第25話:優くんご乱心
背中に柔らかい感覚。
頭を上げようとすると、
ガゴッ!
「痛って!!」
頭をぶつけた衝撃で今自分が置かれてる状況を理解した。
カプセルのドアを開けて出るとそこには、笑いを抑えきれてない仲間達がいた。
「とりあえず、1回戦突破!」
「「イェーイ!!」」
まったく…。
(なんであんな戦いの後にこんな元気でいられんだよ…)
しかし、居心地が悪いわけではないのでアタルもその場に留まる。
バン!!
急にドアが勢いよく開かれる。
「アタルゥゥゥ!!」
そこには血相を変えた優人の姿があった。
「おー!優人、勝ったぜ〜!」
アタルは笑顔で勝利の報告をする。
「なんで…」
優人が1歩、1歩と近づいてくる。
「ん?どうした優人?」
ガシッと両肩を掴まれる。
「なんで万里花を守りきれなかったァァ!!!!!」
「えぇ!?」
あまりの剣幕に、本能が逃げろと信号を送ってくるが優人に両肩を掴まれているため逃げようがない。
「死ぬ覚悟は出来てるんだろうな…」
「あはは…、冗談キツイって…」
掴まれた肩からミシミシと音が聞こえてくる。
え?これマジ!?
「いや、怖い怖い怖い!!嘘だよね!?ね!!」
「………」
しばらく続く沈黙。
ニコッ。
優人が笑みを浮かべる。
やべぇ…、目の奥が笑ってねー…。
「やめてください!優くん!」
万里花が優人の腕に触れる。
「あははっ!冗談だよ冗談!」
俺の肩から優人が手を離す。
「本気で殺るわけないじゃないか〜」
優人が再度、笑顔を俺に向けるが目の奥は怒ったままだ。
【やる】が【殺る】になっているのはその場で俺しか理解してなかった。
「あれは、私の不手際による敗北です。紫藤さんのせいにするには横暴が過ぎます」
「わかってるよ…。ただ万里花の関係することだから少し熱くなっただけだよ」
「優くん…」
万里花が優人に抱きつく。
「優くん!そこまで私のことを…」
「せめてそういうのは2人っきりの場所でやれよ…」
紗音なんかもうゆでダコ状態だぞ。
「お前達が出ていけばいいだろ?」
「私には優くんしか見えません!」
こいつら、すごいな…。
『まもなく、2回戦を開始致します。出場チームのメンバーはカプセル内に入ってください』
「それじゃ、俺はもう行くわ。頑張れよ!」
「はい!私の活躍を見ててください!」
「あぁ、ずっと見てるから」
優人が部屋をあとにする。
『生体反応を確認、今から仮想世界にワープします』
視界がフェイドアウトしていき、真っ暗になる。
『3…、2…、1…、仮想戦闘体構築完了。意識を移動します』
「優くんが見てくれている…。
優くんが見てくれている…。
優くんが…」
万里花のカプセルからブツブツと聞こえてきたが同時にフェイドアウトしていった。




