前文
一機の純白の戦闘機が篝火の林立する洞窟のような場所に降り立ち、 その中から 一人の青年が姿を現した。
その直前まで何をやっていたのだろうか。疲労困憊のような、乗り物酔いにやられたような姿で、滝のように汗を流し、顔は青白い。そして、足がその機能を失ったかのようにがくりと膝をつき、そのまま前のめりに倒れる。
その姿を一人の少女が発見した。年は二十歳になる前くらいであろうか。だがその顔つきはどこか幼い。薄青のワンピースがよく似合っている少女。
その少女が青年を見つけ、その幼い見た目の割に豊かな胸に抱き寄せる。
青年が疲れ切った眼で少女の顔を見、その白い肌に冷たくなった指の先で触れる。昔はこれと逆のことがあったなあ、とゆっくりとかみしめるように呟いた。
今までどこにいたのかと少女が問うと、青年は未来だ、と答えた。
未来を旅してきた青年。彼は自分の見てきた今の時代ではありえないような技術を少女にゆっくりと語って聞かせた。
少女はそれをひとつ残らず記憶し、仲間に伝える。それを確認すると、青年はすでに穏やかな寝息を立てて少女の腕の中で眠っていた。
これは、未来を旅してきた青年と、この少女が出会ったころから始まる物語。
それでは、始まり始まり。