訪問
「ベイン第一皇子殿下。パメラ第一皇女殿下がいらっしゃいました」
衛兵は部屋の中に知らせた後、応答を受けてすぐに扉を開けてくれた。
壁と天井、床には皇城らしくある程度模様が彫刻されていた。しかし部屋の大きさはそれほど大きくなく、家具や装飾品もほとんどなかった。その代わりにあるのは体の状態を検査したり簡単な治療を行う用途の魔道具だった。
そもそも皇族の部屋ではなく療養と治療のための部屋。ベインに外傷はなかったが、討伐実習中に意識を失ったからまず彼をここに泊めていた。
「起きていたわね」
パメラは部屋に入るとすぐにベインに話しかけた。
ベインは少し前までベッドに横たわっていたようだが、今は上半身だけを起こして座っていた。普段と違って高級だが簡素な服だけを着てベッドに座っている姿は普段より小さく見えた。
ベインはパメラを見るとすぐに眉をひそめた。
「……くっ」
しかし不快に思うわけではなかった。頭を抱えて苦しんでいるのを見ると頭痛が来たのだろう。
いつものパメラなら自分を見た途端に頭痛を感じるのを見て微妙な気持ちになったはずだが、今は違う。
「ベイン。大丈夫なの?」
「少々お待ち……ください」
ベインは視線をそらしたまま力なく言った。しかし手の力がますます強くなり、表情もさらにひどく歪むのを見れば頭痛が治らないようだった。
パメラはベインに手を伸ばした。
「ちょっと様子を見てもいい?」
「手出す……! ……、……はい」
ベインはパメラの手を打とうとしたが、別の意味で顔をゆがめて再び手を下げた。だがそうすると頭痛がさらにひどくなったように頭を両手で握りしめた。
パメラは彼に触れることなく、彼の体の状態を魔法で注意深く観察した。
そして。
「……なるほど」
予想通り、というか。パメラは思った通りの結果が出ると眉をひそめた。
「ベイン。ちょっと失礼するわ」
パメラの魔法の光がベインを包んだ。ベインは最初は頭痛がさらにひどくなったようにうずくまったが、表情がますます楽になり始めた。パメラの魔法が消える頃には完全に平穏な姿に変わった状態だった。
「頭痛が消えた……何をされたのですか?」
ベインは毒気のない顔でパメラを見た。
パメラはベインがそのような顔で自分を見たのがいつぶりかと不思議な心情だったが、ひとまずベインの質問には答えてくれた。
「貴方に魔法がかかっていたの」
「魔法? 皇子である俺にあえて誰がいつ魔法をかけたのですか? いや、それより不純な魔法なら皇室の魔法使いたちが検出できるはずですが?」
「本質的には感情を少し動かすだけの魔法だし、心理セラピーにも使われる魔法だから回避したらしいわ。それを非常に巧妙に改造して気づかれないように少しずつ思考誘導をする魔法に変えたの」
「思考誘導……」
ベインは当惑した顔で手を見下ろした。
パメラはベインを見て唇をかみしめた。
彼に思考誘導魔法がかかっていることはセイラから聞いて初めて分かった。もともと〝ゲーム〟でもカーライルがベインに思考誘導をかけたそうだから。だからこそ最大限精度を高めた魔法で魔法を検出したのだが……言い換えれば、パメラの力でも何とかして見つけられるほどの魔法という意味だった。
そしてカーライルの思考誘導の核心は簡単だった。
「ベイン。私を見てくれる?」
「どうされましたか?」
「今、どんな気分?」
ベインは質問の意図を理解できずに眉をひそめた。しかしパメラを眺めていると、ふと驚いたように目を丸くした。そして自分の手を再び見下ろし、その手をそのままパメラに伸ばした。ベインの手がパメラの手に触れた。
ベインは毒気のない顔でぽかんと呟いた。
「不思議なほど……平穏です。姉君を見るといつも不快だったのに」
「それが貴方にかかっていた思考誘導よ」
パメラを敵対すること。それがカーライルの思考誘導の核心だった。
環境的にもベインがパメラを敵対する要因は多い。二人が皇位継承者である以上、周辺には皇帝に推戴しようとする者がいるものであり、他の皇位継承者を牽制するのは当然の流れだから。実際にパメラにもベインを牽制しようとする追従者はいるし、ベインにも同じだ。
そのような環境のため、ベインの敵対感を簡単に疑うことができなかった。それを狙って敵対感をほんの少しずつ増幅させる思考誘導をかけたのだ。
まだカーライル本人から目的を聞いてはいないが、ゲームで彼の目的は皇女と皇子を仲違いさせてベインに接近すること。より正確には皇位継承紛争に介入し、皇帝であるアディオンを攻撃するだけの隙間を作ることだった。
「……ごめんね」
「姉君?」
「貴方の状態がもっと早く分かっていたら……魔法を解くことができたのに」
ベインが頭痛を感じた理由は分からないが、魔法を解いてくれるから消えたのを見ればどんな形でも思考誘導魔法と関連があるだろう。
それにベインは幼い頃パメラが大好きでついてきてくれた子どもだった。そんな子どもが姉をますます敵対するようになったことが心が痛かった。当事者として悲しいこともあったし。
ベインは目を伏せたまま曇った顔で口をつぐんだパメラをしばらく見て、パメラの手を握った手に力を入れた。
「ベイン?」
パメラは頭を上げた。これまでになく真剣な表情で自分を見つめるベインの顔が見えた。
ベインは強い意志を持った視線でパメラを見つめながら言った。
「姉君。ひどい勘違いをされているようですので、とりあえずそれから直します」
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