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プロローグ

なんとなく書いてみました。

拙い文章ですがよろしくお願いします。


「ひかり、アイドルになる!」


私、津屋崎ひかりは昔から、アイドルになりたかった。


アイドル。


素敵な笑顔と歌声で、沢山の人びとに夢を届ける存在。


テレビ越しに観る彼女たちの姿はいつだって輝いていて、その歌声はどんな時も私に勇気をくれた。


だから、アイドルに憧れた。


私もあのきらめくステージに立って、誰かを元気にしたい。


誰かの背を押してあげられる人になりたい。


「アイドル?そうね、ひかりちゃんはかわいいし、お歌も上手だから、なれるかもしれないわね」


「ははっ、もしひかりがアイドルになって歌ってるところを見たら、父さん泣いちゃうかもなぁ」


お父さんもお母さんもそう言って、私の夢を応援してくれた。


歌うことは好きだし、自分の笑顔にだって少しは自信がある。


運動はちょっと苦手だからダンスは心配だけど、それなら人一倍頑張ればいい。


頑張って、頑張って、それでアイドルになって、そしていつか……。



――



「あ。」


隣を歩いていた友達の青葉美雪が声を上げる。


そちらを見ると、彼女の視線は駅の壁に設置された液晶ディスプレイに向いていた。


画面に映っているのは、ステージ衣装に身を包んだ3人の少女。


今年の春にデビューしたアイドルグループだ。


歌もダンスもビジュアル面もハイクオリティで、デビューしてからひと月もしないうちに人気ランキング上位に食い込んできたグループである。


「ひか、見て見て。新曲だって」


美雪が画面を指差す。


画面の中では、センターに立つ少女がどこか恥ずかしそうにはにかみながら、新曲の告知をしている。


「あぁ、昨日の夜公開されたやつね。YouTubeで観たよ。なかなかいい曲だった」


「へぇ、そうなんだ、聴いてみよ」


そう言って、いそいそとイヤホンを取り出す美雪。


私はその動作を、ぼんやりと眺めていた。


すると、なにかを思い出したように彼女はぱっと顔を上げ、私の目を見つめてくる。


「……え、なに?どうしたの?」


あまりに真っすぐと見つめられて、私は少したじろいでしまう。


美雪はイヤホンを片手に握ったまま、真剣な表情で言った。


「あのさ、ひかはもう、アイドルになりたくないの?」


その言葉を聞いた瞬間、私の胸がズキリと痛んだ。


きっと、ずっと聞きたかったんだろう。



――



彼女との付き合いは結構長い。


出会ったのは、幼い頃に通っていたアイドルスクールだ。


私はそこで、彼女ととても仲良くなって、いつも一緒にいた。


「アイドルになったら二人でユニット組もうね」


なんて話もした。


でも……私がアイドルを目指すことをやめるのにそう時間はかからなかった。


スクールに通う子たちは、みんなテレビで観るようなアイドルみたいにキラキラ輝いて、見惚れるような笑顔で、周囲の視線を釘付けにするような歌声や魅力を、それぞれ持っていた。


彼女たちを心から尊敬していたし、共に成長していけることに喜びを感じていた。


けれど。


一緒にいるとどうしても見えてしまった。


駄目だとわかっていても、比べずにはいられなかった。


私とみんなの間にある差を。


この中で私だけ、普通の子。


私だけが、キラキラしていない。


その差が、私をアイドルから遠ざけていった。


美雪は、そんな私の葛藤に気づいていたんだろう。


「私はね、好きだよ。ひかの笑顔も、歌も、ダンスも…」


彼女はそれだけしか言わなかったけれど、ずっと私の側にいてくれた。


そして……私がアイドルスクールを辞めたあとも、変わらず友達でいてくれたのだ。



――



「あたしね、まだ諦めてないよ。ひかと一緒に、アイドルするの」


美雪はそう言って、笑った。


その笑顔に、私は何も言えなかったけれど、また少し救われた気がした。


駅を出てからしばらく歩いたところで、私たちは別れることになった。


「あたしは、先に行ってるよ。ひかもきっと、来てくれるよね」


別れ際に美雪はそう言って、手を振って帰っていった。


実は、美雪はその実力を認められ、数ヶ月後にアイドルデビューを控えている。


貴重な準備期間だというのに、今日みたいに私と会う時間を作ってくれているのだ。


美雪は輝いて見える。


私にはない魅力を沢山持っているし、歌声だってとても綺麗。


それを認めてくれる人たちもいる。


彼女に追いついて隣に並べる日なんて来るのだろうか。


ずっと考えてはいるけれど、やっぱり今の私にはとても不可能なことに思えた。


そのまま家に帰る気にもなれず、近くの公園のベンチに腰を降ろす。


公園は夕闇の中でとても静かで、誰も居ない。


子供用の遊具がいくつか置かれているけれど、遊んでいる子供は一人もいなかった。


空を見上げると、夕日と夜の闇が混ざり合うように空を染めていて、その向こうには一番星が輝いていた。


ほんの一点の、小さなきらめき。


思わず手を伸ばしてしまう。


その輝きはとても綺麗で、美しくて、でもどこか遠い。


それはまるで私の人生のように思えた。


みんなの希望になるような光にはなれないけれど、星のように誰かの道標になれたなら……。



読んでいただきありがとうございました。

次回以降は未定です。

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