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その4

 一人、バスから降車したおにぎり君。幸いなことに、このフードコートは二十四時間営業だ。寒さのしのぎには問題ない。

 彼氏は、ここで初めて壁時計に目をやった。


「もう十一時半なんだ」

 仕事に於ける責任を全うできなかったという思い。無論そのはずなのだが、一方では純子に惹かれていたせいもあるかもしれない。だが、感傷的になる前にやるべきことがあった。そこは生粋のA型ときている。


「起きてるかなあ」


 恐る恐るケータイを手にする彼氏。一瞬だけ起きてないことを望んだが、すぐにブルルと首を横に振った。やがて向こうから


「くおら! いったい何時だと思ってるんだ!」


 これで一気に助手の目が覚めた。


「す、すみません、木俣さん。実は……」

 


 ここまでの経緯を喋り終えたところ、ケータイの向こうより


「な、なんばしょっとや! この、おたんこなす!」


 興奮すると、つい出てくる郷里の博多弁。


「お、おたんこなすって聞くの、十五年ぶりですよ」


「ハア? そんなんより、早く捜さんかい!」


「あ、はい。でも、どこから捜せばいいのか」


「お子ちゃまか! とにかく、トイレに行くって向かったんだろ? そんなら、トイレの中やら裏からだ! 建物の裏も、な! で、お次は、ガソリンスタンドはあるのか? ああ、あるんなら、その横とか裏とかもだ!」


「建物の裏は、荒々しい日本海ですが?」


「ボケナス! 誰がそこまで捜せって言った? 塩味になるぞ、塩味に」


「あ、はい……ねえ、木俣さん? いっそのこと、警察に連絡しましょうか? 万が一ってことも」


「ん? 無駄だ、無駄だ! そんなんで出勤するわきゃないって!」


「そ、そうですよね」


「とにかく見つからなかったら、キミの給料から毎月三万円ずつ天引きするからな! それで、五ヶ月で十五万円になるわさ」




 健気な助手は言われたとおり、トイレの周り、次にショップの周りを捜している。裏は林だ。その手にはショップコーナーで買った土産物の提灯を手にしているのだが、やはりその灯りでは弱すぎた。


「これじゃあ、無理だ」


 ここを捜すということは、すなわち転がってる死体に出くわす可能性も万に一つくらいはあるのだ。彼氏は、それが嫌だったのだ。

 そこの探索を早々に切り上げ、次にやや離れているガソリンスタンドに向かったのだが、その途中に


「ぷらっとパーク? 何だろ?」

 実に便利な世の中である。彼はすぐにケータイで検索したところ


「へえ、一般道からもサービスエリアが利用できるんだ」

 

 サービスエリア内の施設の利用度を上げる為に、一般道からも利用出来るように設置されているものだった。但し、高速道路への乗り入れは不可である。

 興味を持った田部君は提灯片手に、その足で中へと進入していった。

 そこには説明やら図やらの看板が立っていた。外灯のおかげで、それが確認できた。彼は、その看板へと歩み寄った。

 それを眺めているうちに、薄暗い中、やや離れたところにあるベンチで誰かが横になっているのに気づいた。そこは、やはり気の良いヤツである。


「こんなところで転寝してると、風邪を引きますよ」


 そして、さらに近づいてみると――はたして、そこには一人の人間が横たわっていた。 無論、善良なるこの青年、すぐさまそこへと歩み寄り


「ご気分でも悪いんですか?」


 そう言いながら、手で相手の肩を軽く揺すったところ、それまで微妙な均衡を保っていたものが一気に崩れ――そのままの姿勢で地面へと横倒れになってしまった。そして、表になった顔らしきもの。これが、およそ原形をとどめていない。

 これに固まったおにぎり君、ようやく声を上げ


「う、う、う、う……」

 一呼吸おいた。


「うわああ!!!」


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