第7話:特訓Ⅳ
「それじゃあ、始めるぞ〜キムはレガリアありでいいからアタルは木刀を使用する。勝敗はこっちでジャッジするからまぁ思いっきりやれ。ちなみに負けたら罰ゲームな〜」
「それ絶対俺にやらせたいだけだろ!?」
キムが吠える。
「まぁよーく考えろ。お前は身体強化できるが、アタルはデフォルト、通常状態だ。木刀分のリーチも懐に入れば関係ないだろ!」
「それも…そうだな。確かに俺の負ける要因が見つからない」
それはあまり深く考えていないせいだろ。
まぁ俺もそれほど深く考えていないのだが…。
「始め!!」
優人の掛け声で戦いの火蓋が切って落とされた。
まず俺は、零の型、影炎を使ってキムの様子を見る。
「身体強化、120%!」
キムがそう呟くと身体が淡い黄色の光を纏う。
「行くぞ…アタルゥゥ!!」
なんでこいつはこんなにガチなんだ!?
キムが木刀の間合いを通過し肉薄してくる。
「おりゃりゃりゃりゃっ!!」
すごい掛け声がダサい…、スマ〇ラのメタナイトかよ…。
そんなことを思いながら、キムのラッシュをすんでのところで躱していく。
キムのラッシュが止んだ時を見計らって間合いを取る。
「能力使えない割にはやるじゃあないか、アタルゥ」
「それはこっちのセリフだ。ってか喋り方キモイんだよ!!」
そう言った瞬間キムがまた間合いを詰めてきた。
今だ!
「もらったぁぁぁぁぁぁ!!」
キムが渾身の右ストレートををアタルの顔を目掛けて打ち込む。
だが、そのパンチは俺を捉えることができなかった。
ゴスッ!!
次の瞬間キムの後頭部に俺の斬撃がクリンヒットする。
「ガハッ!!」
「赤神流:一の型、虚空斬…」
キムがその場で膝から崩れ落ちる。
「勝負ありだな」
「いったい、なにが…」
「赤神流:一の型、虚空斬。間合いを詰めてきた相手に対し、狭まる視野を利用して死角に入り背後から斬る技だ。ここまで綺麗に決まるとは思わなかったけどな」
「そんなことは、ありえん!!俺は、視覚も強化していた。それなのにそうやすやすと俺の視覚の死角に入れるわけが…」
こいつのテンションさっきからおかしいな…。
「その秘密は、縮地とずらしだ。お前が間合いを詰めてきた時に俺も接近してお前の体感速度を速めたんだ。斬撃の構えを取ることでキムの意識を俺から木刀に移した。人間の目は集中された視線から少しずらすだけで簡単に標的を見失う」
「そんな…俺が、負けただと…」
「それじゃあ罰ゲームの筋トレな〜。実際お前が筋トレサボりすぎだからこの勝負をやったんだけどな〜」
(それにしても、さっきのアタルの動き、10年近いブランクがあるとは思えないな…)
こうして俺達の特訓は順調に進んで行った。