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異界の荒鷲  作者: 飛桜京
第一章
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問答

 ○青年


 拾った果実を少女に手渡す。

「これ、お前の?」

「―――」

 何か言おうとしたようだが、何故か声が出ない。代わりにこくりと頷いた。


「お前、一人?」

 こくり。

「喋れないのか?」

 こくり。

「それは先天的に? 後天的に?」


 頷く代わりに喉を指差す。そこは、火傷の痕があった。


「こいつはひどいな。虐待か? まあ、そうでもなきゃこんな格好してないわな。奴隷か?」

 こくり、こくり。二回頷く。両方を肯定しているらしい。

「少し待ってろ」


 背負っていた背嚢の中身を漁り、ひとつの小さな箱を取り出す。その中には白いクリーム状の何かが入っている。


「おお、これだこれ。ちょっと上向け。塗ってやるから」


 そのままできる限り優しい手つきで喉にクリームを塗ってやる。それはひんやりとしているから、少しくすぐったいかもしれない。


「こいつは火傷を治す薬だ。少しは楽になると思うぞ?」


 ○少女


 気休めかもしれないけど、楽になったので、それを身振りで示すと、男の人はニイと笑いました。


「どこに所属してる奴隷だ?」

 西を指差したのですが、男の人にわからないというような顔をされました。うう、声が出せないのがもどかしいです。

「うん。わからん。それと、めんどくさいから口で何か言う素振りだけでもしてみろ。俺は理解できるから」

”西の方角にある伯爵のお屋敷で働かされています”

「伯爵。それはケーズ伯爵のことか?」

”その通りです”

 男の人の顔が少しだけ明るくなりました。よかった。

「ふうん。なら、そこまで案内してくれないか? 道がわからん」

”わかりました。ですが、少々お待ちください”

「ああ、それを拾うのか。いいよ。手伝ってやろう」

”いいんですか?”

「ああ。ちょっと待ってな」


 そう言うと男の人は道に転がった果実を率先して拾い始めました。それは、私の仕事なのに。

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