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三月五日 木曜日
鼻歌の シャボン玉吹き ペダルこぐ
はなうたの しゃぼんだまふき ぺだるこぐ
午前中の早い時間、近所のスーパーへ歩いて行きました。
ラップを買い忘れていたのです。
お財布を片手に「らっぷ、ラップ」と口ずさみました。
陽が注ぎ、柔らかな風が髪を吹き抜けました。
足が地面を軽く蹴り上げます。
狭い歩道で、年配の女性とすれ違いました。
黒い毛糸の帽子を被り、小豆色のジャケットを着て、自転車に乗っていました。
肌は白く、冷たい目をしていました。
私は道路の端に寄って進みます。
自転車が通りすぎる時、私の耳にうわずった音が入ってきました。
それは、昭和の演歌のような鼻歌でした。
私は、ニンマリしました。
ビブラートのブルースがシャボン玉のように消えていきます。
「人って、いいな」と思う瞬間でした。




