第27話:助かったぜ
スニークで森の上を通過しながら、敵めがけて一直線に進む。
「見つけました!」
2人が固まって行動している。
大柄な男子生徒はいないようだ。
「行くぞ、俊哉!」
「わかったよ、圭太」
敵の武器は刃の長さが1mくらいの両刃剣とハンドガン2丁だった。
「ここは、私と万里花ちゃんで抑えるから、2人は残りの1人をお願い」
「わかった。行くぞキム!」
「あいよ」
万里花と紗音が地上に降り、アタルとキムがそのまま、もう1人の方に向かおうとする。
「圭太!」
「ああ、行かせるかよ!」
空中の2人に向かって銃を構える。
銃にマナを込めて、異能を纏わせた弾を放つ。
「くらいな!」
2丁の銃で一斉射撃。
「ただの鉛玉なんか怖くねーぜ!」
大剣のひと振りで弾丸を弾く。
「アタルは先に行っていいぜ!」
「わかった、……死ぬなよ…」
そう言いながら、アタルはその場を離れる。
「フラグ建てんなよ…」
「さぁ、僕達も始めようか」
そう言いながら剣を構える。
(こっちは、自分で言うのもなんだけど1年の主席の私がいるし、万里花ちゃんだっている。それなのにあの落ち着きはなんなの?)
その落ち着きが妙な不安を募らせる。
「行くよ!」
俊哉が紗音に接近。
「万里花ちゃん、援護お願い!」
紗音も俊哉に接近、俊哉の左肩口目掛けて太刀を斜めに振り下ろす。
しかし、俊哉は身を低くしてこれを躱し、紗音の右側に回り込み、その無防備な脇腹に突きを繰り出す。
ガキッ!!
紗音のシールドに突きが阻まれる。
「フロストアロー!!」
氷の矢が俊哉を襲う。
しかし俊哉は再度紗音の正面に入り万里花の魔法を躱すと下からの切り上げで紗音に追撃。
紗音は剣先を地面に向け、相手の切り上げにタイミングを合わせ自分も切り上げを放つ。
キィィィン!!
刀同士が擦れながら衝突する音が生じる。
相手の切り上げをうまく受け流し、そのままバク転で距離を置く。
(この人、やりづらい…。まるでこっちの動きを読んでるみたい……)
「あんたが馬鹿で助かったぜ!」
再度銃にマナを込める。
「さっき弾かれたのを見てまた同じのでくるお前に言われたくないね。何発撃ってこようが、この大剣で斬るまでだ!!ってなんだこれェェ!!」
大剣は重厚な暗い銀色ではなく、無色で透き通っている。
「爆ぜな!!」
圭太が弾丸を発射。
「チッ!関係ねー!ぶった斬る!!」
大剣を大きく振りかぶる。
キムが弾丸を避けずに斬ろうとしたことで圭太から勝利を確信した笑みがこぼれる。
「アルカリ金属って知ってるか?元素の第一族にあたるその金属達はある条件を与えるとヤバイ反応を起こすんだぜ」
大剣と弾丸が接触。
刃の表面がひび割れ、弾が大剣の内部に入る。
ドッバァァァン!!
爆音と水しぶきがキムの身体を吹き飛ばす。
『仮想戦闘体損傷、致命傷により行動不能、イジェクトします』
キムの敗北を伝えるアナウンスが流れる。
「これで、振り出しみたいだね」
「あと3人!」
「そんな…」
ゲーム開始直後に奪ったリードをものの数分で無いものにされてしまった。
「いったいどうやって…」
2人は動揺を隠しきれない。
撃った弾は計4発。
最初の2発を受けたら大剣が透明になって、残りの2発を受けたら爆発した。
4つとも異能を使用したのだろうが2つの変化に接点を見いだせない。
「あんたらに教える義理はねぇよ」
銃口をこちらに向ける。
「次はあんたらの番だ」




