表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/59

奇妙な女子会

午後。舞花のアパート。

テーブルに5人が座っていた。

舞花、朱音、凛、狭霧、阿部亜里沙。

全員の前に飲み物があった。

舞花がコーヒーを一口飲んだ。

「……で、なんでこのメンツになったのよ」

「女子で集まって情報交換しようよって話で」と阿部。

「誰が決めた」

「なんとなく」

「なんとなくで狐を呼ぶな」

「我は誘われたゆえ来たまでのこと」と狭霧。

「暇だっただけ」と凛。

「釣られてきた時点で負けだよ舞花先輩」と朱音。

「うるさい」

阿部だけが炭酸を飲んでいた。

「みんなテンション低くない? もっとキャッキャしようよ」

「"キャッキャ"という言葉が出た時点でキャッキャできる空気じゃない」と朱音。

「なんで」

「この5人を見ろ。キャッキャできる組み合わせじゃない」

阿部が5人を見た。

舞花——腕組みしてスマホを見ている。

朱音——メモ帳を開いている。

凛——窓の外を見ている。

狭霧——尾をゆっくり揺らしながら緑茶を飲んでいる。

「……確かに」と阿部。

「わかったなら炭酸を飲め」と舞花。


「最近の男どもの話でもする?」と舞花。

「うるさい」と凛(即答)。

「安藤の話をしてないのに」

「うるさい」

「早い」と朱音。「灰島構文の発動が早すぎる」

「うるさい」

「三回目」

凛が窓の外を向いたまま言った。

「……生きてたら聞いといて」

「誰が誰の生死を確認するんだ」と舞花。

「安藤の」

「安藤は生きてるよ。昨日フーガ磨いてた」と朱音。

「……そう」

凛が少し間を置いた。

「……フーガは、かっこいい」

「それは安藤の話じゃなくて車の話だろ」と舞花。

「……車の話」

「お前も走り屋サークルに染まったな」

「……染まってない」

「染まってる」

朱音がメモ帳に書いた。

「凛:安藤の安否確認を朱音に依頼した。フーガはかっこいいと発言した——記録しておく」

「記録するな」と凛。

「記録する」

「……きえろ」

「記録する」


「準殿は毎夜我が尾をモフらんとするゆえ、睡眠が不安定にてな」と狭霧。

「それもう通報案件じゃん」と朱音。

「通報されても仕方あるまい。我とて困っておる」

「困ってるのに追い払わないんですか」と阿部。

狭霧が少し間を置いた。

「……困ってはおるが——まあ」

「まあ?」

「……悪くはない。うるさいが、嫌ではない」

全員が止まった。

「……それ好きってことじゃないですか」と阿部。

「違う」

「どう聞いても好きですよ」

「違うと言っておる」

「絶対好きだ」と朱音。

「記録するな」と狭霧。

「記録する」

「……きえろ」と凛(狭霧の代わりに)。

「凛が助け舟を出した——これも記録しておく」

「きえろ」

「記録する」


「じゃあ舞花先輩は?彼氏とかいないの?」と阿部。

「金が恋人」と舞花。

「金が悲鳴上げて逃げる発言だよそれ」と朱音。

「金は逃げない。人間が逃げるだけだ」

「哲学始まった」

「実学だ。雅紀に聞いてみろ、あいつは年間どれだけ修理代かかってるか」

「RX-8の維持費ですか」

「修理代だけで年間40万超えてる。愛と金のどちらが確かかという話だ」

「金だと思ってる人の発言だ」と朱音。

「金が一番確かだ」

「先輩、かわいそう」と阿部。

「かわいそうじゃない。合理的だ」

朱音がメモ帳に書いた。

「舞花:金が恋人。雅紀の修理代年間40万を把握している——なぜ知っているのか要確認」

「なんで雅紀の修理代知ってるんですか」と朱音(口頭でも確認)。

舞花が少し間を置いた。

「……聞かれたくないことを聞くな」

「記録する」

「するな」

「した」


「じゃあ"理想の彼氏"トークしよ」と阿部。

「いない」と凛。

「詩的に言えば——惹かれし者の面影は、霧の如く追えど逃げる」と狭霧。

「詩的に言ってるけど中身は"めんどくさい"だよね」と朱音。

「違う」

「"霧の如く追えど逃げる"って、要するに準が追ってきてうっとうしいってことでしょ」

「……そうは言っておらん」

「でもそういう意味でしょ」

狭霧が緑茶を一口飲んだ。

「……朱音、汝は鋭すぎて時に困る」

「記録者だから」

「……そういうところが——まあ、嫌ではないが」

「狭霧先輩まで"嫌ではない"を使った——記録しておく」

「するな」

「した」

舞花がスマホを置いた。

「そろそろ本題に入るか」

「本題?」と阿部。

「男どもの更生会議だ。お前が言い出したんだろ」

阿部が嬉しそうな顔をした。

「そうそう、それそれ」


制裁会議、開幕。

「議題その一」と舞花。「エンジン音。毎朝早朝から始動させる件」

「うるさい」と凛(実害あり)。

「封印術にて沈黙させることも可能ぞ」と狭霧。

「物理的解決は最後の手段だ」と朱音。

「議題その二。峠での無許可走行」

「法的に問題がある」と朱音。

「でも楽しそう」と阿部。

「お前は加害者側だろ」と舞花。

「私は被害者ですよ? 煽られて困ってます」

「お前が煽ったんじゃないか」

「えっ、どこで聞いたんですか」

「朱音が記録してた」

「朱音さん記録するの早すぎますよ」

「記録者だから」

「議題その三」と朱音。「準の和歌が壁に張り出されてサークル室が文学結社化している件」

「あれは芸術だろ」と舞花。

「走り屋サークルの壁が和歌で埋まるのは正常ではない」

「正常なことは何もない」

全員が少し間を置いた。

「……その通りだな」と朱音。

「議題その四」と阿部。「朔夜くんを軽音サークルに引き込んでいい?」

「ダメだ」と舞花。

「なんで」

「お前のサークルに入れたら何を吹き込まれるかわからない」

「私のこと信用してないんですか」

「してない」

「なんでですか」

「メスガキだから」

「それは偏見ですよ」

「実績に基づいた判断だ」

阿部が少し考えた。

「……じゃあ朔夜くんをうちのバンドのマスコットにするのもダメですか」

「ダメだ」

「えー」

狭霧が言った。

「朔夜は我の古い知り合いぞ。我の許可なく連れ回すな」

「狭霧先輩も反対ですか」

「反対だ」

「全員に反対された」と阿部。

「諦めろ」と舞花。


「……で、結論は?」と凛。

「男どもの更生は不可能」と舞花。

「だから?」

「監視を続ける。それだけだ」

「封印術を使わないのか」と狭霧。

「最後の手段だと言った」

「我はいつでも使えるぞ」

「だから最後の手段だ」

朱音がメモ帳を閉じた。

「……今日の女子会、記録した。要約:男どもの更生は不可能、監視継続、朔夜の軽音移籍は却下、凛は安藤が生きてるか気にしている、狭霧は準のことを嫌ではないと言った」

「最後の二つは消せ」と凛と狭霧(同時)。

「消さない」

「きえろ」

「消さない」

「消せと言っておる」

「記録は消えない。それが記録というものだ」

全員が黙った。

阿部が炭酸を飲んだ。

「……なんか楽しかったな、今日」

全員が少し間を置いた。

「……まあ」と舞花。

「……嫌ではなかった」と狭霧。

「……うるさい」と凛。

「……記録した」と朱音。

「キャッキャできたじゃないですか」と阿部。

「できてない」と全員。


翌日。大学。

「なんか昨日の夜、急に耳鳴りがしたんだけど」と準。

「女子会の日だろ。察しろ」と加賀。

「昨日マイ夢の中で狭霧ちゃんが呪文唱えてたヨ」とマイケル。

「それ現実になってるぞ」と雅紀。

準が青ざめた。

「……封印術の予行演習だったのか」

「走り続けてれば封印されない。止まるから封印される」と加賀。

「哲学なのか走り屋論なのかわからない」

「同じだ」

朱音がメモ帳に書いた。

「女子会:制裁会議として機能した。結論は監視継続。狭霧の封印術は温存。凛の安堵構文、狭霧の"嫌ではない"構文——どちらも記録済み。この5人、またやれると思う——記録しておく」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ