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エピソード8 羨望のショタコン

Episode8

登場人物

濱平 万里:主人公

カイト:親戚の子…という設定

寺西 紀子:数少ない友人

望月 唐子:ブルジョアなクラスメイト


小豆色の電車に揺られる。

新入生が入ったばかりのゴールデンウィーク前ほど酷くはないが、通学時は流石に混んでいる。 カイトは私の胸にぴったりくっ付いていた。


出かける時も一緒に行動する事…そういう条件だから仕方が無い。 カイトも一緒に通学する。


万里:なんて言い訳しよう…。



周りの視線がやけに気になる。 特に女子。 明らかに母性本能オーラ発散しまくっている。 私だってこのままカイトをぎゅーっと抱きしめたくなるのを我慢しているのだ。


まあ、大学は出入り自由だし、たまに近所の子供が構内に入り込んでくる事もある。 守衛に一言言われそうだが、何か聞かれたら「学校の先生の知り合いで、挨拶しに来た」…位にでも言っておこう。



駅を降りて大学の正門に向かう迄の通り、

通称「大学前通り」。 学生が好きそうな雑貨屋やら、ファーストフードやら結構侮れないレストランやら、ゲームセンターやら、何故か発売日の前日に漫画雑誌が買える本屋やらが軒を連ねている。


カイト:「凄い人やな。」


確かに、…でも私もいつの間にか慣れていた。



寺西:「お早う。」

万里:「あっ、お早う。」


後ろから、唯一の友達 寺西紀子が声をかけて来る。


寺西:「昨日どないしたん 急に休んだりして。 松本センセの授業小テストやってもうたで。」

万里:「い! まじ?」


物理化学の講義は年間通して4回の抜き打ち小テストをやる事になっている。 前期、後期の試験に合わせて、この小テストの成績が単位に結構影響する…らしい。



寺西:「いやん、何これ〜。 かぁわぁいぃいぃん! 何処で拾ったん?」

万里:「和菓子屋の前。」


寺西、いきなりカイトを引っ捕まえて後ろから羽交い締めにする。


寺西:「可愛い…欲しい…この子。」


カイト、何故だか半泣き


寺西:「アンタの知り合い?」

万里:「えぇ、まあ。」


カイト、なんとか女子大生の魔の手から抜け出して万里の影に隠れる。


寺西:「どうしたん? 恥ずかしいん?」


寺西、顔がにやけて崩壊している。



果たして幸か不幸か、守衛に呼び止められる事も無く校門を無事通過。


学内中の女子が振り向いているのではないだろうか。


女子1:「見てみて、あの子 可愛い。」

女子2:「なんで、こんなとこにいんの?」


カイト、広い構内を歩きながらドギマギ挙動不審。



こっそり自習室に連れ込むと、早速同期の女子達がたかってきた。


女子3:「誰、この子、可愛い。」

女子4:「濱平さんのボーイフレンド?」

万里:「うちの従兄弟。 暫く預かってるの。」


とりあえずそう言う事にしておく。


女子5:「僕、名前はなんて言うの?」


カイト、照れて万里の影に隠れる


女子達:「可愛い〜」


カイト、女子大生にもみくちゃにされる。



万里:「カイト、悪いけど午前の授業の間、適当に遊んでてくれるかな。 それで、12時30分になったら此処に集合。 良いかな?」

カイト:「小遣い使てもええ? おば、お姉さんに今日の分もろたんやけど。」

万里:「良いけど、幾らもらったの?」

カイト:「500円。」

寺西:「じゃあ、お姉さんが後500円あげるから、今晩はお姉さんの家に泊りにけえへん?」


カイト、万里の影に隠れて首を横に振る。



…とは言ったものの、カイトの事が心配で授業は上の空。 変な女にたぶらかされてやしないだろうか…あの子、意地汚いから。


こんな事ならマンションで留守番させておけば良かったかな。



長い講義が終わって自習室に戻ると、やはり女子ダカリが出来ていた。

何故だか望月がカイトにくっ付いている。


望月:「はい、これ食べて、…美味しいよ。」


食べかけのアイスを自分が使っていたスプーンでカイトの口に運ぶ。


望月:「あーん!間接キッスしちゃったぁ。」


万里:止めてくんない? (あくまでも心の声)


望月:「ねえ、僕、今日帰り、どこか美味しいもの食べに行こっか!」

カイト:「えっ、ほんま?」


万里:「意地汚い顔しない!」


万里、思わずカイトの脳天をグーでゴチン。


カイト:「ねえちゃん、痛い…」

望月:「あーん、かわいそう〜」


万里:何よ、みんなに愛想振りまいちゃって、餌くれれば誰でも良いわけ? (あくまでも心の声)


万里:「望月さんゴメン、今日ちょっと用事があって、また今度ね。」



カイト:「ねえちゃん、巨大カメムシって知ってる? 俺、さっき教えてもろたんや。」


大学は怪しい噂の宝庫である。 霊界に通じる電話ボックスとか、呼び込まれる旧校舎のトイレとか。 こういった話は大抵、自習室から広まって行く。


カイトが聞いた巨大カメムシとは、こういう話だったらしい。


男子1:「聞いた? 巨大カメムシの噂。」

男子2:「何やねん、それ。」

男子1:「カブトムシくらいの大きさのカメムシ、屁の威力も恐ろしくて、ちょっかい出そうとしたどっかのネコが屁ぇ嗅がされて死んだって。」

男子2:「ほんまかいな。」

男子3:「ナイナイ。」

男子4:「いや、生物研の遺伝子組み換え実験のサンプルが逃げ出したって可能性は有りだな。」

男子2:「この前も裏門の 土手に首が1mくらい有る犬がおったって噂あったやん。」

男子3:「ナイナイ」



カイト:「巨大カメムシ探しに行ってもええ?」

万里:「駄目、危ないから…。」



時計を見る。 12時45分。


万里:「お昼食べよっか。」

カイト:「食べる食べる。」


寺西:「うちも食べる食べる。」

カイト:「真似せんといて。」


寺西とカイトと3人で学食に行く。


カイト:「俺、A定食、唐揚げ定食。」

万里:「ハイハイ。」


券売機でプラスチック製の食券を購入する。


万里:「これと、お盆を持って、あそこの列に並んでおいで。」

カイト:「分かった。」


何だか、食堂のおばさんに唐揚げ大サービスされている…




午後の授業…


寺西:「次は生命科学は講堂だから、連れてっちゃっても判らないよ。」


カイトも一緒に後ろの方に座って、周りを女子で取り囲む。


助教授:「今日はやけに出席率が高いな。 そこの女子、後ろに固まってないで、前の方空いてるぞ。」


女子:「先生、今のセクハラ発言ですか?」

助教授:「…」



後ろの席の女がストッキングのつま先でカイトのお尻を突っつく。


後ろの女:「いやん、 お尻触っちゃった!」


万里:汚い足で触らないでよね。 (あくまでも心の声)



授業終わり、


最近は日没も早い。 暗くなった大学前通りを二人で歩く。 いや何故か、寺西もいっしょだ


寺西:「ねえ、うどん食べてかない?」


カイト、万里の顔色をうかがう。


万里:「良いよ。」


カイト、満面の笑み


カイト:「食べる食べる!」



大学前通りを踏切迄下って、駅の改札までの路地にその店は有った。

手打ちうどんがうまい事で有名だが、何故だか折り紙でも有名だったりする。


店内には芸の細かい折り紙が沢山ぶら下がっていて。 TV番組が折り紙を取材に来たこともあるらしい。


万里:「おじさん、樽うどん3つ、一つは大盛りで、」

おじさん:「あいよ。」


寺西:「へぇ、テレビ出演の募集だって。 大食い選手権か…未だにこんなのあんだね。 アユアユ(芸能人の名前)くるんだ。 おじさん! この店でTVやるの?」


寺西、行儀悪く壁にもたれてあぐらをかいている。

何故だか壁に貼られたTV出演者募集の張り紙に食いつく。


おじさん:「いや、前に取材に来たTV局の人に誰か出る人いないかって頼まれただけ。」


寺西:「ふーん。」


寺西:「ねえ、カイト君って、誰か好きな女の子って居るの?」


万里、ドキ…


カイト:「分からん。 今はおらんけど、俺 記憶喪失やねん。 せやから、もしかしたら前はおったかも知れん…。」


万里:今は居ないんだ…


一寸、期待した自分が恥ずかしい。


寺西:「うっそお! 記憶喪失なん? 大変やん?」

カイト:「別に平気や。 ねえちゃんもおるし…」


万里:一応あてにしてくれてるんだ…



やがて手打ちうどんが樽に入ってやってくる

特製のつゆに漬けて食べると言うとてもシンプルなものなのだが、…本当においしい。


カイト:「ほんまや、もちもちしこしこやな。」

寺西:「しこしこなん?」


寺西、にやける


万里:「寺西!」



カイト:「てらにしって、オモロいな。」

寺西:「いやーん、紀子って呼んで。」


寺西、にやける


万里:「寺西!」



お会計を済ませ、店の前で寺西と別れる。


寺西:「じゃあ、私 英研のコンパ行くから此処でお別れ。 カイト君、又会おうね。」

カイト:「うん、またな。」

寺西:「お別れのキスってしてくれへんの?」


カイト:「しゃあないな…」

万里:「しゃあなくない!」


カイトの耳の上を両側から中指の第二関節でゴリゴリする…




うどん屋から駅迄は20m足らずの距離…


誰かが駅前で もめている。  警官が誰かに職務質問している?



思わず、…足が止まる。 三度、自分の目を疑う。


万里:まさか…



其処に居たのは2人組の…トレンチコート。 背の高いのと、低いの。

お揃いのテンガロンハットを被っている。


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