救援
○第一編隊一番機・紫電改
敵を発見した。
「敵発見。剣、ついて来い」
『ツー』
敵はソ連機La-5の四機編隊。それと戦っているのは黄土王国の九六式艦上戦闘機に似た単葉機が二機。どうも旗色が悪いな。
「黄土王国空軍、聞こえるか。こちら荒鷲傭兵団。救援に来た」
『! おお、救援感謝する』
『アンタ方はちょっと退いてなあ。俺らの戦い方を見せてやる』
低空での戦闘を得意とするLa-5に合わせて高度を下げ、高度二百で戦うことにする。
○???・La-5一番機
なんだ、あいつらは。 俺たちが低空戦闘を得意としているのを知っているのか? だが、今度の奴らはさっきの奴らと違って戦いがいがありそうだ。ゼロにシデンだったか。油断はできないな。
「二機編隊で奴らを襲え」
『了解』
○第一編隊二番機・零戦
低空での機動性に関して恐ろしく優秀な奴って聞いちゃあいるが、俺の零戦に勝てんのかね?
「さあ、勝負だ」
『来いよ、ゼロ!』
ぐるぐると小さな円を描くようなワゴンホイールを作り、こっちを挑発してきているが、遅いねィ。格好の的だ。操縦桿を押して急降下する。奴らにゃあ、見えてねえんじゃあねえかな?
「墜ちな」
二十ミリ機銃四丁が火を噴く。
○???・La-5二番機
くっ、撃たれた? いったいどこから……。周囲には僚機しかいない。あのゼロはいったいどこから撃ってきているんだ……!
自分の前後左右にはいない。ということは、
「上か!」
『ざーんねん。下なんでィ』
その声が彼のきいた最後の言葉となり、彼は僚機と共に墜落した。
○第一編隊一番機・紫電改
やはりうまい戦い方をするな、剣は。これが年の功って奴か。相手はサッチ・ウィーブで襲い掛かってくる。零戦落としの技だな。大した技術だが、そんなもので、俺を撃墜できると思うなよ? スプリットSで逃げる。そこからのロー・ヨーヨー。体に急激なGがかかるが、そんなものはどうだっていい。
『くそっ! 全然当たらねえ!』
『ぐあっ、ダメだ、離脱する!』
一機撃墜完了。あと一機。
『ちいっ、これならついて来れるかっ』
僚機が出す煙に紛れて超低空の地面すれすれへと敵は逃げたらしい。
「ふうん、利用できるものは利用しますってか。悪くない考えだ。だが、甘いな」
三笠がにやりと笑う。
○???一番機・La-5
くそっ、なんなんだあいつ、あれがゼロの後継だってのか! たかだかヤポンスキーごときに俺たちが負ける……? こんなところで日露戦争の二の舞になるわけにはいかない!
一度着陸して体勢を立て直すために今は逃げの一手を打つ。だが、それを敵は許してはくれなかった。
『逃げられると思ってんじゃねえぞ!』
「バ、馬鹿な! 下だと!」
敵は煙を上げて錐揉み落下する僚機の下を潜り抜けて自分のすぐ後ろで機銃を撃ってくる。あの野郎、一体どんな機動をしたんだ!
機体がどんどん穴だらけになる。ついに右主翼が付け根から吹き飛んだ。
「く、ううっ、うわあああああっ!!」
もう助からない。すまない、みんな―――。だが、俺の最後の意地を見せてやる!
「爆弾、投下」
炎にまかれながら見たものは迫ってくる地面と投下されて建物の屋根へと吸い込まれていく二つの爆弾。そして、自分の下を潜り抜けて高速で飛び去る新緑色に日の丸と鳥のエンブレムをつけた敵機だった。