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エピソード10 陵辱の通過儀礼

Episode10

濱平 万里:主人公

山猫:謎のカルト集団のリーダー


真っ暗…

小さな覗き窓の僅かな隙間から差し込む光が、どうやら此処は金属製のコンテナの中で有る事を教えてくれる。


問題はこのコンテナが一体何処に有るかと言う事だった。


自分は気を失っている間に何処迄連れてこられたのだろう。 まさか大阪を出て、他の県? あるいは他の国? 未だに頭がぼーっとしていて自分の置かれている状況の深刻さが飲み込めていない。 と言う事だけは理解できた。



いきなり扉が開いたかと思うとドカドカ男が入り込んできた。 白い防疫服とガスマスクに全身を包んでいる。 一体日本人なのかすら分からない。 外からは強烈なライトで照らされていて、外の様子が何も見えない。


男達は万里の両手の自由を奪うと無理やり服を脱がせ始めた。


万里:「いや! 何するの。 やめて。 …いやあ!」


どんなに抵抗しても、力ずくの男にはかないっこない。 暴れる手足を無理矢理 押さえつけられて、上着も、スカートも全部脱がされる。 ブラも、パンツも、全部。


万里:「お願い、酷い事しないで…。」


恐怖で心臓がバクバク言っている。 恥ずかしいとかはとっくに通り越していた。



次に男達は万里の口を無理矢理にこじ開けると、注射器で苦い液体を口の中に注ぎ込む 。 思わず吐く。 


万里:「びや…」


もう一度注射器を口に突っ込まれて、のどの奥の方に液体を噴射。


万里:「ゔえ…」


その後万里をコンテナの奥に転がすと、男達はあっという間にコンテナから出て行った。 再びコンテナの中に放置。



暫くするとこみ上げてくる嘔吐、おなかも痛い。 コンテナの隅にタライがおいて有る。 仕方なくそこに吐く。 食べたばかりのうどんか出てくる。 大便も我慢できない。 少しだけモジモジ我慢するが、とてもそう言うレベルではない。 どうしようもなく同じたらいで用を足す。 


後始末に拭く紙も無い。 自分の出した物なのに、嫌な匂い。 出来るだけタライから離れて全裸のまま冷たいコンテナの床に横になる。 とても立っていられない。 全身が震えている。  涙が止まらない。 


何分かおきに吐き気の波がくる。 また吐く。 水の様な下痢便も。 気力も、水分も、全て出しつくす。 


脱水状態のまま、尚放置。


あれからどれ位経っているのだろう。 もう何も出ない。 10回以上は吐いた。胃液すら出つくした。 時おり腹筋 だけが痙攣している。



このまま死ぬの?

こんな殺しかたって有るんだ。 喉が渇いた…。



と思ってたら再び扉が開いた。 再び白い防疫服に全身身を包んだ男達が入ってくる。 床に転がった万里を無理矢理引き起こし、再び両手の自由を奪う。 スプレーで洗剤の様なものを全身に吹きかけられて… その後ホースで大量の水をぶっ掛けられる。



男達は検査台の様なモノをコンテナに持ち込んできた。 その上に寝かされる。 裸のまま無理矢理両手両脚を押さえつけられ …身体の隅々まで調べられる。 目、鼻、口、耳、爪の間から、髪の毛、脇、陰毛、肛門、性器まで、


もう抵抗する気力も声も出ない。 なされるがまま涙だけが流れ続けている。



続いて検査台から引き起こされると、コンテナの入り口まで引き摺られる。 コンテナの外には小さな水槽? その中に落される。


万里:「あ!」


水槽の中は熱湯で満たされている。 熱い! しかも何か刺激臭のする薬が混ざっている。 かなり深く足がつかない。 必死に顔を水面に出そうとするが、男達は 私を閉じ込めたまま水槽に蓋をする。 更に水槽に流れ込んで来る水。 見る見る水位が上がる。 顔が、口が。 水面の僅かな空間が完全に水で満たされて、息が出来なくなる。 当然いつまでも息は続かない。 肺の中の気泡を全部吐き出して…溺れる。





気がつくと小さな硬いベッドに寝かされていた。 相変わらず全裸のままだった。 しかも、いつの間にか首には首輪と鉄のクサリが付けられている。 自分では外せないらしい。 鍵が付いている。 身体が恐怖で震える。 狂いそう。


まだ涙は出るんだ。嗚咽が止まらない。



やがて人が入って来た。手術服に身を包んだ男達。 やはり顔も見えない。 本当に医者?なのだろうか。


ベッドに寝転んだ状態で両手足を上に持ち上げられるとベッドの四隅の支柱に拘束された。 なんて霰もない格好だろう。


何故か、腕の付け根と脚の付け根にきつくバンドを巻いている。


万里:「何をするの」


再び恐怖が胸の奥を浸食する。 でも声も掠れかすれで力なく、恐らく男達には届いていない。


次に茶色のねっとりした液体が、バンドの直ぐ上の腕と太ももの部分に帯状に塗られる。


やがて何の脈絡も無く、男の一人が小型のスクリーンを万里の目の前に持って来る。 いきなり映し出される映像。 喋りだす男?女?の声。


TVの声:「余り時間がないので1分で決めて欲しい。」


スクリーンには、二種類の映像が繰り返し映し出されていた。


暗い不潔そうな部屋の中で、両手足を斬り落とされて、首に鎖をつながれたままで暮らす男女。 もう一方は明るい南国のビーチで美味しそうなジュースを飲みながら楽しそうに笑っている男女。


TVの声:「A、私の友達になって私を助けてくれるか、」

TVの声:「B、私の捕虜となって私に飼われ続けるか、」

TVの声:「さあ、どっちが良いですか。 …残り30秒。」


なんなのこれ?


万里:「どっちも嫌よ…、こんな事する奴の友達になれる訳ないじゃない。」


手術服の男が腕の茶色く液体を塗った部分にメスを当てる。 そうして、おもむろに滑らせる。 直ぐに流れ出す血。 不思議な事に痛みが感じない…それが余計に混乱させる。


万里:切られてる? 私、腕切られてるの??


TVの声:「今度「嫌」と言ったら、自動的にBを選択したとみなします。 残り10秒。」


万里:「そんなもんAに決まってんじゃない!」


メスの動きが…止まる。 切り口からはどんどん血液が零れだして来る。


TVの声:「良かった。 これで晴れて貴方は私達の仲間です。 今後も何か有るたびに同じ事を質問します。 よく覚えて おいてください。」



再び何かガスを嗅がされて気を失う。






気がつくと綺麗なベッドの上だった。 まだ揺れている。


いや揺れているのだ。

ゆっくりと、穏やかに、けれど力強く。 部屋全体が1/fの揺らぎでユレテいる。


今度は、裸にネグリジェを着せられていた。 少しは人間らしい扱いに戻ったと言う事なのだろうか。 右腕の付け根には包帯が巻かれてあった。


窓から夕陽が差し込んでいた。

どうやら船の上に居るらしい。 それも大きな客船とかではなく、クルーザーの様なもの? 内装はとても高級そうだ。 


部屋の隅にテーブルが置かれてあるのが見えた。 その上にペットボトルの水とグラス。



ベッドから降りる。 いや転げ落ちる。 身体に力が入らない。 這いずって行ってようやくテーブルにたどり着く。 コップに移し替えるのもまどろっこしく、ボトルに口をつけて…飲む。 冷たい水が乾ききった内臓を潤して行く。 止まらない…息をつく間もなくのどの奥に流し込み続ける。 こんなに水が美味しいと思ったのは初めてかも知れない。 口の端からどんどんこぼれているが、今更そんな些細な事はどうでも良かった。



自分の身に一体何が起きているのか分からなかった。 まだ身体は震えている。 「何時でも自由に出来るのだ」と、あの声は脅迫していた。 従うしかない。



何の気力も起きなかった。 床に倒れたまま涙が流れるままにする。



やがて部屋のドアが開いて、誰かが入って来た。


きちんと正装したウエィター? 執事?

やはり、小型のモニターを抱えている。 あのTVの声が始まる。



TVの声:「お召し物を用意しました 。着替えてダイニングルーム迄来てください。」



執事の様な男がベッドの上にドレスを並べる。 着替えをするからと言っても出て行ってくれる気配はまるでない。 でも「嫌」だと言ったら、先程と同じ目に合わされるに違いない。 震えながらネグリジェを脱ぎ、下着をみにつけ、ドレスの袖に手を通す。



男に連れられてダイニングに行く。

広いテーブルに皮のソファ。 テーブルの上には豪華な食事が並んでいた。


何故か人形が座っている。


TVの声:「失礼、どうしても手を離せない用事があって、そちらに伺う事ができなかった。」


TVの声:「始めまして、私の事はヤマネコと呼んでくれたまえ。 そして改めてお目出度う。 我々の組織へようこそ、濱平万里さん。」


執事がシェリー酒をグラスに注ぐ。


TVの声:「お腹が空いただろう。 先ずは胃に優しいスープから召し上がってくれたまえ。」


今更毒か入っているかなんて気にしたって仕方がない。 言われるまま服従してスープに口を付ける。美味しい。あっという間に皿を平らげる。 身体に温かい液体が沁み渡っていく。


山猫:「手荒な真似をして済まなかった。 これも全て危険を避ける為に仕方なかったのだ。 我々は濱平さんを歓迎しているよ。」


ようやく意識がはっきりしてくる。 頭がフラフラするのは船が波に揺れるから? しかしこのTVの男の言っている事も理解不能だった。 もとより理解する気すら起こらない。


山猫:「私達は常に危険と隣り合わせにいる。 常に狙われているのだ。」


山猫:「非力だからこそ上手に隠れ、上手に戦わなくてはならない。 こう言うものからね。」


船室の壁に埋め込まれた巨大スクリーンが点いて、映像が映し出される。 

万里のカバンとその中に入れてあった発信機 。



山猫:「私達の目的は人類を危機から救う事だ。 君は知っているか?私達の世界は次の春を迎える事なく滅亡すると言う事を。」


万里: カルト?


山猫:「我々が戦おうとしている敵は尋常な相手ではない。 いやはっきり言おう…人間では無い。  一切の常識が通用しない存在、下賤な言い方をすれば、魑魅魍魎。 妖怪変化の類だ。」


万里:漫画? アニメ? 何を言ってるの??


山猫:「君も見ただろう。この女を。」


源香澄がスクリーンに映し出される。


山猫:「そしてこの女が使う怪しい術を。」


そう、私は確かに見た。 源が怪しい力で数字男を切り刻むのを…


山猫:「この女は人類を滅ぼそうとする人外の軍団の先兵に過ぎない。 しかしそれですら我々人間の力は彼女の前には無力だ。 ただ、なす術も無く傷つけられ、奪われるしか無い。」



山猫:「奴らに対抗する為の力を作り出す のが私の仕事なのだ。」


スクリーンに数字男が映し出される。 額に銀のプレート、左腕の仕込み武器。 超人的な跳躍力。 破壊力がデモンストレートされている。


山猫:「これが我々の切札「エインヘリャル」だ。 強化骨格と強力な武器を内蔵し。 特殊な再生能力を持つ。 唯一奴らと互角に戦える人間。」


万里:私達を襲い、カイトを傷つけた奴ら…


山猫:「同志である濱平さんには、エインヘリャルの製造に協力してもらいたいのだ。 勿論喜んで協力してくれると分かっているが。」


万里:嫌だと言える訳が無い…


山猫:「君が栄光ある我々組織の一員として選ばれた最大の理由は、君には、エインヘリャルになる資格を持つ人間を見つけ出す能力があるからなのだ。」


万里:力なんてない、もしもそう言ったら…



山猫:「実はエインヘリャルには誰でもが成れるわけではない。 特別な霊的な資格が必要なのだ。 その資格を見分ける事はさらに限られた人間にしか出来ない。 それが君、私達には貴方の助けが必要なのだ。」


万里:絶対服従だ、それ以外あの恐怖から逃れる術は無いのだ。


横隔膜が震える。



山猫:「詳しい事は後ほど説明しよう。 今日は濱平さんを歓迎するパーティだ、手に入る限り最高のモノを用意した。 ゆっくり楽しんでくれたまえ。」




いつの間にか辺りは夜になっていた。

執事らしき男の気配もしない。 どうやら自分は船の中一人置き去りにされたらしい。


万里:怖いよ、私どうなっちゃうの?

万里:カイト、会いたいよ。 慰めて欲しいよ。


ソファに埋もれて体育座りしている。


昔からいつもこうしてたっけ。

怖い夢見た時も、

お母さんと喧嘩した時も、

お父さんが出て行った時も、


何がいけなかったんだろう。


万里:私悪くないよね


どうしてこんな目に遭わなければならないんだろう。


万里:人類とか、世界とか、私には重すぎるよ。

万里:私は普通の女子大生だよ。

万里:妖怪だとか、何かよく分からないものを見つけ出す力とか、そんなの分かんないよ。


窓の外を見る。 船は港を離れて沖に停泊しているようだった。 遠くに見えるのはUSJだろうか。



いつの間にかうとうとして、どうやら夢を見ていたらしい。

いつもと同じ、とらわれの少女の夢。


長い睫に大きな瞳、傷一つ無い整った小顔は透き通るように白く、ウェーブした艶やかな髪は腰まで届く豊かな長髪。 まるで造り物の様な一点の欠陥も無い妖しい美貌。


万里:今は私が囚われているのにね。




これ迄の事は全て夢だったのだろうか。長い悪夢を見ていたのならどんなに良いだろう 。


自然と涙が溢れ出す、止まらない。

いつもの様に夢の中の少女が微笑む。


少女:「無事で良かったのだ。」


万里:「…のだ?」



少女の姿を凝視する。

初めて喋った? 声が聞こえた? 一寸変だけど可愛らしい女の子の声。 でも…



万里:「貴方は、一体誰なの?」


少女:「僕は白虎。 名前はシロなのだ。」



夢の少女は確かにそう言った。

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