三月三日 火曜日
冴返り 宙ぶらりんの フウの実や
さえかえり ちゅうぶらりんの ふうのみや
朝から、小雨が降っています。
建物の屋根も、道路も濡れて光っています。
見上げれば、空は灰色です。
肌寒い一日が始まりました。
横断歩道で待つ人が、傘をささずに首をすくめていました。
自転車が猛スピードで走り去ります。
棘のある実が街路樹に、ぶら下がっています。
冬を越し、幹と枝だけになったので、その実が露わになりました。
それが、癇癪玉のようにも、笑い玉のようにも見えます。
中学の時、バス停の通りに、雑貨店がありました。
その日、バスの待ち時間が寒くて、暖を取る為に、立ち寄ることにしました。
冷たくて動かなくなった指をガラスの引き戸にかけて、じりじりと音を立てて開けました。
髭面の小太りの店主が、溢れる品物の間に居ました。
私と目が合うと、「つまらねーな」というように顔を反らしました。
私は鼻水を啜りながら、体を斜めにして狭い通路を歩いていきます。
壁にも天井にも、売り物が隙間なく陳列されていました。
カッコ良さそうなプラスチックの看板や、ゾンビのマスク、外国の国旗、へんてこな灰皿、置物、派手なジャケットなど、私は絶対買わないようなものばかりでした。
探し物を装い、店内をゆっくりと移動します。
黄色の小さな袋が程よい所に掛けられていたので、手に取りました。
そして、うっかり握り締め、ボタンを押してしまったのです。
心底笑う声が突然割れるように響き、私は「おおっ」と叫び、その袋を落としそうになりました。
これが、私と「笑い袋」の出会いでした。
今も、その屈託のない馬鹿らしさには、にやけてしまいます。
憂鬱な天気でしたが、私には、フウの実が笑い玉のように見えました。
「どうでもいいんだ」と、全てが軽く楽しげです。
英語
The cold returns
Dangling hanging loosely in the sky
Sweetgum seed pods thinking
中国語
春寒起
摇曳在风中
枫香果




