幕間 登場人物紹介③
サンニイ飛戦の紹介です。
○アイラ=ヴィルヘルム
「いる…………失礼しました。何も見てないから安心してくれ」
控室に三笠クンがやってきた。ま、まだ着替えてる途中なのに! 下着姿を見られてしまい、慌てて体を隠したけど、もう遅かったですよね。
「ど、どうぞ」
「わ、悪いな。こんな時に。実はこいつに自己紹介してやってほしくてさ」
三笠クンの後ろからひょっこり顔を出した飛行帽の少女。なんて可愛らしい顔立ちなんでしょう。
「わかりました。私はこの隊の飛行隊長アイラ・ヴィルヘルムです。ドイツから来ました。Me262っていうジェット戦闘機に乗ってるから、きっと私がどれなのかはすぐわかると思いますよ?」
「じぇっと、ってなんですか?」
「えっと、プロペラを使わなくても空を飛べる飛行機のことです。詳しいことはよくわかりません。ごめんなさい」
うう、三笠クンの手前、しっかりしたところを見せたいのに……。
「アイラはSSに所属してたんだっけ?」
「SS?」
「SSというのは、親衛隊です。正式名称は<ドイツ民族性強化国家委員会>。軍事力を保有することを認められた要人警護隊、といった感じです。私が所属してたのではなくて、ダッハウというところで殺された兄さんが所属してたんです」
あ、空気が、どんよりと、うう、ごめんなさい。
○アイン=ヴィルヘルム
姉さん……。すぐへたれるから三笠さんに認めてもらえないんだと思うけど……。女としての魅力がここまであって認められないってある意味ではすごいと思う。
「あ、うちの姉さんのことは気にしないで。すぐに戻るから。私はアイン。アイン=ヴィルヘルム。ここの飛行班長の妹。Bf109に乗ってるんだ」
「Me109とおなじなのにねー。なんでそう言い張るかなあ」
「ハンナ、いらんこと言うな!」
「実際変わらないんだしいいじゃん?」
「どうして同じ飛行機なのに二つ名前があるんですか?」
私が答える代わりに、三笠さんが答えた。
「公式な名称はMe109なんだが、戦時中はBfで呼んでいたことも多かったらしい。E型からはMe表記になってるな。で、この中でE型じゃないのはアインだけ。D型だっけ?」
「ええ。壊れたら乗り換えないと、とは思ってますが、まだしっかり飛べてますから」
「いいことだ」
なぜか姉さんをあやしながら褒めてくれた。完全に姉さんを子ども扱いしてるなあ。まあ、いいことだけど。三笠さんが姉さんの婿になってくれたら、いろいろと楽しそうなんだけどなあ。
○ハンナ=ハイリンヒ
アインが黙り込んだし、次はわたしかな?
「わたしの名前はハンナ=ハイリンヒ。大尉で、Me109Fに乗ってるの。よろしくね」
「よろしくお願いします。あの、金橋さんが言ってたのですが、タカラヅカって、わかりますか?」
「ああ、日本の少女歌劇団のことでしょ? 一度だけ見たことがあるよ。華やかなんだ」
「その人たちの中にいても気づかないって言ってました」
「まあうれしい。それ、結構な褒め言葉だよ」
ドイツにもあんなのがあればいいのにってよく思ってたなあ。懐かしい。
○パウラ=シュタイン
次はわたしですね?
「私はパウラ=シュタインです。あなたが来るまでは、そこにいるジゼルと一緒に一番の新入りだったんですよ? 新入り同士、よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「パウラはなかなかの腕前のやつなんだ。アイラに似て虫すらも殺せなさそうな顔だが、模擬空戦で俺に四十戦中十勝二十五敗五引き分けに持ち込んだエースだ」
「隊長に似て、って、どういうことですか高円中佐」
「ん? 顔だけ見たらそうだろ? いかにも家の庭より外には出たことがありません、って顔だしな」
「これでも昔はやんちゃ娘で知られてたんですけどね」
まあ、今は違うのかな?
○ジゼル=ケプラー
次はあたしの番だ。最後か。
「あたしの名はジゼル=ケプラー。この隊の六番機を務めてんだ。よろしくな。こんなかじゃあ、隊長に次いでサンロクと交友があるんじゃあないか?」
「どうしてですか?」
「まあ、そいつは秘密だよ。まあ、ヒントは金橋中尉が握ってるんじゃあないか?」
「ちょっ、ジゼル大尉! それはバラしちゃダメでしょう!」
おや、金橋中尉じゃないか。立ち聞きしてたってのか? 無粋な奴だね。
「いや、悪い悪い。さっきの話は無しで」
「わ、わかりました。忘れました」
「よしよし、いい子だね。……金橋中尉、あんたは後でお仕置きだね。罪状は、そうだな。乙女の話を立ち聞きした罪だ」
「そんなっ! 偶然通りかかった時に聞こえてきたから止めただけなのにっ!」
○高円三笠
ジゼルに追い出された俺とカタリナは、近くのベンチに腰掛ける。
「なんか、めちゃくちゃだな、あいつら」
「けど、楽しそうなところですね」
「まあ、女しかいねえし、お前から見りゃ天国かもな。あそこに男一人で放り込まれてみろ。あいつらがただのか弱い女なら男としては天国かもしれないが、あいつらはナチス・ドイツのもとで戦闘訓練を受けた筋骨逞しい女たちだ。地獄でしかねえ」
「金橋さん、大丈夫でしょうか」
「さあな、まあ、あいつは元陸軍中野学校卒のエリートだ。少し老けたような姿になって帰ってくるかもしれないが、まあ、大丈夫だろ」
「それは、大丈夫って、言わないんだと思うんです」
「大丈夫と言ったら大丈夫。俺が大丈夫と言ったら大丈夫なんだ。さ、次はサンヨンだ。ローレライ部隊からはさっさと逃げるぞ」
「ローレライ?」
「あいつらのドイツの伝説にあるライン川の魔女のこと。あいつらの部隊章は魔女だから、ローレライ。もしくはセイレーン部隊だ。まあ、これに関しちゃ、あいつらと一緒にに出撃した時にでもわかるさ」
俺は立ち上がり、隣の部屋に入る。カタリナはやはり俺の腰にしがみついた。人見知りかっ。