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84.33  作者: ゴリラ
2026 三月
60/68

三月十九日 木曜日


春爛漫 やればできると ぴょんと跳ね

はるらんまん やればできると ぴょんとはね


洗濯用の洗剤がありませんでした。

いつもと違うことが起こると、つまずきが増えます。

「つぅー、痛いなぁー」

壁の曲がり角に、足の小指を引っ掛けました。

さっき、ぶつけたのとは、違う方の足です。

トライアングルがジーンと鳴っているように疼きます。

跪き、手の平で足先をしっかりと包みました。

痛みの振動がようやく治ります。


「どうしようか」

部屋の真ん中に座り、迷ってばかりいます。

「よし、大の字になって、全てを放り出そう」

うつろな目つきで場所を探しますが、ちょっと動くと肘が荷物に当たりました。


ここ数日、同じ部屋着です。

綿埃が所々にワッペンのようにくっついています。

脱いだら、体の形がそのまま残ります。

洗面所で手を洗い、鏡に映る自分の顔を見て、笑いました。

朝、梳かしたはずの髪は、どこかの山奥の珍獣のようです。

作業は、「段ボール箱を開く、中身を出す、棚にしまう」という繰り返しでした。

空の段ボールが壁に寄りかかり、かろうじて息をしています。

引っ越しでは、荷解きと片付けが一番大変だと知りました。


お昼に、洗剤を買いに出掛けました。

道路の交差点で立ち止まります。

歩行者は私一人です。

たくさんの車が過ぎて行き、先を急いでいます。

私は看板を探して、首を伸ばしました。

「あー」

赤と黄色のマークが、遠くに見えています。

「あっちだな」

迷わず、左へ進みました。

目の前の横断歩道を賢そうな顔をして渡ります。

そして、しばらくしてから、理由なく、小路を右へ入りました。

住宅地が続き、自分の足音しか聞こえません。

「逆方向かもしれない」と、首を傾げ始めました。

その時、白い壁の喫茶店が右側に現れました。

通りに面した広い窓があります。

その奥では、オレンジ色の裸電球の明かりが天井から真っ直ぐに降りて、各テーブルを照らしていました。

「カッコいい音楽が流れているんだろうな」と横目で眺めます。

次第に早足になりました。

家では、段ボール箱たちが正座して、私の帰りを待っています。

箱の上には、「一階、台所・割れ物有り」とマジックの黒文字があります。

床には、剥がしたガムテープや緩衝材がゴミ袋からはみ出して散らばっていたはずです。


前方に、開けた空間がありました。

軽自動車が一台、入って行きます。

きっと、あれが、ドラッグストアの駐車場です。

ホッとして、肩から力が抜けました。

気持ちが軽くなりました。


「春は、良いな」

花芽の気が緩む、過ごしやすい温度です。

見上げれば、雲が一つもありません。

空の色は、誰かが着ている、水色のブラウスのようでした。


私は、足元の車止めに、ぴょんと跳び乗ります。

「ミッション、クリアー」


方向音痴のワタシ。

ニンマリと笑います。


英語

Spring in its Bloom

I believe myself

Hop and jump away


中国語

春色满园里

只要做就能

轻轻跳起来


スペイン語

primavera total

si que se puede!

dando un saltito


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