信じてる。
「いかないで」
それは小さなようで大きな願い。
彼の大きな手をちっぽけな手で包み込む。
「ごめん」
私の心は土砂降りなのに。
こんな日でも空は青く晴れ渡っていて。
雲一つ見当たらない。
「嫌、嫌」
否定の言葉が風でかき消される。
何時もの音が聞こえない。
「……もういかなくちゃ」
彼の声だけが、私の小さなセカイに響く。
「また、遇える?」
やっとでてきたのは
歯切れの悪い、言葉。
「わからない」
儚げに揺れる、彼。
きっと、
彼にはもう時間がない。
それでも彼は笑っている。
晴れた空がほんの少し泣いている、気がした。
「泣かないで」
優しい言葉が私を包む。
「きっとまた遇えるから」
弱々しく彼は言う。
待って、待って、
まだいかないで。
ここにいて。
一緒にいるって約束したくせに。
「嘘つき」
つぅっと流れ落ちる、涙。
「でも」
彼が笑ってそう言うなら、私も笑って言える。
「信じてる」
「だから」
「迎えに来て」
読んでくださり、本当に嬉しいです。
ありがとうございました。




