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異界の荒鷲  作者: 飛桜京
第一章
15/51

幕間 登場人物紹介

章間兼人物紹介になっています。

 ○夏見小町


 晩ご飯を食べ終えたときにカタリナちゃんが一人でやってきた。珍しいな。高円中佐はどうしたんだろう。


「? どうしたのカタリナちゃん?」

「皆さんの」

「いいよ」

「ま、まだ何も言ってないですっ!」

「えへっ、ごめんね。何か用かな?」

「み、皆さんのことを紹介してほしいんです」


 小さなかわいい少女が上目づかいで頼んできたらみんな頼まれちゃうよねっ。


「いいけど、私たちはこの前しなかったけ?」

「そ、そうですけど、もっとよく知りたいんです!」

「そっかあ、いいよ。じゃあ、ついておいでよ、一緒にこのギルドも案内してあげる」

「ありがとうございます!」


 ○ ○ ○


「えっと、私は夏見小町。階級は少尉で、好きなものは甘いお菓子かな。乗ってるのは屠龍っていう正式名称は二式複座戦闘機。満州国から来たんだ。だから私だけこんな変わった格好をしてるんだよ」

「マンシュウコク? ダイニホンテイコクという国ではないのですか?」

「大日本帝国は私の住んでた満州国を作った国。いいところなんだって。実際、日本の兵隊さんたちは優しい人が多かったんだよ」

「そうなんですか」


 ちょこちょこ場所の紹介を含めつつ、資料の山を抱えている金橋中尉に出会ったので、彼の説明をする。


「あのスーツの人は金橋中尉。金橋以蔵さんだよ」

「呼びましたか?」

「あ、この子に案内を兼ねてもっと詳しい紹介をしてたんです」

「へえ。まあ、仲間のことはよく知っておきたいもんね。僕は金橋以蔵中尉。元大日本帝国海軍の震電っていう試作戦闘機のテストパイロットだよ。まあ、今では海軍自体がなくなったんだけどね」


 資料を地面に置いたということは話に付き合ってくれるってことなのかな?


「か、金橋さんの機体は、変わった形ですよね」

「ああ、そうだろうね。よく異形の戦闘機って言われるよ。……おっと、この資料を運ばないといけないんだった。ごめんね、話はまた今度」

「い、いえ、ありがとうございました」


 資料を抱えてまた歩き出した金橋中尉を見送って私たちも歩き出す。


 ○ ○ ○


 浴場の前で高円大佐と剣少佐に出会った。お風呂上りなのかな? 体から上る湯気が大人の男の魅力ってやつを醸し出してるね。


「あ、あの」


 カタリナちゃんが剣少佐の目を見て口ごもる。あ、飛行帽を目深にかぶった


「どしたぃ。今は牛乳くらいしか奢れねぇぞ」

「いや、そういうことじゃなくて、カタリナちゃんがみんなのことをよく知りたいっていうので案内を兼ねて紹介して回ってるんです。ということで、もっと詳しい自己紹介をしてあげてくれませんか?」


「まあええよ? オッチャンの名前は高円社。階級は大佐で百式司令部偵察機の操縦士や。元大日本帝国陸軍の少佐で、ここに来た時に二階級特進で大佐になったんや」

「どういうことですか?」

「二階級特進っていうのは戦死した時に昇格できるんや。どうやらオッチャンらは元の世界では全員死んだことになっとるんやなあ。靖国には写真あるかも知れへん」

「ヤスクニ?」

「戦死者を祭る神社のことや。日本のすべての戦争で戦死した兵士がそこに奉られてるんや」

「そんなところがあるんですね」

「うむ。よし、オッチャンは終わり。次はこの人斬りもどきの紹介やな」


 バン! と剣少佐の背中を叩く高円大佐に、剣少佐は飲んでいた牛乳を噴出した。


「なあにするんでぃ。まったく、危なぃじゃねぇか」

「それでもこっちにすべてピンポイントで噴出してくるのはなんでやろな」

「才能? ま、んなこたあどうでもいい。俺の名前は剣平八少佐。今は元海軍機の零戦を操っちゃあいるが、ガダルカナル戦役で戦死扱いになった元陸軍中尉でさあ。足を失ったのもその時だねぃ」

「さっき、剣少佐は元やくざって夏見さんから聞いたんですけど、本当ですか?」

「あっ、いっちゃダメ!」

「へえ? 夏見ぃ、言うようになったじゃねえかぃ」

「ひえっ、つ、つい口が滑っただけです! お、お風呂に入りたいので、それでわっ!」

「「あっ」」


 あ、カタリナちゃんおいてきちゃった。


 ○剣平八


 …………さて、どうしようかね。大佐は風呂に戻っちまったし。さっさと中佐にでも預けようかね。


「つ、剣さん?」

「あぁ?」

「ご、ごめんなさい!」

「いや、斬ったりはしねえから安心しなぁ。まあ、夏見は本当のことを言ってるけどなぁ。確かに俺ぁ元ヤクザ者だよ」

「あ、え? じゃあ」

「その通り、今はもう違うってことさあ。夏見のバカに代わって途中まで案内してやるよ」

「あ、ありがとうございます」


 凄く怖がられてるんだねぇ、俺は。まあいいけど。


「ここが格納庫。ここに青葉がいるはず……ああ、いたいた」


 ローブを着た人物が現れた。こいつ、性別はどっちなんだろうなあ?


「どうしたんですか少佐? カタリナちゃんなんか連れて。」

「うんにゃ、特に用事はねえんだが、こいつの案内ついでに自己紹介をしてほしくてねぇ」

「そのくらいならいいですよ?」

「んじゃあ、頼んだよぅ。あとで、高円兄妹でも探しといてやってくれい」

「りょうかーい」


 ○青葉諒


 剣少佐を見送ってカタリナちゃんに向き直る。

「んと、僕の名前は青葉諒。男か女かは秘密だよ。わけあって顔を隠しておきたいしね。簡単なヒントを教えてあげれば、僕は当時広島にいた。ってことくらいかな? 疾風っていう高円中佐の紫電改によく似た機体に乗ってるんだよ」

「ヒロシマ、ですか」

「そう。おっきな爆発でさー、町が一瞬にして消えたんだよね。そのあと、いつの間にか僕はここにいたんだ」

「…………そんな、ことが、あったんですか」

「そそ。しってる? 高円大佐は空襲からあの二人の兄妹を庇って戦死。そのあと中佐がブーゲンビルで、若草ちゃんは僕と同じように長崎で亡くなったんだって」

「…………」

「あ、ごめんね、いやな思いさせちゃって。すぐにここを離れて高円兄弟のところへ案内するよ」

「い、いえ、だいじょうぶです。けど、本当にみんな死んじゃったんですか?」

「うーん、そうだね。まあ、その話はおいおいするよ」


 ○高円三笠


「待て、待つんだ若草。これには訳が―――」

「ほう、ちゃんとした説明をしてくれないと、この刀が額に刺さることになりますからね?」


 若草にマウントを取られて刀を突き付けられているときに青葉がカタリナを連れてやってきた。そして帰ろうとした。


「お邪魔しました~」

「見なかったふりじゃなくて、助けてくれっ!」

「え~、だってめんどくさいですもん」

「かつ丼二杯でどうだ?」

「あっ、青葉大尉! 放してください!」


 変わり身凄え早いな。おい。俺の命はかつ丼二杯分なのか?


 ○ ○ ○


「で、何か用なのか?」

「この子にもっと詳しい自己紹介をしてあげてほしいなあ、ってことで。仲間のことをもっとよく知りたいらしいですよ?」

「そうかあ。わかった。じゃあ、若草、先にしてもいいぞ」


 若草が前に出た。


「そうですか。ではお言葉に甘えて。私は高円若草少尉です。父さんと一緒に百式司令部偵察機に乗っていて、後部座席で索敵魔法を発動させています。戦闘能力に関してはそこまで期待しないでください」

「どうしてここに入ったんですか?」

「私の家族は全員この世界にやってきたんです。だから、私もここにいる」

「そうなんですか」

「じゃあ、次は兄さん」

「了解」


 若草が一歩下がって俺が前に出る。


「改めて俺は高円三笠。階級は中佐で元大日本帝国海軍ラバウル方面航空隊所属の大尉だ。うちの隊の中では唯一のもとから空を飛んでた男らしい」

「ラバウルって、どこにあるんですか?」

「俺たちが元いた世界の東南アジア。元はドイツ領南洋諸島って呼んでた植民地に俺はいたんだ。内地……、日本本土とは別の場所にいたんだ」

「そうなんですか。あの」

「ん?」

「マンシュウって、どこにあるんですか?」


 満州っていやあ、夏見の出身地だったかな?


「ああ、あそこも俺たちの世界の中国大陸ってところにあるんだ。国と言われたが一部の政治家たちはあそこを国として認めてなかった国でありながらも国であらざる国だよ」

「そうなんですか。勉強になりました」

「そうか。おまえ、もう飯は食ったのか?」

「近くまで行きましたが、一人だと入りにくいです」

「そうか。じゃあ、一緒に行こう。若草もどうだ?」

「わかりました。行きましょう」


 俺たちは食堂へと向かった。今度ほかの部隊の紹介もしてやろうと思いながら。

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