表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

第16話

スヒョンから正式な「業務提携」の申し出が届いたのは、ショーケースからわずか三日後だった。

テソングループのエンタメ部門と、私の立ち上げた〈SOLARE〉を包括的に結び、巨額の資本を注ぎ込む――条件には「両家の婚約を視野に」と、はっきり一行添えられていた。


執務室に広げられた契約草案を眺めながら、私は深い呼吸を繰り返す。

資金、人脈、宣伝力。どれを取っても魅力的だ。

ソルが海外へ飛び立つ足場としては、願ってもない後ろ盾。


だが、交換条件は“私自身”の未来。

ソルを守りたいはずの手が、思わぬ檻を組み上げてしまう危険がある。



1 父の意向


「ビジネスとしては悪くない話だ」


父・ハン会長は書類に目を通しながら静かに言った。

「だが――お前はどうしたい?」


私は顔を上げる。

財閥の後継者としてではなく、一人の娘として父が私を見つめていた。


「ソルを守る力は欲しい。でも、その代わりに自分を売り渡す気はありません」


一瞬、父の口角がわずかに上がった気がした。

「ならば、交渉しろ。ハンファの名を背負う者として、望む未来の形を自分で決めてみせろ」


それが父からの挑戦状だった。



2 ソルの本心


同じ夜、私はソルを呼び出した。

倉庫を改装した練習スタジオ。壁の向こうで新人たちが基礎練習のリズムを刻んでいる。


「テソングループとの提携の話、聞いたよ」

ソルの表情は硬い。

「もしそれで、ユナが窮屈な思いをするなら……俺は要らない」


「そんな簡単に言わないで」


私は歩み寄り、彼の両手を握った。

「あなたが世界へ羽ばたくチャンスを、私は逃したくない。でも、私自身も――あなたの隣に立つ未来を諦めたくないの」


ソルの瞳が揺れる。

「欲張りだよな、俺たち」


「うん。でも、その欲張りを叶えるために生きてるんだよ」



3 レイラからの警告


深夜、デスクで契約書と睨み合っていると、スマートフォンが震えた。

――レイラからのメッセージ。


《スヒョンは“鍵”になる。ただし開くのは扉だけ、檻じゃない》


続けて別の文章が届く。


《契約の裏には、彼の個人的な思惑がある。君は読み切れる?》


私は眉をひそめる。

“個人的な思惑”――恋愛感情以上の何か。

テソンの内部事情まで探らなければ、正しい手札は切れない。



4 決断


翌朝。

私はスヒョンに返信を送った。


〈面談の機会を設けましょう。条件は対等な立場で〉


即座に既読がつき、


〈楽しみにしている。君の駆け引き、見せてもらおう〉

という返事が返ってきた。


胸の奥で鼓動が早まる。

ソルの未来を守るため、私はビジネスと感情が入り混じるテーブルに座る。


だがどんなカードを切ろうとも、

私が賭けるのは、ソルと私の“自由”だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ