埼玉のエセ走り屋、キャラ多すぎ問題。〜制作スタッフも把握してません〜
E塔裏。昼。
全員が集まっていた。
なぜか全員が。
S・H・B、治安維持部隊、軽音サークル、鉄研、二輪会、呉、大宮先生、チャイワット、狭霧、朔夜、安藤、凛。
「……なんでこんな人数になってるんだ」と加賀。
「作者がキャラ増やしすぎたんだよ」と朱音。
舞花がため息をついた。
「というわけで、みなさん混乱してるでし。うん、わかる。私ももう半分わかんない」
画面下にテロップが流れた。
『この回は物語が進みません。ご了承ください。』
「進めろよ」と加賀。
「無理だ。まず人数を整理する」と舞花。
「S・H・Bから行くぞ。自己紹介、やらかし歴込みで」
加賀が前に出た。
「S・H・B会長、加賀練斗。工学部機械工学科三年。セリカZZT231乗り。唯一の常識人。たぶん」
「"たぶん"が気になる」と葵人。
「峠で雪壁に突っ込んだことがある。以上」
「それ常識人じゃない」と準。
「お前が言うな」
マイケルが前に出た。
「マイケル・タナーや!アメリカ出身、理学部、レガシィGT-B乗り。やらかし歴——神社の石碑を壊して狐を出した。TEMUのパーツで車を爆発させた。関越道をウーバーで走った。以上や!」
「"以上や"じゃないだろ」と雅紀。
葵人が前に出た。
「整備担当、細田葵人。フィットGD3乗り。たぶん一番苦労してる。やらかし歴——アップガレージで適合外のパーツを買った。以上」
「一番まともだな」と舞花。
「ありがとうございます」
細田が前に出た。
「アニメと車が人生です。フィットGD3乗り——」
「葵人と被ってるぞ」と加賀。
「車種が同じなだけで人生は違います。らき☆すた巡礼で狭霧と縄張り論争をしました。プロジェクターを燃やしました。以上」
「燃やしたのか」と呉(初耳)。
「弁償しました」
雅紀が前に出た。
「一ノ宮雅紀。RX-8 SE3P乗り。ロータリーエンジン信者。やらかし歴——マフラーが折れた回数、今年だけで三回。峠でスピンしかけた。2chにドーナツターンをやったと書かれた。やってないとは言い切れない。以上」
「最後が正直すぎる」と葵人。
準が前に出た。
「鈴木準。文学部三年。ノートNISMO乗り。ケモナー。やらかし歴——狐の眷属になろうとして136回LINEを送った。猫又を拾った。屋上で"朔夜は俺の眷属だ"と叫んだ。和歌を始めた。以上」
舞花が額に手を当てた。
「最後のやつだけ人として終わってる」
「でも和歌は本物だろ」と加賀。
「それはそう」と朱音。
準が胸を張った。
朱音がメモ帳に書いた。
「準:やらかし歴を自己紹介で堂々と述べた。反省の色なし」
「次、治安維持組」
舞花が前に出た。
「一ノ宮舞花。雅紀の姉。治安維持部隊隊長。前科リストを32ページ作った。金が好きです」
「前科リスト作ったのを自己紹介で言うな」と雅紀。
「事実だから言う」
朱音が前に出た。
「篠原朱音。社会学部一年。メモ帳が武器。作者から"ちょいサイコ"と書かれてる。やらかし歴——#S_H_B問題というタグを自分で作った。前科リスト32ページを配布した。以上」
「お前が一番やらかしてるんじゃないか」と準。
「記録者は記録する。それだけだ」
凛が前に出た。
「……灰島凛」
「やらかし歴は?」と朱音。
「……きえろ」
「それで済ますな」
「……安藤を包丁で追い回した。壁に刃物を刺した。キャンパスのベンチに血文字を書いた。以上」
全員が黙った。
「……改めて聞くと重いな」と葵人。
安藤が前に出た。
「安藤凪斗。商学科三年。ナルシスト。フーガY50乗り。峠に夜中にスーツで来た。光るホイールキャップを買って凛に"ださ"と言われた。屋上で恋愛禁止令に反対する演説をした。以上」
「成長してるな」と加賀。
「成長してると思いたい」
凛が小声で言った。
「……フーガは、かっこいい」
安藤が静止した。
「今のは記録するぞ」と朱音。
「学外勢」
呉が前に出た。
「呉福造。呉自動車のオーナー。ダブルブリッジのメガネ。こいつらの整備を一手に引き受けてる」
「やらかし歴は?」と舞花。
「ワシはやらかしてない。やらかされる側だ」
「正論」と全員。
大宮先生が前に出た。
「文学部準教授、大宮涼真。コルトラリーアート乗り。常識が迷子です。補講をイベント扱いします。エコウィークに乱入します。以上」
「先生、授業してください」と全員。
チャイワットが前に出た。
「ワタシ、チャイワット。ヤマハ乗り。セブンイレブンと呉自動車で働いてます。エビオイルはないです。以上」
「エビオイルを自己紹介で言うな」と呉。
「軽音、鉄研、二輪会——まとめてやる」
榎本麻衣「ボーカル。声量で物理攻撃できます」
天野奈々「田舎出身。トラクターも弾けます」
阿部亜里沙「メスガキです。でもS・H・Bのこと、ちょっと好きかもしれません」
上村澪「光属性厨二です。朔夜くんは同志だと思っています」
「同志じゃないにゃ」と朔夜(隅から)。
高坂「鉄研の会長。文明は線路にある。ただし蒸気機関車はロマンで動いているので別枠です」
佐野「撮り鉄担当」
三輪「乗り鉄担当。高坂先輩の矛盾に気づいてます」
近藤「二輪会リーダー。四輪は甘え。ただし加賀は認める」
「認めてたのか」と加賀。
「あくまで走り屋としてだ」
小林「ZZ-Rがまた壊れました」
松本「INAZUMA400で飯能から来ました」
佐藤「まとも担当。疲れました」
「最後、異界勢」
狭霧が前に出た。
「我は霧ヶ崎の守護狐。封印を解かれてここにいる。やらかし歴——Wi-Fiルーターを破壊した。大学中のネット回線を落とした。峠で霧を出して全員の視界をゼロにした。以上」
「やらかしてるじゃないか」と加賀。
「……否定はせぬ」
朔夜が前に出た。
将校マント。軍帽。猫耳。肩のライフル。
「……僕、朔夜にゃ。猫又にゃ」
「年齢は?」と朱音。
「……わからないにゃ。200ぐらいにゃ?」
「200」と全員。
「……ぼくの口調、わざとにゃ」
全員が止まった。
「わざと?」と準。
「……わかりやすい方が、便利にゃ」
静寂。
「……お前、やっぱりサイコパスだな」と加賀。
「……そうにゃ」
朱音がメモ帳に書いた。
「朔夜:幼げ口調はわざとと自白した。200年以上生きた妖怪が、人間に対して意図的に幼く見せている。目的は不明。便利と言っていた——要観察」
「締め」と舞花。
「……なぁ」と加賀。「これ、もう群像劇とかじゃ済まないよな」
「どこまでが埼玉の話なんだ」と葵人。
「そもそも舞台、埼玉やっけ」とマイケル。
「設定上は埼玉だ」と舞花。「でも妖狐と猫又と異世界と炎上と包丁と神社と関越が全部出てきた」
「"ケモノラブコメ走り屋学園伝奇コメディ"ってなんだよ」
「全部入りカレーや」とマイケル。
画面下にテロップが流れた。
本日の登場キャラ数:38名
作者の脳内:過負荷
加賀:ようやく喋れた
朔夜:わざとでした
夕方。
全員が解散した後、E塔裏の駐車場に加賀一人が残っていた。
セリカのエンジンをかけた。
ヴォォォン。
2ZZ-GEが、夕暮れの空気の中で静かに唸った。
加賀がステアリングを握った。
「……走り屋の話だったんだけどな」
誰も聞いていなかった。
でも——セリカが答えるように、アイドリングが少し上がった。
「……まあ、いいか」
加賀がシフトを入れた。
セリカが、夕暮れの駐車場を出て行った。
朱音がその後ろ姿を見ながら、メモ帳に書いた。
「加賀練斗:本来の主人公。今日もちゃんと走りに行った。これが正常——記録しておく」
エンディング後。
「次回からは俺が主役でいいよね?」と準。
「だまれ」と加賀(無線)。
「治安維持部隊、次回も稼働」と朱音。
「……きえろ」と凛。
「……便利な人間が多くて助かるにゃ」と朔夜。
「お前の"便利"は褒め言葉じゃないだろ」と葵人。
「……褒め言葉にゃ」
「どっちだ」




