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三月十日 火曜日
薄氷の 菱箱きらり 覗き見る
うすらひの ひしばこきらり のぞきみる
今朝は、マイナス一度の散歩でした。
首を少し伸ばして、ジャンパーのチャックを顎元まで引き上げました。
曇り空が足の運びを速くします。
「春はまだなのかい」
吐く息に混じる声が、揺れました。
葬儀屋の駐車場が、遠くに見えます。
そこに忍び込む自転車がありました。
サドルから腰を浮かせ、姿勢を低くして漕いでいます。
「近道をしよう」と、にやけています。
自転車が通った所を過ぎて、私は角を曲がりました。
柵に囲まれた敷地は広く、汚れた雪が日陰に残っています。
薄氷が道路沿いの地面を覆っていました。
芽吹いた雑草が、波状の氷の中で根元を抑えられ、青くなっていました。
所々に、菱形の氷紋が入り組んでいます。
それは、寄木細工の箱のようでした。
もう直ぐ、溶ける菱箱です。
きっと、昨夜の秘密の一瞬を閉じ込めています。
英語
thin ice on the ground
a marquetry box with a sparkle
I peer inside
中国語
地结薄冰
像寄木细工
闪着光,窥视
スペイン語
hielo fino en el suelo
como marquetería
un brillo,y miro dentro




