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店長はイケメンです。

「本日からここで働くことになりました! 高梨タカナシ 玲也レイヤです」

 俺はここの制服だというなんだか趣味の悪いエプロンを着て、頭を下げた。

 だってほんと、オシャレなカフェにはどう見ても不釣合いな赤と黄色のエプロンだよ? 

 でもまあ年中金欠の俺にとって大事な大事な初バイトなんだ。

「じゃあ高梨くん、今日からよろしく。僕はここの店長をやってる西園寺サイオンジ 秋人アキヒトだ」

 そういってにっこり微笑む店長もおそろいの無駄に派手なエプロンだ。なんといってもこの人こそがあの悪趣味なエプロンを作った張本人なんだから。

 それにしても店長……やっぱりイケメンだ! 

 男の俺でも思わず見とれちゃうくらいにきれいな顔してるんだよ。仮にモデルだって言っても納得できちゃうくらい。栗色のふさふさの髪とか、ブラウンの瞳とか、すらっと高い鼻とかさ~もう本当に人形みたいに整った顔してるんだ。

「なに? 僕の顔なんかついてる?」

 くすっと笑うだけですげーもん。この店に女の子の客が多いのも納得できるな。

「あ、それとも僕に見とれちゃった??」

 こういうとこさえなければいいのに。さっき少し話しただけだけどさ、この人きっと「黙っていればモテるのに」って言われるタイプだよ。

「ちがいますよ」

「照れなくてもいいのに……」

 いや、まじで。てか俺、男だから!!

 女の子口説くようなノリで話されても、逆に反応に困るって。

「あ、ここの店小さいからさ、従業員は僕とキミだけだからね」

「え、じゃあこのケーキとか全部店長が?」

 ずらりと並べられたケーキはどれもすごく美味しそう……とういか、作るのが大変そう。

「ああ、これくらい朝飯前だよ」

「すっげー!!」

 素直にそう思った。だってこんなにたくさんのケーキを毎日ひとりで作ってるんだろ? 俺、あんまり甘いものって好きじゃないんだけどさ、ここのケーキは食べたいって思うもん。

「玲也くんもおひとつどうぞ? これなんかおすすめ」

 そういって店長が出したのはショートケーキ、かな。

「食べちゃっていいんですか?」

「もちろん、めしあがれ♪」

 フォークを手にするけどさ、俺ちゃんとしたケーキの食べ方とか知らないや。ちょっと困ってると、店長が肩を小刻みにふるわせて笑いだした。

「食べやすいように食べなよ。なんならフォークなんか使わないで手でもいいし」

 店長はにかっと笑うけど、さすがにそんなマナーの悪いことはできない。だから、ケーキのさきをちょこんとフォークで刺して口に運ぶ。

「おいしい…うまいよ、これ! 俺、こんなにうまいケーキ初めて食べた!」

 ケーキ独特の甘ったるさがなくて、さっぱりしてるんだけどほんのり甘い。やわらかい生クリームにふかふかのスポンジ。どれをとってもめちゃくちゃうまかった!

「ありがとう、気に入ってもらえて嬉しいよ」

 店長がやんわりと微笑んだときだった。俺は大事なことを思い出した……俺、金もってねぇよ!

「てんちょぉおおおおおおお!!」

 俺は店長に泣きついた。

「うぉっ! どうした?」

「俺、今日金もってません!! このケーキ代……」

 もうまじで泣きそう。フォークを名残惜しく咥えながら店長を見上げる。

 店長の心の声:(ちょ、おいそんな顔で上目遣いとかすんなって///)

「あー、いい! バイト祝い(?)だ!」

 なんで手で顔おおってんだ? なんか顔赤い気もする……てか、初日から店のもんただ食いって。おこがましすぎだろっ!

「いや、でも俺……」

「あーっと、じゃあこうしよう」

 店長は俺の頬にキスをした。

 ………………って、え? ええ? ええええええ?

「て、ててんちょ??」

 店長の心の声:(そんなほっぺちゅーくらいで真っ赤になっちゃって、かわいすぎんだろ)

「俺のファーストほっぺちゅー……」

 俺、今ほっぺにキスされたよなっ! 俺、これが初めてのほっぺちゅーなんだぞっ! てか店長……なんで?????

「はい、これでチャラな」

「え?」

「ケーキ代♪」

 あ、そういうことな。ほっぺちゅーがケーキ代のかわりってことだろ? よくわかんないけど、まいっか。

「あっと、ごちそうさまでした?」

 なんとなく頭を下げると、頭上からまさかの大爆笑!?

「あははははっ! 玲也くん、キミのこと気に入った!」

「ふぇっ!」

 俺はどさくさにまぎれて店長に抱きしめられる。だから、なんで?? 俺、男だし!



「僕と付き合わない?」



 はいいいい?

 

 父さん、母さん、俺生まれて初めて告白されました。

 いい年(っていってもまだ20代だけど)の男に……



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