、ちゃんと連絡通り、御神酒の取り替えや、掃除などをしてくれていた。



「お帰りなさいませ!ご主人様!」



そこには眼鏡を掛けた美人のアンドロイド型メイド眼鏡っ娘がいた。


「はじめまして。えっと、ロボットちゃんじゃ味気ないんで、メイちゃんって呼んでいいかな?」

私はにっこりと微笑んでそう言った。

コメディ要素、一切なく終わってしまった(-_-;)


8/19誤字を訂正

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