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完結

使徒として奇跡を補佐する仕事について丸々10年はたった。


今も毎日のお酒は欠かさない。


「ちょっとおっさん!!手伝ってよーーー!」

コイちゃんが膨大な書類の前で悲鳴を上げている。


「もう少し飲んでからね~」


俺は、コイちゃんにいつものようにおっさんと言ってもらうことにした。

山崎は前世の名前だし、飲んだくれの俺にはおっさんという形容詞がしっくりくる。

そんな感じだからだ。



そんな、考え事しながらうつらうつらしていると、いつの間にかコイちゃんが俺の前に仁王立ちしていた。


いつの間にか酒瓶まで持っている。


「う~~~!!今日と言う今日は許しません!!正義の鉄槌をくらえーーー!!」

コイちゃんは酒瓶を俺に振り下ろす。


「うわ!!危なかった」

俺は寸でのところでかわせた。


「ぐぬぬ~!ぬかったわ!!」

コイちゃんは意外とマジで攻撃しようとしていたようだ。


「そんな顔だと、美人が台無しだよ~。そんな事よりかさ、こっち来て飲もうよ!」


「美人という所は素直に受け取りましょう。でも、コレとソレとは話が別です!!神様から明日までにあの書類の束を整理しなさいって言われてるでしょ?」

コイちゃんは書類の束がある机を指さして怒鳴る。


「大丈夫、大丈夫。なんとかなるよ」

俺は酒を注いで飲んだ。


「あーーー!また飲んだ!」


「ほら、コイちゃんも一杯どうぞ♪」

俺は満面の笑顔で酒を注いだコップを渡す。


「も~。わかりました……一杯だけですよ?」

怒りながらもコップを受け取り俺の隣で飲みだすコイ。


「お!さすがコイ大明神!話が分かるねぇ~。嬉しいよ」


「ぷっ!何ですかその大明神って!まあ、悪い気はしないです」

思わず笑いだすコイ。


『ちょろいな』

俺はニヤリと笑いながら思う。


「……なんか、悪い顔をしています」

ジト目で俺を睨みつけるコイ。


「そんなことないよ!!ほらほら!もう一杯どうぞ!!」


そんな事を数時間繰り返したら、予想通りコイは眠りについた。


「くー。くー」

可愛い寝息を立てるコイ。


「さてと、頑張りますかねぇ」

俺は気合を入れなおす。


机に座り、書類の束を見つめる。


そして、電光石火の早業で書類を片付ける。


書類をチェックして不備があれば残しておき、サインがいれば書いてまとめる。


数時間で片づけてやった。


「まあ、本気を出せばこんなもんかな。神様にはお世話になってるし、仕事はしないとねぇ」

俺は独り言のように呟く。


そう、実はこういう書類仕事は得意だ。


でも、気分的に最後の最後まで期日が迫らないとやる気が起きない。


夏休みの宿題は31日の夜十時から始めるタイプ。

それがこの俺なのだ。


「さてっと……」

俺は酒を飲みながらコイちゃんとは別の場所に座る。


そして、プロジェクションのような物を取り出した。


「みんな元気にやってるかなぁ~」


俺はリモコンのような物をプロジェクションに向けて操作する。


これは天界の便利な道具で各世界の様子が見れるテレビみたいなものだ。


「まずは……純ちゃんは元気に過ごしている様子だなぁ。もう小学生4年か。早いね」


そこには、元気を校庭を走り回る子供がいた。


利発そうな元気な子供だった。


「そして……メイちゃんは人間になったんだ。子供もできて……良かったねぇ」

お腹を大きくした人が映る。


「大体は、元気に暮らしてるねぇ……あ!剣闘士の人は亡くなったんだぁ。お酒まで用意してくれてるし……なんか悪いことしちゃったなぁ」

俺は少しだけ悔やんだ。


「小料理屋も繁盛してるみたいだし……今度、降りてみようかな?」

俺はハーフエルフの料理を思い出し、お酒を飲んだ。


「ダンジョンの百合ちゃん達も仲良くなったし、女戦士も、魔導士ちゃんも、獣人の娘も、鍛冶屋の男の子も仲睦まじくていい感じだね」

俺は安堵して酒を飲んだ。


「そして、お化けちゃんは……後ろでまだ寝てるか」

後ろでくーくー寝てる古井戸の幽霊もとい、コイちゃん。


「みんな元気そうだねぇ……暇があれば見に行きたいねぇ」


元気そうに生き生きと生活している姿を見るのは好きだ。

大したことはしていないけど、元気にしてるなら転移して色々したかいがあったというものだ。


「ありゃ?……痴女ねーちゃん魔王は……結婚してる。めでたいねぇ。でも、世界相手に色々してるから不穏な空気だって……なかなか、すごい事してるじゃない!頑張って!!」

プロジェクターにはその国の情勢が出てくる機能があってその字幕を見ながら思う。


「しかし、カール君も羨ましい!!あんなに女の子から取り合いになっちゃうなんて…男冥利に尽きるね!!今度飲みに行こうかなぁ?」

俺はハーフ魔族の胸で鼻血を出したことを思い出し、もう一度見たいと思った。



俺はプロジェクターを仕舞う。


「さて、明日もお酒をおいしく飲むために仕事しますかねぇ」


俺はそう決意して、床で寝た。



「う~ん。仕事が……!書類が……!……おっさんは本当に無責任だ~!!」

古井戸のお化けはそう寝言で叫んだ。

最後までご覧いただきありがとうございました!連載中の他の作品も引き続いて見ていただけると幸いですm(__)m

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