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怪しげな者たちとの戦い

 ――氷結魔法〈空結の監獄〉


 アレクシスの魔法が空間全体を凍らせ始めた。


 物理的な冷気の氷結ではなく、空間を固めて動きを封じる魔法。逮捕と防御など多様に活用されるそれが、身元未詳者たちを追い詰めた空間全体を封鎖し始めた。


「突破する!」


 身元不詳者たちの先頭にいた者が懐から小さな玉を取り出し、それを自分が持っている剣身に打ち込んだ。その剣を振り回すと〈空結の監獄〉の一部が割れた。魔法そのものを破壊したわけではなかったが、少しでも前進できる空間が確保された。


 彼は前進しながら次々と剣を振り回して動くスペースを広げていった。


 アレクシスが想定していた通り。


「ふむ。ただ無能だけの奴らではないらしいな」


 アレクシスは凍結した空間を突破し、身元不詳者たちに近づいた。そしてまだ凍っている空間の中から身元不詳者たちに向かって剣を振り回した。


「なっ!?」


 身元不詳者の先頭はその一撃を剣で防いだが、〈空結の監獄〉の中でアレクシスが自由に動くこと自体に驚いた。その魔法は術師でさえ凍りついた空間の中で自由に動くことができないから。


 アレクシスはその衝撃さえも抜け目として利用した。


「っ!?」


 アレクシスは剣で相手の剣を弾き飛ばした後、〈空結の監獄〉を再び広げた。先頭の男はあっという間に凍った空間に閉じ込められた。その後も二人が凍った空間を少しずつ壊していたが、先頭が制圧されると慌てて守勢に入った。


 しかし、アレクシスは彼らに保護される形で内側にいる最後の一人を注視していた。


 何か小さな魔道具を手に持ったまま集中している者だった。魔道具の中に複雑な魔法陣が積層されていくのが感じられたが、それが何なのかはアレクシスには見えなかった。でも奥で一人でああしているということは、何か今の状況に有効な機能を持っているということだろう。


 アレクシスは思念通信と短いジェスチャーでパメラと簡単な確認を終えた後、〈空結の監獄〉に魔力を注ぎ込んだ。空間が急激に凍りつき、残った者たちを締め付けた。


 その瞬間、内側のかの者が握った魔道具から光が噴き出した。純度が高いし強力な魔力だった。それがまるで太陽の光が氷を溶かすように〈空結の監獄〉を急速に破壊した。


 先頭を制圧して内側に突っ込んだ状態だったアレクシスはいきなり内側の三人と先頭の一人の間に包囲された形となった。


「ふむ」


 アレクシスは鋭い剣撃で身元不詳者たちを牽制する一方、試しに魔法で氷壁を作った。身元不詳者たちは先ほど〈空結の監獄〉を壊す時に使った武器で氷壁を壊した。


[武器は汎用性のある対魔法兵器のようですね。〈空結の監獄〉を完全に破壊する時に使った魔道具には持続性がないようですわ]


 アレクシスはパメラの分析に全面的に同意した。同時に状況を素早く観察し判断した。


[自分一人でもこのまま制圧できます。この奴らは自分が相手にします。パメラ様は周辺をご警戒ください。自分が奴らを相手にしている間に、パメラ様を狙う者が後ろを突くかもしれません]


[分かりましたわ]


 パメラは頷きながらも、すでに魔法の目で周りを見つめていた。


 少し前から同じことを予想し、周囲を監視する魔法と防御魔法を展開していた。そこにかすかだったが反応があった。


 アレクシスが身元不詳者の四人のうち二人を氷結魔法で制圧するのとほぼ同時に、パメラが感知した方から何かが飛んできた。破壊された瓦礫の中から飛んできたそれがパメラの防御魔法にぶつかった。


 小さな魔弾だった。構成された術式を分析したパメラはそれが物理的な被害ではなく拘束用術式であることを知ったが、どちらにしても敵対的なことは同じだ。


 パメラは魔弾が飛んできた方向を見たが、そこにはまだ瓦礫の壁がしっかりと積まれているだけだった。


[アレクシスさん。早く始末して合流してください。私は先にあっちに対処します]


[御意]


 パメラは魔弾が飛んできた方向に向き直った。


 いずれにせよ向こうはすでに攻撃を発しており、パメラはそれを阻止した。気付かないふりをする必要はないだろう。


 しかし探索魔法を使ってみても、相手の気配をつかむことはできなかった。もともとパメラの魔法では瓦礫にかけられた魔法のせいで精度が落ちるが……。


[アレクシスさん、反応は?]


[ありません。自分の魔法でも気配を探知することができません]


[他の者がもっといるのでなければ、こっちが今回の襲撃の本命かもしれませんね]


 パメラは判断を下すやいなや素早く魔法陣を描いた。


 ――砲撃魔法〈ゼノンの威圧〉


 いきなり発射された魔力砲が瓦礫を吹き飛ばした。立ち上った土ぼこりをパメラの風の魔法が鎮めた。


 その向こうを見たパメラは眉をひそめた。


「誰もいないんですわね」


 相手がどこにいるかわからないので、今回はかなり広い範囲を想定した一撃だった。だがそのように確保された空間の中に敵対者の姿や気配はなかった。


 もっと遠くにあるのだろうか。素早く移動したのだろうか。最初から直接撃ったのではなく装置や魔法を設置した遠隔操作だったのだろうか。


 どちらかは分からないが、少なくともアレクシスが制圧している彼らとはケタ違いの者たちだろう。


 パメラがそう思った瞬間、今度は違う方向から魔弾が飛んできた。アレクシスの方に。


「ふん」


 アレクシスは気配を感じたが一瞥すらせず、パメラの魔法が魔弾を防御した。同時に術式と効果を分析する魔法で魔弾を分析した。だが有意義な結果は得られなかった。


「……徹底していますね」


 パメラは眉をひそめた。


〈ゼノンの威圧〉を乱射すれば見つけられるかもしれないが、坑道が再び崩壊する危険が大きい。今も無理して広げた空間をパメラの魔法が支えている状況だが、ここで下手に範囲を拡張しては取り返しがつかなくなる。


 しばらく悩んでいたパメラは自分の首に魔法陣を描いた。


 ――拡声魔法〈空のこだま〉


「誰かはわかりませんけれど、弱虫のように隠れてばかりいなく堂々と姿を現しなさい」

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