第2話。
雨の中傘も差さずに走ればそれなりに濡れるものだ。
そんなことは分かっていたのだが、そうせざる負えない状況というものもある。
少女を背負い濡れる事など考えずに走る。
先ほどの人からの冷たい目線に比べればまだ涼しい。
幸い、今は夏だ。初夏というべきか、気温はそれほど低くない。
しかし水が湿っていく衣服の感触がやけに気持ち悪い。
少しでも早くこの感覚から逃れようと必死に走る。
少女のためでなく、この気持ち悪さから早く開放されるがために。
家に着くと客は一人もいなかった。かなり助かる。
母親に事情を説明しようと探すが、あちらが先に俺を見つけた。
「・・・たーちゃんびしょ濡れじゃない、傘はどうしたの」
そっちか。もっと他にあるだろ気付くべき場所が。
「この子、この子」
と背中の子に注目させた。
「あら、どうしたのその子」
事情を一から説明すると母親は二階の俺の部屋に布団を敷き少女の着物を脱がせ寝かせた。
なんと落ち着いた態度をとるのか。
そして何事も無かったかのように昼ごはんの支度を始めた。
雨で濡れた材料で。
夜になると自室からバタバタバタッっと激しい音が聞こえた。
様子を見に部屋に入る。
「な、なんだお前、ここどこだ」
「ここは俺の部屋だ」
パニックを起こしている少女に何の説明もなく自分の部屋だと答える。
間違った事は言っていない。夢でなければここは俺の部屋だからだ。
「お前だれだ!」
もっともな質問だ。この場所しか説明していない。
「藤見太祐」
とりあえず名乗っておいた。
「ふじみ、たすけ?」
「あぁ」
「・・・・・・なんだお前はっ!!なんでここに私が!?」
バタバタと騒がしい最中、母がすすっと介入し、なんとも落ち着いた感じで説明した。
「・・・・・・ありがとうございます」
パニックも納まり、親父が自慢の飲み物を持って飲ませた。
「私が作った自慢の抹茶クリームホットだ。体が温まるから飲みなさい」
すんなりと受け取り息で冷ましながら一口、コクリ。
間髪入れず
「まずいっ!!」
親父は酷く落ち込んでいた。




