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感情の吐露

「おっしゃる通りにするのは構いませんが……」


 アレクシスはパメラの傍にどっかり腰を下ろした。しかし無表情の中でも目が少し困るかのように揺れていた。


「お話とおっしゃっても、自分にはパメラ様を面白くさせていただく言い回しがありません。それに密閉された場所に長く滞在すると息ができなくなります」


「空気の成分については私も大体知っていますの。その程度は魔法で何とかできますわ」


 パメラは魔法陣を地面に刻んだ。魔法陣が魔力を受けて輝いた。


 直接的に感じることは特になかったが、アレクシスはとりあえずその言葉を信じることにした。


 一方、パメラはニッコリと笑ってアレクシスの肩に頭をもたげた。


 アレクシスは少し困惑した。


「パメラ様?」


「貴方がおしゃべりなんか苦手なのは私も知っていますもの。だから今は私が先にあれこれ騒いでみようかと思います」


 パメラは目を伏せてしばらく物思いにふけった。


 何かについての考察、あるいは悩みだろうか。アレクシスは彼女の心の奥底を推し量ることができなかった。だが少なくとも悪い雰囲気ではなかったので、彼女が自分で考えを終えるまでじっと待った。


 ……いや、実は干渉する余裕があまりないというか。


 アレクシス自身も意外なほど彼は肩を意識していた。正確には肩にもたれかかったパメラの頭の存在感を。


 そわそわするような感覚ではなかった。ただ肩から感じられる重みが心に強く残った。


 アレクシスの心の半分はその重みを。残りの半分はそれを意識している自分自身の気持ちを。それぞれが気になって正直パメラに質問を投げかけたりする状況ではなかった。


「……フフッ」


「パメラ様?」


「こうしていると初めて会った時を思い出しますね」


「そう思い返されるほど昔ではないと思うのですが」


 アレクシスがそう言うとパメラはくすくす笑った。


「そうですね。考えてみればそんなに古い関係でもないでしょう。でも過ぎ去った時間に比べて古いように感じますわ」


「おそらくそれだけ密度のある時間を過ごしたからでしょう」


「あら、言われてみればそうみたいですわね。とにかく最初は私の誘いも断ったんですけれど、今はこうしていても自然な感じがします」


 パメラは笑いながらそう言った。


 一緒に経験したことは多くなかった。だが考えてみれば初めての出会いから尋常ではなく、その後も少ないが印象的な事件があった。


 考えてみれば無理に始まった関係だったにもかかわらず、そんなことを経験しながらアレクシスは一度もパメラの傍を離れたり、役割を疎かにしなかった。パメラは改めてそのような事実を思い出した。


 自然に、さっきとは少し違う意味の笑顔がパメラの顔に浮かんだ。


「考えてみれば貴方との関係が直接的に深まるほどのことはありませんでした。けれど貴方は私に強要されてついて行きながらも、一度も私を見捨てたことはなかったんですの。それが心に大きく残っていたわよ」


「強要されたとは思いません。……正直、嬉しくないスタートだったことは否定しませんが、冷静に見ると自分にもお得な話でしたから」


「理由はともかく、貴方は私のすることにずっとついてきました。正直、乾燥した関係だったら困ったこともあったはずなのに」


 カーライルとの戦いや禁書庫潜入といったことは皇女としてやってもいいことの範疇ではなかった。


 カーライルの方は本来なら直接乗り出すのではなく帝国軍に任せるのが正しいだろう。禁書庫潜入のことは重大な違法である。


 本来なら防ぐべきだったはずで、アレクシスも困惑している様子はあった。しかし彼はパメラの意思を尊重して一緒にしてくれた。


 正しいこととは言えない。だからこそ個人的にはさらにありがたいことだった。


 パメラの口から自然に言葉がこぼれた。


「だから貴方のことが好きになったようです。特別なことはなかったけれど……いいえ、貴方が私の意思を尊重し続けてくれたことが特別なことだったのでしょう」


「そうですか」


 あまりにも自然だったので、アレクシスは何も考えずに同意した。だがパメラの言葉をもう一度噛み締めてから慌てて視線をパメラの方に向けた。


 パメラはアレクシスの顔を見上げはしなかったが、彼の体が震える振動を感じただけで彼の心の中を推察した。


 やっとパメラはアレクシスの肩から離れた。だが彼の表情を見上げる顔の距離は依然として近かった。息遣いが届き、もう少し近づけば鼻が届くほど。


 アレクシスの目が大きくなるのを見たパメラは恥ずかしそうに笑った。


「目を背けないのは私の心に対する肯定と見ていいのでしょうか?」


「……あの……何をおっしゃったのか少し理解できません」


「貴方は男で、私は女ですもの。こういう関係で好きという言葉の持つ意味はかなり限定的だと思いますわ」


 パメラは平然と断言した。少し赤くなった頬の上にかすかな恥ずかしさがにじみ出てきたが、その程度は何でもないというような堂々さと自信感がその感情をなだめた。


 パメラは体を少し後ろに引いた。視線もアレクシスから離れた。しかし自分の唇に手先を当てたまましばらく何かを呟いていた彼女は、すぐに笑い声を出した。


「……好きだ、好きだ……。断言してみたら確実に分かりました。実は私自身も少し曖昧だったんですけれど……私は貴方のことが好きです」


「……パメラ様。自分は……」


「突然で戸惑っているでしょう。どんな答えでも構いません。私はただ私の気持ちを伝えたいと思っただけですから」


 パメラの顔に恐れはなかった。


 答えに確信はなかった。ただ突然の衝動による結果で関係がどう変わっても、自然なこととして受け入れる覚悟ができているだけだった。


 アレクシスは少しためらった後、口を開いた。


「一応、自分の考えを申し上げるに先立って……先にお詫びを申し上げなければならないようです」

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