表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

第2話

意識ははっきりしているのに、体がまったく言うことをきかない。


視界はぼやけていて、焦点が合わない。

けれど、私は確かに“生まれ直した”のだと、直感でわかっていた。


耳元では誰かが優しく私の名前を呼ぶ。

「ユナ、お嬢さま。おきていらっしゃるのですか?」


母の声だ。おそらく。

けれどどこか“よそよそしさ”を感じるその響きに、私は不思議と距離を感じた。



私は「ハン・ユナ」として生まれた。

それは2025年の世界には存在しなかった名前。

未来のどのゴシップにも出てこなかった、架空の少女。


だけど今――この小さな手、この柔らかな声、この名を呼ぶ温もりが確かに存在している。


私は、確かにここに生きている。



生後数週間。目はようやく少し見えるようになってきた。

天井には高価なシャンデリア。揃えられた小さなドレス。

育児スタッフも何人もいて、財閥の娘として特別扱いされているのがよくわかる。


贅沢。それなのに、息苦しさもある。


“箱入り娘”――そんな言葉が頭をよぎるたび、未来の知識が脳裏に浮かぶ。



眠りの中で、夢を見る。


ソルの笑顔。

舞台の上で輝く彼。

でもその笑顔の裏で、誰にも見せなかった孤独。

ネットの罵声。擦り切れた心。泣きそうな背中。


――また、見殺しにはしない。



身体が自由に動く日が来たら、私はまず“ある行動”に出ようと思っていた。


ソルに近づく方法を探ること。

そして、彼がどんな環境に置かれていたのか、その真実を知ること。


赤ちゃんの今はまだ何もできない。

でも、私の中には未来がある。

この時代の誰も知らない“終わり”を、私は知っている。


それはきっと、最大の武器になる。



ユナとしての人生は始まったばかり。


けれどその胸にはすでに、誰よりも強い決意があった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ