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囚われの姫

天高く空を突く巨大な塔。

それは魔物が作ったと言われている。


高さは万年雪を称える山も越え。空を泳ぐ雲を越え、地上からはてっ辺は見えなかった。


そんな、魔物の作った塔に、我ら人間の姫君が囚われた。


勇者である、俺、ロジャーが王の命により姫を救う。



色々な冒険があった。



落ちたら即死の毒沼迷路の階層。アンデットのオマケつき。


居るだけで熱のダメージを受けるマグマの階層。ドラゴンのオマケつき。


極寒の氷の階層。即死氷柱のオマケつき。

等々



どれも、勇者である俺でないと攻略できない難関中の難関なダンジョン。

その冒険もついに終わる。



とうとう、魔物のボスである姫を連れ去った三つ首ドラゴンも倒した。


「姫は…近い!」


満身創痍だが、何とかなるだろう。

奥に行くと扉がある。

きっと姫はそこだ。


扉の前まで行き、柄を持つ。

「さあ、姫!いま助けますよ!!」


期待に胸を打つロジャー。


『これで帰れば正式な……そして、ついに姫と、ムフフ』


ロジャーは渾身の力で扉を開く。


「姫!ご無事ですか!!」



そこには、笑顔の姫…………………と、一人のアロハシャツを着たおっさんが一升瓶を持って、談笑していた。



時が止まる。



「ふふふ!面白い方ですわぁ~!あら?ロジャー!いらっしゃい!!」


「アッハッハ!ああ?この人が噂の勇者ロジャーさん?初めまして!タダ通りすがりのおっさんです」


「まあ!ご冗談を。フフフ!」


「さあさあ、ロジャーさんもこっち来て一杯やりなって!飲めるだろ?姫様から聞いてるよ!」



「まっ!」



「ま?」



「待て待て待てーーーーーーーーーーー!」

勇者ロジャーは腹の底から大声を出す。


その声は部屋中に響く。



「まあ!やっぱり庶民出身は!うるさい事この上ないですわ」


「まあまあ、元気があっていいじゃない?」


「それが、よくありませんの!いくら、お父様公認だからってギラギラしすぎなんですの!この間なんて、寝込みを……」


「わーーーーーーーーー!!」

勇者ロジャーはフルプルートとは思えない速度で、二人の間に割り込み大声を出す。


「いらっしゃい!スケベェ~さん!」

おっさんはニヤニヤ笑いながら液体の入ったコップを差し出す。


「スケベじゃない!!…っと、すまない。少々取り乱した。ありがとう」

顔を真っ赤にして否定した後、取り繕うように冷静におっさんに語るロジャー。


満身創痍の上、とんでもない事が暴露されかけて色々と落ち着きたいところだった。

額からも、戦闘以上の嫌な汗がとめどなく滴る。


『水とはありがたい。貰っておこう』


ロジャーはコップを貰い、一気に飲み干す。


「っぷはぁ!……ヒッウぅ!」

ロジャーはすぐに赤くなり、液体の正体が酒だと知る。


「ひっうぃ!ですって!可愛い!!」


「おっ!良い飲みっぷり!よっ!勇者!世界一ぃ!」

パチパチと拍車が聞こえる。しかし、視界がグルグルと回りだしたため姿はハッキリ見えない。


『いったいどんな悪夢だ!』


ロジャーは錯乱する。


『たしか、ドラゴンを倒して…扉を開けたんだっけ?なんだこの状況??』


意味が解らなかった。


「ホントに!勇者ロジャーは遅いんだから困ってしまいますの!」


「良いじゃないの、ちゃんと迎えに来てくれるんだから。昨今の男の子では珍しいよ!」


「でも、1年ですのよ!今年で私も27歳…ああ、16歳で嫁いでいった姉が羨ましいですわ」


「!?!??」

ロジャーは話の内容についていけなかった。


「ああ、途中だからかいつまんで話すと、おまえさんがなかなか、プロポーズしない割には、ギラギラするんで魔族にお願いして、愛を試させてもらおうって話になったの。そしてその試練が1年もかかって怒ってるって話」


「はぁ!?」


衝撃の事実。

全ては、王女の罠だったのだ。



「だってぇ、本当は18歳で結婚する予定でしたのよ!でも、見合い相手からは全部断られ続けて、25歳越えちゃって……焦ってちょっと強くて、目立ってたロジャーに白羽の矢を立てたら結婚する前からギラギラするでしょ?なんかぁ~理想の形じゃないっていうか~」

長い金髪の毛先をくるくるしながら拗ねながら言う姫


『殺したくなってきた』


これまでの死にかけの激闘を思い出し、ロジャーは初めて人間に殺意を抱く。


「はぁ~貴族っていうのも大変だね~。頑張れ!ロジャー!おっさんは応援するよ!愛があれば乗り切れるさ!」

おっさんは最高の笑顔でロジャーの肩を叩く。


「で…では、魔物は全て…」


「お父様が雇ったに決まってるじゃん!今頃はもう復活して元のねぐらに帰ってるわ。ちなみにここは別荘」


「頑張れ!ロジャー!愛があれば、なんくるないさ~」


またまた衝撃だった。

ロジャーは泡を吹いて倒れそうだった。



「さあ!ロジャー!帰りましょう!!そして、2日後にパレードを開いてぇ、最中に国民の前でプロポーズするのぉ!それでぇ~、結婚式を10日ぐらいしてぇ、新婚旅行は……」

姫は指折りをしながら理想の結婚は何たるかを語る。


『……死にたい』


ロジャーは四つん這いに倒れ、現実逃避する。


「おい!ロジャー…」

おっさんは真面目な顔でロジャーに語り掛ける。姫はまだ理想の結婚観を語っていて現実に戻ってきていない。


「おっさん…」

ロジャーは涙目になりながらおっさんと見つめあう。



「……婿養子は尻にひかれるのが長持ちの秘訣らしいぞ」

おっさんは達観した顔でそういった。


「諦めかい!」

ロジャーは思いっきり立ち上がった。


「おっとっと!」

おっさんはそのはずみで後ろに尻餅をついた。


おっさんが尻餅をついた場所にはフェイクの財宝が鎮座してた。


その中の宝箱が突然動き出す。

そう、宝箱に偽装した魔物だったのだ。


「ありゃ?」

おっさんはその魔物に食われて絶命し、消えた。



一方ロジャーは理想の結婚観を語る姫を横目に見ながら、そっと、振り返り、扉に向かう。

姫はまだ気づかない。



そして扉を閉め、走ってダンジョンを逆走する。


「愛なんて……全くないのかよーーー!!」

それは、ロジャーにも言えることだが、ロジャーは走る。


ただただ逆走する。






そしてロジャーは行方不明となった。











その後、捕まえられ、姫との間に10人の子孫を作り、不幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし。

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