出会い
とある町を一人の青年が歩いていた。年齢は十八~二十歳くらいか。被っている笠のせいで容貌は分からないが、東洋のサムライのような服装に、腰には一本の刀。ずいぶんと長いところを見ると、東洋のかなり地方に伝わるという斬馬刀というものだろうか。顔の左半分は髪と布で隠れ、笠の下からほんの少しだけのぞく肌と黒い上着から覗く白色のキモノ以外はすべて黒く染められている。そんな怪しさ満点の青年はゆっくりと観光するように、しかし、全く隙のない動きで人のあまりいない道を選んで歩いていた。
同じ町を一人の少女が歩いていた。長い黒髪の上には狼のような耳がついており、腰には尻尾が覗いている。ボロボロに擦り切れた白いワンピースを着て、手足は重そうな鎖で繋がれている。奴隷なのだろう。小さな手に大量の果物が入った大きな籠を抱えて、じゃらりじゃらりと音を立てながら歩く。その少女も、自分が獣人であることを隠すかのように耳を極力垂らし、尻尾を足に巻いてスカートの下に隠しながら人気のない道を選んで歩いていた。そして、鎖に躓いて転んだ。
果実が道に散乱する。それを見た青年が果実を拾い、少女に手渡した。これが二人の出会いだった。