第8話:赤眼の少女
特訓期間が終了した日の夜、疲れた身体のケアを充分に行う。
明日は期末試験なので、早めに就寝する。
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身体からまるで幽体離脱したかのような感覚、それなのに意識は深く深く沈んでゆく。
「ここは…?」
周囲は真っ黒い地平線で足下は10cmくらい水に浸かっていた。
「久しぶりだね、アタル」
そして目の前には、玉座とその前に白い髪と赤眼の少女が立っていた。
「お前…誰だ…?」
少なくとも俺には、この少女の記憶が全くない。
「ひどいなぁ〜。せっかく僕のことを受け入れてきたと思ったのに〜」
「受け…入れる?」
「そう!君は今欲しているね、力を。ボクを!」
「何言ってんだよ!意味わかんないことばっか言ってんじゃねーよ!!」
俺が怒鳴り散らすと、少女が歩み寄ってくる。
「このままじゃ、君は弱いままだよ。僕なら君を強くすることができるよ、今すぐ…」
俺は、何か嫌な予感を感じ取り後ずさりする。
「え!?」
足が、動かない。
少女から離れることを拒絶するかのように。
「やっぱり僕を欲してるんだね…、嬉しいよ」
そう言うと、少女は俺の心臓のちょうど真上に手を添える。
「ボクが何者かだって?わからないなら思い出させてあげるよ!」
少女の腕が黒いモヤを纏ったかと思うといきなり俺の身体を貫いた。
「うっ!」
「じきにわかるよ、ボクの使い方。まぁせいぜい頑張ってね…。力が欲し…時に呼…で、」
「お前、の…名前は?」
「ボクの、…まえは、…タ…」
意識が朦朧としていく中で少女はそう言い残した。