美人局~おっさんの能力公開~
おっさんは花見をする。
それは、転移した先が自然豊かな花満開の場所だったから。
ポカポカと暖かな太陽。
植物の豊かな緑。
心なしか空気もうまい気がしてくるようだった。
「こりゃ、つまみもいらないかも」
おっさんはたっぷりと飲んだ。
「しかし、いろんな世界をみれて楽しかったな~!!」
今までの旅をつまみに酒を飲む。
「でも、なんだか、死ぬ前とあんまり変わらない気がするなぁ……何でだろ?」
おっさんは考えるふりして酒を飲む。
「はぁ~、一人で飲んでると酔えないなぁ~」
全くの嘘である。
生前もそうだが、おっさんは酔いつぶれたことは無い。
顔は赤くはなるが、超酒豪である。
吐いたことも一度もない。
そのために生前は肝臓を壊れるまで飲んでしまったが、神様に酒豪能力を強化してもらってまさに底なしの酒豪になったのだ。
おっさんが手に持ついつもの一升瓶にコップ。
『日本酒湧き出る一升瓶』と『何処でもコップ』という。
これは、神様から貰ったチートアイテムである。
名前の通りのアイテムだ。
戦闘能力は使用者に寄るところが大きいが、おっさんレベルでは皆無に等しい。
おっさんの独白は続く。
「全部名前も覚えてるし、続きがどうなったか気にはなるけど、転移しちゃったから分かんないんだよねぇ……気になるなぁ~。元気してるかなぁ~?」
おっさんは人の顔と名前を覚えるのが異常に早い。
さりげなくさらっと言われても一度聞けば顔と名前を自然と覚える。
たとえ、どれだけ酔っていようとも翌日以降もしっかり覚えているのだ。
それは酒を飲む以外の生前から有る唯一の特技であった。
その特技のおかげで、生前は何度も飯や酒にありつけたのだから意味ある特技であった。
これも、もちろん神様によって強化されている。
がしかし、1回こっきりの転移を繰り返すおっさんには無駄なスキルであった。
「まぁ、いいや!」
おっさんは諦めるのも早かった。
これは性格である。もちろん、強化はされていない。
そんなとき、おっさんは発見する。
布面積があまりない服を着たグラマーなエルフ美女を。
おっさんは目が悪くなくて良かったと神に感謝した。
よく見るとエルフ美女はこっちに向かって手を振っている。
顔は微笑をたたえ、明らかにおっさんを見ていた。
「あらら~~!体が勝手に動いちゃう~~!!」
明らかに演技である。
鼻を伸ばし、顔を赤らめ、だらしなくなったおっさんは稀に見る俊足で、エルフ美女の元へと向かった。
「うふふ!」
「ははは!」
「ほほほ!」
なんと、よく見れば複数人のエルフ美女が居るではないか!
褐色・スレンダー・グラマーよりどりみどりの美女がおっさんに微笑みかける。
もちろん全員が布面積が皆無に等しい。
「待っててね~!!子猫ちゃん達~!」
おっさんは夢見心地のまま出向いた。
「ウフフ!」
「ハハハ!」
「ホホホ!」
声がおかしいような気がする。
しかし、おっさんは気付かない。
結構なスピードで走ってはいるが、エルフの元にはなかなか着かない。
「子猫ちゃ~ん!!」
やっとこさ、おっさんは近くまで来た。
「イラッシャイ!」
「イラッシャイ!」
「イラッシャイ!」
三人のそれぞれのエルフ美女が微笑みながらおっさんに語りかける。
まるで、脳みそに直接話しかけるようにハッキリ聞こえる。
「いっただっきま~~す!!」
おっさんは、三人のエルフ美女にダイブする。
おっさんが美女の元に着いたと思った瞬間。エルフ美女達は消えた。
代わりに現れたのは食虫植物を巨大化させて凶悪にした感じの牙のある植物だった。
「ありゃ?」
植物は素早い動きでおっさんを飲み込む。
おっさんは、食虫植物に食べられ転移した。