表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/80

騒音、誤解、そしてエンジンブロー。〜濡れ衣を晴らせ!S・H・B大捜査線〜

朝の大学駐車場。

S・H・Bの面々がダベっていた。

加賀が昨日撮った走行動画を編集して、準に見せていた。

「サムネ、"埼玉最速の男たち"でOK?」

「フラグ立てんなや……」と雅紀。

「(カー雑誌を読みながら)VTEC is love……」と細田。

「オレ今日こそ呉さんにアライメント見てもらうヨ!!」とマイケル。

そのとき。


「昨夜、E塔付近で爆音走行の苦情が入りました。関係者は学生課まで——」

全員が止まった。

「……おい、またかよ」と雅紀。

「いや」加賀が言った。「昨日、俺ら走ってねぇぞ」

「冤罪きた」と準。

「ノーノー!オレ昨日峠行ってないヨ!エアロ割れてたから!」とマイケル。

「お前が言うと余計怪しい!!」


「……で、また苦情きたわけ?」

舞花がコーヒーを飲みながら言った。

「前科が多すぎて庇いきれねぇ」と朱音。

「今回はマジで違うんだって!!」

「"今回は"ね。毎回言ってるよね」

「俺は昨日、狭霧と和歌詠んでただけだし!」と準。

「……事実」と狭霧。隅の席で静かに座っていた。

「どうでもいい」と凛。

安藤が紅茶をすすりながら言った。

「まぁ——車は下品だからな」

加賀の目が細くなった。

「てめぇ、フーガのマフラー純正に戻せ」

「下品な車のことは知らん」

「お前が乗ってる車の話をしてんだよ!!!」

阿部が軽音のテーブルから首を伸ばした。

「え、うるさかったのS・H・Bじゃなかったの? てっきりまた爆走してんのかとw」

「信じてねぇなお前ら!!!」


「……なるほど。夜中にE塔裏で爆音、と」

呉がメガネを光らせた。

「俺らじゃないっす」と加賀。

「お前らが言うと説得力ゼロなんだがな」

「今回は本当に!!」

呉が腕を組んだ。

「学内で他にエンジン好きな奴らは?」

「……いる」と細田。「バイクサークル。マフラー音で地球揺らすやつら」

「二輪組!アイツら音量に羞恥心ゼロヨ!!」とマイケル。

「決まりだな」と呉。

後ろから大宮先生が顔を出した。

「面白そうな話してるじゃないか。私も混ぜろ」

「先生、授業してください」

「授業より現実の方が文学的だ!!」

「「「してください!!!」」」


バイク置き場。

複数の排気音が、低く響いていた。

ZZ-R400、CB400SF、INAZUMA400——それぞれ違う音色で、駐車場の空気を揺らしていた。

加賀が踏み込んだ。

「お前らが昨夜E塔裏で走ったか?」

近藤がこちらを向いた。

「"四輪の走り屋ごっこ"どもがまた疑ってんのか?」

「疑ってるんじゃない。確認してる」

「マジでウケんだけど。お前らサイレンサー知らねぇの?」と松本。

「テメェらの方が爆音じゃねぇか!!」

「ウチのZZ-Rは純正だぞ!(※うるさい)」と小林。

「……てか、あんたら毎回"走行会"って名の爆音大会してんじゃん」と佐藤。

「やめろ正論やめろ!!」

空気が最悪になった。

準が小声で加賀に言った。

「狐呼ぼうぜ。妖力で真実暴かせよう」

「やめろ。現代科学に負けるぞ」

「科学より霊力の方が信頼できる気がしてきた……」

「それはお前がおかしくなってるだけだ」


夜。呉自動車。

呉が接続したモニターに、大学の監視カメラ映像が映っていた。

全員で画面を覗いた。

「……あったぞ」

夜中のE塔裏。

暗い中、ヘッドライトが映った。

バイクだった。

「バイクだ!!」

「ナンバー……」呉が目を細めた。「飯能ナンバー」

「ってことは、松本か!!」

全員がバイク置き場に向かった。

松本に映像を見せた。

松本の顔が青くなった。

「……違う。俺じゃない」

「言い訳すんな——」

「親父の店のデモ車が盗まれたんだ!!」

沈黙。

「……盗まれた?」と加賀。

「1週間前から行方不明で——なんで俺が疑われてんだよ!!」

マイケルが叫んだ。

「ナニィィィ!!真犯人は別にいるヨ!!」

「……話できすぎてたもんな、最初から」と加賀。

朱音が乱入してきた。

「証拠は?」

「ナンバー偽装、排気管改造——」と呉。

「手口からして、プロだな。転売目的か、もしくは誰かに頼まれた」

舞花が腕を組んだ。

「また厄介なの湧いたな」


翌日の夜。

「大学前の国道に、飯能ナンバーのバイクが出た」

呉からLINEが来た。

加賀が部室を飛び出した。

「行くぞ!!」

5台が、ほぼ同時にエンジンをかけた。

ヴォォォン——

セリカの2ZZ-GEが咆哮した。

キュィィィン——

RX-8のロータリーが、独特の高音を刻んだ。

ドロロロロ——

レガシィのEJ20ターボが、低く地面を震わせた。

ヴィィン——

ノートNISMOのHR16DEが、軽く鋭く続く。

パパパン——

フィットのL13Bが、最後に出た。

5台のヘッドライトが、夜の国道を照らした。

加賀がシフトを入れた。

(やっとだ。)

(走れる。)

国道254号。

前方にテールランプが見えた。

バイク——INAZUMA400のシルエット。

ナンバーが偽装されていた。

「見えた!!」と雅紀(無線)。

「追うぞ」と加賀。

セリカが加速した。

路面の情報がステアリングを通じて手に伝わってくる。

夜の路面は少し湿っていた。

昼間の雨の名残で、アスファルトが光を反射している。

グリップは悪くない——でも慎重に行く。

3速、4速、5速。

速度計の針が上がっていく。

街灯が流れていく。

「バイクサークルも出てきたぞ!!」と朱音(無線)。

後ろから、複数のバイクのライトが追いついてきた。

近藤のCB400SFが、セリカの右に並んだ。

「テメェらが犯人じゃねぇなら俺たちも行くぞ!!」

「来るな!!四輪の邪魔だ!!」

「邪魔はどっちだ!!バイクの方が速ぇ!!」

「国道でそれ言うな!!!」

混走が始まった。

四輪5台、二輪3台——8台の排気音が夜の国道に混ざり合った。

前方の盗難バイクが、加速した。

車線変更。右、左、また右。

「逃げてる!!」

「こっちも行く!!」

セリカがラインを変えた。

加賀の目が、前方のテールランプだけを捉えた。

その瞬間。

霧が出た。

薄い白い霧が——前方の視界を、じわりと埋めていった。

「……何だ!?霧!?」

「狭霧!!!」と準(無線)。

「……風、走れ」

後部座席——いつの間にか乗っていた狭霧が、低く言った。

「え、いつ乗った!!!」

「霊体に壁は関係ない」

「そんな説明で済む話じゃない!!!」

霧の中に、盗難バイクのテールランプだけが赤く浮かんだ。

加賀には、それが見えた。

狭霧の霊力が、加賀の視野だけを通していた。

(見える。)

(前が——見える。)

「行くぞ!!」

セリカが霧の中を突き進んだ。


橋の上。

盗難バイクが、急ブレーキをかけた。

後輪がスライドした。

バイクが横を向いた。

壁に接触して、停止した。

セリカが止まった。

RX-8、ノート、フィット、レガシィが続いた。

バイク組も止まった。

犯人が降りた——20代くらいの男。

その場に、警察のサイレンが近づいてきた。

呉が通報していた。

「バイク盗難犯、確保!」

警官が走ってきた。

松本が車から降りた。

「……親父のバイク、無事でよかった」

加賀は息をついた。

「これで、俺らの濡れ衣も晴れたな」

朱音が横から言った。

「……ま、今回は信じてやるよ」

「次やったら地獄見せるけどな」と舞花。

狭霧が橋の欄干を見ながら言った。

「……埼玉、恐るべし」


翌朝。部室。

「オレたち、やっと潔白!ナイスチームプレイネ!!」とマイケル。

「まぁ……バイク組とも悪くないかもな」と加賀。

そこへ。

近藤が部室の前を通りかかった。

「おい走り屋」

「なんだ」

「昨夜の追走——お前のセリカ、あの霧の中でよく見えたな。どういうトリックだ?」

「霊力だ」

「は?」

「霊力。狐の」

近藤が一瞬止まった。それからため息をついた。

「……やっぱりお前らおかしい。四輪のくせに狐飼ってんのか」

「飼ってない」と準。「大切な——」

「準、黙れ」と加賀。

「四輪は四輪らしく車だけ乗ってろよ。霊力借りて走るとか、走り屋の風上にも置けねぇ」

加賀の目が細くなった。

「バイクに偉そうに言われる筋合いはない」

「何?」

「昨夜の追走——お前らが横に来たとき、ライン乱れてたぞ。あれで速ぇとか言うな」

「乱れてねぇし!!」

「乱れてた」

「お前が見え方おかしいだけだろ!! 霊力で視界補正してたくせに!!」

「それはそれだ」

「それはそれって何だよ!!!」

二人が正面から睨み合った。

5秒。

どちらも引かなかった。

近藤が鼻で笑って、歩き出した。

「……次の走行会、二輪は呼ぶな」

「最初から呼んでない」

近藤が行った。

部室の中に静寂が戻った。

「……仲良くなれないんだろうな、やっぱり」と雅紀。

「仲良くなる必要ない」と加賀。

「え、でも昨夜一緒に——」

「一緒に走っただけだ。仲間じゃない」

加賀がセリカのキーを見た。

「俺たちは俺たちで走る。それだけだ」

狭霧が窓際で静かに言った。

「……汝ら、もはや神話の域に足を踏み入れておる」

朱音が棒付き飴を口から外した。

「神話っていうか——カオスの権化だろ」

メモ帳に書いた。

「S・H・Bと二輪会:共闘後もキレ合い継続。これが正常。加賀、近藤への敵意——温存中」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ