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3・決行日 (3ー1)

 作戦決行日が4日後と伝えられた次の日、朝食を取り終えた私達の前に先生がやって来て、本日の夕方には学校を出てロスク市郊外の扇動指導部と呼ばれるアジトに向かう事と、本作戦の攻撃に至るまでの日程などが伝えられた。具体的な攻撃方法や攻撃場所に付いては、やはり此処に到っても教えてもらえる事は無く、ロスク市に着いてからの全体ミーティングで語られるとの事だった。先生の話を聞き終えた私達は二ヶ月ほど滞在した訓練場とベットルームの片付けを始める事となった。

 片付けはハンナも手伝ってくれたため午前中にはたいがいの事は終了し、あとはロスク市で生活する4日分の荷造りを残すのみとなった。荷物は着替えだけで身元につながる物はパスポートから指輪まで先生が預かるとの事だった。私も父に関する書類を先生に渡し、換わりに偽造されたパスポートと免許証が入った財布が渡された。荷造りが終わった私達は訓練場でお茶を飲みながら出発の時が来るのを待っていた。

 「車の準備が出来ました…」私達を迎えに来たのはあのハルコムだった。どうやら車は彼が運転するらしい、私達は彼に連れられる様にして訓練場を後にし、車が停車してある学校の駐車場へとむかった…久しぶりに外に出てみると外の景色はすっかり寒々としていて、空気のもつ匂いが冬の到来を教えてくれていた。

 ロスク市までは白いバンで移動する。運転席にハルコム、助手席に先生、後部座席に私達が乗り込む様であった。「荷物は全て積みましたね…それでは出発したいと思います…」先生の声が響き、私が此処に来て最も世話になった人物との別れの時が来た…その人は私達一人一人に言葉をかけ、やさしく抱きしめ別れを惜しんでいた。私が車に乗り込む時、目を真っ赤にしたハンナが「アナタにはつらい出来事の連続だったわね…私はアナタを救う事は出来ないけれど、きっと神様ならアナタを救って下さるわ…アナタに会えて良かった…あなたの事が大好きよエミル…」大粒の涙を流しながらハンナは私を力強く抱きしめていた。

 私もなんだか嬉しくなって止めどなく涙があふれた。「私もハンナの事が大好き…いままで本当にありがとう。」そう言って私は車へと乗り込みドアを閉めると、駐車場に一人残されたハンナが急に小さくなった様に感じられた。「それでは出発します…よろしいですか?」先生の問い掛けに誰も答える事のないまま、車はゆっくりと走り始め、ハンナの姿が見る見ると小さくなって行った。ハンナは私達を明るく送り出したかったのだろう…泣きじゃくった顔に無理やり笑顔を浮かばせ最後の最後まで手を振り続けていた。私はハンナの姿を見続けるのがやっとで、手を振りかえす事も出来なかったが、ニコラは車の窓を開け大きく身を乗り出しながら手を振っていた。

 私は別れの時が過ぎてもしばらく泣き止む事が出来ずに、やさしく肩を抱き寄せてくれていたアレイナの胸の中で、いつの間にか泣き寝入りをしてしまっていた。私が目を覚ましたのは日もすっかり暮れてしまった頃で、車の中では皆の会話が弾んでいた。会話の中心はニコラで、ハルコムやアレイナを相手に冗談を言い合っていた。知らない人が見たら私達は、まるでピクニックにでも出掛けている様に見えるだろう、それぐらい楽しげで、明るい時間が流れていた。

 ロスク市までの道程は、車でまる一日掛かる。ロスク市内に入るまでは、とくに休憩は取らないとの事だったので、夕食も学校から持参したパンと野菜の煮物を食べた。夕食を食べた後は車内の会話も徐々に少なくなり、ニコラは私に、私はアレイナに寄りかかる様にして浅い眠りに就いた。

 強い朝の日差しで目を覚ますと、車は停車していて、ハルコムが助手席で眠りに就いていた。私達は既にロスク市内に入っているようで、車は国道沿いのドライブインに停車していた。しばらくするとドライブインから先生が何かを抱えて出て来た。先生は私達の朝食を買って来てくれた様だった。先生が言うには、今日は作戦の説明や、準備があるので忙しくなるため、今のうちに朝食を食べておいて欲しいとの事だった。

 私達は走る車の中で朝食を食べながら、町の様子を見ていた。目に飛び込んでくる景色は今まで見た事の無い物ばかりだった。高い建物に美しい広告看板、多くの車に何車線も連なる道。私は都市が持つ巨大な力にすっかり包み込まれてしまっていた。

 ロスク市内を二時間ほど走った後、先生が扇動指令部と呼んでいたアパートへとたどり着いた。扇動指令部は6階建てのアパートの4階に在り、入り組んだ廊下の一番奥にある部屋であった。先生がその部屋のドアをノックすると、女性の声で“はい?”と言う返事が返ってきた。

 「ラヒムです、到着しました。」と先生が言うと,ドアが開き感じの良い若い女性が、私達を部屋へと招きいれてくれた。女性はドアを閉めると、まずアレイナの手を取り、何か言葉を交わした後につよくアレイナを抱きしめていた。アレイナは母親がする様にその女性の髪をなで、一言二言女性の耳元でささやいている様だった。女性は続けて私とニコラとも握手を交わし、自分は斥候のアンだと自己紹介をした。

 アンの案内で、この部屋のリビングへと通された。リビングには3人の男性が居て、一人はアンと同じ斥候のストイカ、残る二人は爆弾技師のセルゲイとイワノフとの事だった。私達は3人と順番に握手を交わし、この扇動指令部に無事たどり着いたことを神に感謝し、全員で祈りを捧げた。

 そのあと私達はキッチンへと移動し、お茶を飲みながら雑談をしていたが、小一時間も経たないうちにアンが、作戦の具体的な説明を始めたいのだと切り出し、私達は再び移動して、アパートの一番広い部屋へと入った。部屋には先生とセルゲイがいて、何かを話していた。ほどなくして部屋に全員が集まると、先生が本作戦の説明を始めた。

 「この作戦は、ロシスキ連邦共和国憲法発布10周年記念行事の一環として行われるロックフェスコンサートを攻撃し、連邦政府が行っているベズロア市民に対するホロコーストへの報復を完遂する事が任務であり、ベズロア民族と神の意思を世界に知らしめると言う大変重要な目的を有する作戦である…」

 「攻撃場所は三ヵ所…ロックフェス会場のスタジアムで一ヵ所…スタジアム中央東側ゲートで一ヵ所…スタジアム中央西側ゲートで一ヵ所となる…」

 「スタジアム内の攻撃はアレイナに行ってもらう。アンと共に会場スタッフとして潜入し、開演10分前に会場のほぼ中央で仕掛け爆弾を爆発させる…会場内の爆発を切っ掛けに、スタジアム内は大混乱となり出口には観客が殺到する事となる、この観客達を標的として東側ゲートをニコラに、西側ゲートをエミルに攻撃してもらう…」

 「以上が本作戦の概要である。また会場への移動方法や爆弾などの詳しい説明は各グループに分かれて行う事とします。アレイナはアンとセルゲイと一緒に…ニコラとエミルは私とイワノフとストイカが説明をします。」

 そう言うと、アレイナ達はキッチンへと移動し、私とニコラはそのまま先生達の説明を聞く事になった。

 ミーティングで始めに行われたのは、爆弾の仕組みと使用方法であった。私達が使用する爆弾は高性能プラスチック爆弾で、連邦軍でも内務省軍の特殊班でしか使用しない特別な代物だという。ストイカはこのプラスチック爆弾を使う事に意義があるのだと話していた。私には、その理由は想像も出来ないが、ストイカの表情を見るかぎり、何らかの策略があるのだと言う事が容易に想像できた。

 「そしてこれが、実際に君達に装着してもらうベルト型の装備一式になります。」

 ストイカがそう言って、イワノフがテーブルの上に広げたのは、ベルトと言うよりはガードルの様な物であった。ガードルには埋め込まれたプラスチック爆弾と起爆装置、そして小型の無線機らしき物が付いており、起爆装置からは1mほどのコードがのびていて、先端には起爆スイッチが付いていた。私とニコラは爆弾につながれていない別の起爆スイッチで、起爆の方法を何度か練習させてもらった。

 この起爆スイッチは、大き目の洗濯バサミの様な形をしている。一度握る事で電源が入り、ロックが掛かる、それを放す事でロックが解除され、もう一度握る事で起爆するという仕組みになっていた。爆弾の電源が正常に入ったかは、この扇動指令部でしか確認出来ないため、私達は起爆スイッチを握り締めたまま会場まで向かわなくてはならない。万が一手を開いてしまわないように当日は、手をスカーフで縛り付けると言う案が先生から出された。

 イワノフの爆弾の説明が続くなか、不意にニコラが小型の無線機らしき物を指差し、これは何なのか?と尋ねた。ストイカとイワノフは一瞬顔を見合わせ、何とか話をごまかそうと難しい言葉を並べ立てていたが、先生が二人のごまかしを遮るようにして、「それは遠隔操作の為の起爆装置です。」と教えてくれた。この無線機の使われ方としては、もし万が一私達が起爆の直前に、何者かに起爆を阻止された時や、起爆装置に不具合が起きた時、そして私達自身が自爆をためらった時などに使用される装置であるとの事だった。

 つまりこの小さな無線機は、私達が確実に自爆する為の保険なのである。ストイカやイワノフがごまかそうとした事は無線機の事なのではなく、この作戦の本質であった。遠隔操作の技術があるならば、わざわざ女や子供に爆弾を巻き付けて人々の中へと突撃させる必要はない。爆弾を仕掛け遠隔操作で、起爆させれば良いのである。それではなぜ自爆でなければならないのか?それは私達が神の意思に目覚めた殉教者であり、ベズロア紛争が、ロシスキ南部から中東を越え北アフリカに到るまでの、大宗教戦争の一端でなくてはならないからだった。

 本来、何よりも守るべき女子供の生命を、惜しげもなく浪費する大シアリム国家とは一体どんな国家なのであろうか?その様な国家に未来はあるのか?そもそもその様な国家に未来はあっていいのか?…私の頭の中は疑問だらけの様だが、でも本当はそうではない…疑問の答えは既に出ている。私を含め、この国の多くの人々がその答えを知っている…私達と普通の人々の違いは、嘘の答えを信じぬかねばならない事にある…たったそれだけの事が、我々とロシスキ市民を隔てる何かであり、殺したり殺されたりする大きな理由の一つなのである…

 「それでは、次に中央西側ゲートでの作戦行動を説明します。」「エミル、よろしいですか?」

 私は先生の声で慌てて我に返った。私の様子を気にかけながら、先生は丁寧に私に当日の説明をしてくれた。

 このアパートで爆弾を装着した私とニコラは、立会人の先生とストイカ、運転手のイワノフと共に、スタジアムの逆方向の地下鉄駅へと向かう、地下鉄に乗るのは私と、私の立会人である先生だけで、ニコラとストイカとイワノフはそのまま車でスタジアムへと向かう。私は先生と一緒にスタジアムの最寄駅である国立スタジアム駅まで行き、スタジアム中央西側ゲートの目の前にある広場で、作戦決行の時刻を待つ事になる。最初の攻撃は、会場内のアレイナでである。だいたい開演の10分ほど前に作戦が開始され、最初の攻撃によって、非難してきた観客の雑踏の中で、私が爆弾を爆発させるとの事だった。

 アレイナの攻撃から、観客がゲートへと避難するまでは、5分から10分ではないかと予測されていた。状況によっては、ゲートに人が殺到するため、作戦行動が執れなくなる事態に陥ると警告され、対応としては、アレイナの爆発後すぐにゲート付近に移動するのが望ましいと注意を受けた。

 またこの他にも警察や警備員に質問された時の対処の仕方や、自分がなりすます人物のプロフィール、そしてスタジアムでの作戦が決行出来なくなった時の行動をいくつかのパターン別にレクチャーされた。

 私とニコラのミーティングは2時間ほどかかり、この後は、全員が集まっての行動演習が行われる。休憩を手短にとった私とニコラは、決行日当日に身に着ける服装や、起爆装置の付いていない爆弾を装着する事になった。そして当日は、爆弾を装着した後は、トイレに行くことが出来ないためオムツを付ける事になっていた。先生からは「一度試しておいた方が良いでしょう。」と言われ、私が恥ずかしそうにしているとニコラが透かさず私をからかい始めた。私は顔が赤くなっているのを感じながら、しばらく無言の抵抗をしていたが、結局オムツをふくめ、全ての装備を装着する事になった。私は身に着けた爆弾よりも、紙オムツのガサガサとした肌触りが、気になって仕方なかった…

 全員の準備も整い、決行日の行動演習が始まった。この演習の中で分かったのだが、アレイナは実際の会場係員としての仕事をする為に、明日にはアンと一緒にアパートを出るのだと言う。つまりアレイナとは明日で最後と言う事になる。

 アレイナは私達の中では唯一、殉教者としての資格のある偉大な人物であり、全てを包み込む優しさを持った二児の母親でもあった。だから一足先に先に別れが来ることが分かった時には、寂しさと引き離される不安を同時に感じ“何時までもこのままで居られたら”と言う妄想を抱くようになってしまった。当のアレイナは寂しさなど微塵も見せずに「私は会場で、仕掛け爆弾を使うからオムツはしなくて良いのよ。ホントに助かったわ。」と一人明るく笑っていた。彼女の明るさは、顔に曇りを見せた私達への気遣いだったのかもしれない、豪快にして木目細かい思いやりが出来る人物。彼女はそう言う女性だった。

 リアリティーと言う感覚が、すっぽりと抜け落ちた、まるで出来の悪い演劇のような行動演習もつつがなく終わり、窓の外はすっかりと日が暮れていた。私とニコラはかなり疲れていて、疲労のいろを隠せないほどになっていた。次の予定は、この作戦の声明ビデオの撮影である。撮影の準備が始まるまでの間、私とニコラはソファーに深く腰を下ろしていた。

「つかれているわね…」私達に声をかけに来たのはアレイナだった。「ビデオ撮影が、今日最後の予定になるわ…もうちょっとだから頑張ってね…あとこれを渡すのは迷ったのだけれども…」そう言うとニコラには写真が入るペンダントを、私には小さく折られた写真の様な物を手渡してくれた。「…ニコラそれだけは返しておくわ、それなら身に付けていても問題無いだろうと、ラヒムも言っていたから…」ニコラの方を覗き込むと、ペンダントの中には、赤ん坊の写真が貼り付けてあった。ニコラは今まで見たことも無いような、いとおしい眼差しで、その写真を見つめていた。

 「エミルその写真はね、お父様が最後まで身に着けていた写真よ…あなたのお父様を埋葬した人物から預かったわ…開いて、見てご覧なさい。」折曲がった写真を開いてみると、そこには幼少の頃の私と思われる子供が写っていた…初めて見る写真であった。

「あなたの小さい頃の写真ね、目元が今と変わらないわ…あなたの事を愛していたのね、親なら子を愛するのはあたり前だけど、誰でも愛せるって訳ではないわ…あなたには愛してくれた親がいたって事を忘れないでね…」

 私が目頭を熱くしてうなずくと、隣りではニコラがシクシクと泣いていた。「ちょっとしめっぽくなっちゃったわね。さあ!次は一世一代のビデオ撮影よ、二人とも元気出して衣装に着替えましょう!」アレイナは元気良くそう言って、私達を着替えのある奥の部屋へと案内した。

 ビデオ撮影時の衣装は、中東系の民族衣装と、ゲリラが着用する戦闘服が組み合わさった様な、いかにもといった感じの風体であった。衣装に着替え終わった私達は、先ほど行動演習が行われた部屋へと通された。部屋では急ピッチで撮影の準備が行われており、部屋の窓を大きな布で覆い隠したり、カメラや照明のセッティングをしたりと、皆とても急がしそうに動き回っていた。数分ほどその光景に見とれていたが、不意に軍服を着た先生が近づいて来て、私達に拳銃を手渡し「小道具です。銃は本物ですが弾は入っていません。安心してください。」と言った。初めて手にした銃はズシリと重く、先生の口調は何処と無く緊張しており、初めて先生に出会った頃の雰囲気に似ていた。

 「こんなものでしょうか?」セルゲイが先生に確認すると、先生はビデオカメラの小さなモニターを見て「そうですね、良いと思います。それでは始めましょう!」と全員に声を掛けた。私とニコラとアレイナは、一列に並び、腕を組みながら銃を持つポーズをとった。そして先生の演説中は、身動きをせずに前を見据えたままでいるようにと指示を受けた。カメラの映り具合を気にしながら、私達の一歩手前に先生が立つと、セルゲイが合図を出して声明ビデオの撮影が始まった。

 先生は抑揚の付いた南部ベロキ語を話し、時には身振り手振りを使って力強く語り、その姿には鬼気迫るものを感じた。私はベロキ語…とくに南部訛りのベロキ語は苦手だったため、先生の話した内容の半分も理解できなかったが、先生が話した内容が、先生の考えでない事は明らかであった。

 “神、聖戦、殉教者、神の花嫁…”こんな格好には打って付けの単語が並んでいた。先生の演説が終わると一端ビデオは止められ、4人全員で掛け声を上げるラストシーンのリハーサルが始まった。「神の御名において、神罰を下す!神は偉大なり!神は偉大なり!神は偉大なり!」練習は2、3回程したが上手く掛け声を合わせることが出来ず、力強く掲げられるべき拳銃も私とニコラにそれは、あまりにも弱々しかった。練習をいつまでも続けていても仕方がないので、見切り発車的に撮影は再開したが、やはり望むような映像を取ることは出来ず、6回目の撮影でようやくアンやセルゲイのOKがでた。先生もやや疲れた様子で「お疲れ様でした。」と私達に声を掛けてくれた。

 拳銃を返し、着替えを済ませた私達は、先生達が部屋の片付けをしてる間に、夕食をとる様に言われキッチンへとむかった。キッチンではハルコムが食事をテーブルに運んでおり、テーブルの上にはパンとスープと3人分の羊のソテー、そして白ブドウが並べられていた。「明日は朝から、皆さんの鎮魂の儀式を執り行なう予定になっていますので、食事をとり終えたら早めに休んでくださいとの事でした。」ハルコムはそう言うと、先生達のいる部屋へとむかって行った。

 私達は、お祈りを済ませ、夕食をとり始めた。食事中はアレイナが話しかけて来る言葉に耳を傾けるくらいで、実に静かな食事となった。食事を済ませた後も私達は、ただ黙々と食器を片付け、寝床を作り、眠りにつく準備をした。この夜が私達3人で寝る最後の夜である。もっと感慨深くなる物かと思ったが、私を含めて皆すんなりと眠りの中におちて行った…隣の部屋からは、ビデオの編集をしているのか、先生の声と聴き慣れない音楽が、断片的に聞こえて来ていた。私達以外は皆忙しそうである、みんなの気配が、徐々に遠退いて行くのを憶えている。この日の最後の記憶であった…


(3・決行日 終話 へとつづく)

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