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第1話


俺の家は住宅街にぽつんとある喫茶店だ。

朝はバス停の近くということもあり客足は多い。

ただいつも同じ顔ぶれ。

部活動も委員会にも入ってない俺はいつも夕方の6時頃に家に帰る。

ちなみに今日は7時半だった。

忙しい時などは手伝いに出されるが、今日は手伝う気になれなかった。

家の裏口からではなくいつもの様に表の客の入り口のドアから堂々と入る。

別にこれといって意味などはないけど、寧ろ裏から入らなければいけないのだが

自分の家なのに裏口から入らなければならないのは何かに負けた気がして嫌だった。

小さい男なのだ。

「おかえり、たーちゃん」

高校生にもなった息子をちゃん付けして呼ぶ俺の母親。

なんでも小さい頃から○○ちゃん、と子供を呼びたかったらしく俺をこの名前にしたらしい。

たらちゃんでなくて本当に良かったと思う。

「ん」

いつもの様に素っ気無い返事をし、二階にある自室へと向かった。


鞄を椅子に置きベットの上で横になっていると母親の声が聞こえた。

「たーちゃん、今日は葵ちゃんは来ないの?」

知り合ってからは毎日の様にうちの店に来ては母親と話していた。

元々、田舎に居た時から家が近く、息子と年齢も近いので母と仲が良かったのだが、

こっちで再会した葵が大人になったのか料理の話などで

今は毎日盛り上がっていた記憶がある。

そのため、たまに店を手伝ったりもしていた。

「別にいつも来るわけじゃないだろ」

「いつもは殆ど来てるじゃない」

ああ言えばこう言う母である。

説明するのもめんどくさいので知らない、と答えた。

「そんな事ばっかり言ってると愛想尽かされちゃうわよ?」

別に好いてもいない女に愛想を尽かされるからってどうなんだと思い、

ご飯を軽く済ませ重たい瞼を閉じた。


制服を着っぱなしという事も忘れて。



次の日、朝から家の手伝いに駆り出される。案の定制服はしわしわだった。

学校が休みで本当に良かった。

休日だけあって平日のバスが来てしまう、早く早く!という感じはないが、やっぱり忙しい。

こんな休みの日に一体何しにうちの店に来ているんだか。本当に暇な人達だと思う。

もちろん居るのは殆どが顔なじみ。そのせいもあってか顔と名前がほとんど分かってしてしまう。

来ていない人も。

俺はコーヒーを出したり軽食を運んだりする仕事なのだが、

店はそんなに狭くはないのだけれど同じ場所をぐるぐると回ったり、

お皿を下げたりしなければならないため結構足を使う。

親父のようにコーヒーやら何やらを作るほうが疲れないだろうなぁと毎回思う。

しかし親父に俺がコーヒーとか作る、と言うとことごとく

「お前はまだコーヒーのコの字も知らないだろ。後10年は早い」

と却下され入れてくれないのだ。

たかだかコーヒー作るのに10年の歳月を費やさなければいけないのかと思うとアホくさくなる。

俺はずっと運ぶ係りでいいと思う。


昼近くになり店が落ち着いたところで母に昼ご飯の買出しを頼まれた。

昼飯を食べるためだとしぶしぶ承諾し、外に出た。そして雨が降っていたので傘をとりに家に舞い戻った。

家から15分ほど歩いたところにあるスーパーに向かう。

今日はなんて足を使う日なのだろうか。


頼まれていた買い物を済ませ店を出るとまだ雨が降っていた。

今日の降水確率はどれぐらいだったろうと昨日の記憶を蘇えらせるがテレビなど見てないと気付く。

そこに傘も差さずに歩いている着物を着た少女がいた。

身長からして小学生低学年位だろうか。それ以前に今日祭りなんてあっただろうかなどと考えるも

気にせず通り過ぎた。


ベチャッ


と人かが倒れるが聞こえた。

人ってこんなに綺麗に倒れる音がするんだと関心しながら振り向くと着物を着た少女がうつ伏せになっていた。

仕方なく一番近くに居た俺が大丈夫か?と尋ねるも返事はなし。

なんだか周りからの冷たい視線に気付く。

俺が倒したことになってるのかなんという冷たい視線。

その場に居ずらくなり逃げるように少女を連れて家に向かった。

何も悪いことなどしてないのになんでこんなヤンキーに絡まれた人が助けを求めてるのに冷めた目で見られてるような

仕打ちを受けなければいけなかったのか、未だに謎だった。



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