悩みと友人
「動揺? 俺が?」
「そうだよ。刃先がいつもより揺れてるんだぜ!」
ロナンは一瞬にして筋肉に魔力を循環させアレクシスの剣を押し出した。そしてアレクシスの腹に向かって拳を突き出した。
「ふむ。そうかもしれない」
アレクシスはロナンの拳を正面から握りしめ、魔力の力で手を百八十度回した。拳ごとつかまったロナンの体がひっくり返った。ロナンは急いで対応しようとしたが、その前にアレクシスが剣を握った腕の肘でロナンのお腹を打ち下ろした。
「がはっ!?」
「普段の俺だったら手合わせでこんな力バカの方法は使わなかっただろう」
「こんな時まで冷静に自己分析するんじゃねぇよ、こら」
ロナンは殴られた腹の痛みに眉をひそめながらも笑った。そして手を差し出した。アレクシスは彼を起こすために手を握った。
その瞬間、ロナンは強い力でアレクシスの腕を引っ張った。
「終わったって言ってねぇぜ」
――土人形魔法〈亡霊の手〉
土から個の土の手が飛び出した。それらすべてがアレクシスの四肢をつかもうと飛びかかった。
しかしアレクシスは平然としていた。
「終わったと思ったことはない」
――氷結魔法〈孤独の棘鎧〉
アレクシスの体から無数の氷のとげが生えた。それがロナンの土の手をすべて迎撃した。
それだけでなく、アレクシスはロナンが引っ張る力にわざと抵抗しなかった。結果的に彼は前に倒れる形になり、氷のとげのハリネズミになった彼がロナンを上から襲う形になった。
「うわっ!? 危ねぇじゃねぇかよ!」
ロナンは新しい土の手でアレクシスの落下を遅らせながら横転した。そして土の手で自分の体を素早く起こした。
「どうせ避ける奴だから」
一方、アレクシスはあえて早く起きなかった。そのまま倒れながら地面に氷のとげを打ち込んだ。そこを起点に氷が急速に広がった。
――氷結魔法〈凍縛の柱〉
ロナンが立っている所まで広がった氷があっという間に巨大な氷柱を作った。ロナンは柱が形成される直前に急いで身を引いた。
その瞬間アレクシスはロナンが後退した場所へと突撃した。突進の勢いと力が込められた剣をロナンが急いで持ち上げた剣が防いだ。
ロナンは力に押されてバランスを失いそうになったが、耐えながらもニヤリと笑った。
「普段のスマートな戦法もある程度は残ってたけどなぁ。やっぱいつもより力で押しつける感じが強ぇよ」
「……お前にもそう見えるのかよ」
アレクシスはため息をつきながら剣を鞘に収めた。今度こそロナンも笑いながら拳を出し、アレクシスはそこに自分の拳を軽くぶつけた。
「で? 何のために悩んでるんだ?」
「悩みというよりは……」
アレクシスは眉をひそめて物思いにふけった。……かなり長く。
ロナンは最初は黙って待ったが、アレクシスの沈黙が長くなると少しずつ反応が変わった。最初は腕を組み、次はつま先で地面を叩き、最後にイライラ混じりの声が飛び出した。
「なぁ、いつまで悩む?」
「……俺の状態をどう表現すればいいのかちょっと考えていた」
「で? 今日中に結論出るのかよ?」
「今言えると思う」
アレクシスは真剣な顔で言った。
「よくわからない」
「……は?」
ロナンは呆れて眉をひそめた。
それも当然だろう。長い間考えた末にまじめな顔でよくわからないという話ばかりしているから。
しかしアレクシスの表情は依然として真剣だった。
「この気持ちは何か。何をどう感じるのか。それがよく分からない。俺には慣れない感情だから」
「何のためにそんな感情が感じられるのかも知らねぇかよ?」
「知らない。……でも誰に接する時なのかは分かる気がする」
「姫様か?」
アレクシスは答えなかった。
ロナンはアレクシスの顔を見て「ふむ」としばらく考えた。アレクシスの表情はいつもの無表情だったが、その中から感情をある程度読めるほどでは親しいから。
その態度にむしろアレクシスがまたロナンを見た。
「意外だな。浮かれて駆けつけると思ったのに」
「真剣な意味だってからかう意味だって俺はそんなこと好きだ。でもテメェがそんな方向で悩むのかは俺にも分からねぇぜ。真剣に見えるから、やたらにからかうのもアレだし」
ロナンの顔もいつの間にか真剣になった。彼は腕を組んでしばらく何かを考えてから言った。
「まずはテメェが姫様をどう思ってんのか言ってみろよ。自分でわかる分だけ」
その言葉にアレクシスは再び考え込んだ。
自分がパメラをどう思っているか。実際は彼自身、あまり明確に自覚していない。第一印象やそれがどのように変わったのかはある程度分かっているが、それがパメラを思う心のすべてでもない。
その上、パメラに対する心の一部は必然的に彼女の境遇とも関連がある。
世間に悪女として知られるティステ・ハリス・テリベル公女の生まれ変わり者。正直なところ、アレクシスはまだ生まれ変わりを完全には信じていない。だがパメラがつまらない冗談や虚勢でそんなことを言う人ではないと信じるほどの信頼はあった。セイラについては一応ともかく。
そこまで考えていたアレクシスはふと小さな悟りを得た。
「あ」
「何だ。考えて答えでも得たかよ?」
「答えというほどではない。しかし……少しヒントにはなりそうだ」
「じゃあよかった。言えるか? ダメならあえて言う必要はねぇぜ」
ロナンは軽く微笑みながら言った。
アレクシスはその言葉に思いやりを感じたが、彼なりに友人として助けてくれるのに何も言わないつもりはなかった。それにアレクシス自身、まだ完璧に自分の心を自覚して整理した状態ではなかった。
それでアレクシスは再び口を開いた。
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